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海洋散骨とは?仕組みや流れについて徹底解説

遺骨の供養方法として、近年、海洋散骨に興味を持つ人が増えています。

しかし「海洋散骨とは具体的にどのようなものなのか」「法的に問題がないのか」など、不安や疑問がある方も多いでしょう。そんな不安や疑問を解消するため、この記事では海洋散骨に関する情報を詳しく解説していきます。

海洋散骨の概要だけでなく、海洋散骨のメリット・デメリット、種類、費用相場、手続きの流れ、注意点なども網羅的に解説していきます。また海洋散骨を行った著名人などにも触れています。

故人を偲ぶ方法として、自分や家族、故人にとって最適な選択をすることが大切です。

ぜひこの記事を参考に海洋散骨についての理解を深め、メリットや注意点を考慮に入れたうえで1つの選択肢として検討してみてください。

海洋散骨とは

海洋散骨とは、故人の遺骨を海に散骨することです。火葬をした後の遺骨を粉状にし、海に撒きます。

故人が海好きだった場合や、海に関する職業についていた場合などに選ばれる方が多いです。

海洋散骨は法的に問題ない?

海洋

日本の法律では散骨は禁止されていません。

火葬や納骨に関して定められた「墓地、墓埋などに関する法律(墓地墓埋法)」には「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない(第4条)」と書かれています。

埋葬や埋蔵については想定されているものの、散骨については明記されていません。

それについて法務省から「節度を持って行う限り問題ない」と見解が示されています。

そのため海洋散骨については違法には当たらないという解釈が一般的です。

ただし自治体によっては、条例で禁止されていたり、届出が必要な場合があるため、事前に確認しておきましょう。

海洋散骨のメリット

海洋散骨には、費用が安く、維持費がかからず、後継者がいなくても安心できるというメリットがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

費用が安い

お墓を建てるとなると、その場所の土地代そして墓石代などがかかり平均で100万円以上は必要となります。

しかし海洋散骨の場合には、墓石などを建てる必要がないため費用を抑えることができます。

散骨業者に完全に委託したり、他の遺族と一緒に散骨する場合には、お墓を建てる場合の10分の1以下の費用に抑えることも可能です。

維持費がかからない

お寺や霊園などに墓を建てたり納骨堂を買ったりすると管理費や使用料など月額や年額などで維持費がかかります。

海洋散骨の場合は、散骨した後に継続してかかる費用はありません。

維持費がかからないことで、負担を大きく抑えることができます。

後継者がいなくても安心

お墓や納骨堂の場合には、維持管理をする後継者が必要となります。

子供がいなかったり、いても遠方に暮らしていたりすると管理が難しくなります。

海洋散骨の場合は、散骨後に管理する必要がないので後継者がいない場合も安心です。

海洋散骨のデメリット

海洋散骨には次のようなデメリットもあるので、注意が必要です。

遺骨を残すことができないこと、親族の理解が難しいこと、お参りが難しいことなどが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

遺骨を残すことができない

海洋散骨を行うと、遺骨が海に散らばってしまうので遺骨を残すことができません。

そのため、遺骨を家に持ち帰りたいと考える場合には、不向きです。
全てを散骨せずに、一部を手元供養として持っておくなどの方法もあります。

親族の理解が必要

親族の中には、海洋散骨に抵抗感を持つ方もいるかもしれません。そのため、家族や親族と事前に話し合い、理解を得ることが重要です。

特に代々のお墓がある場合には、それらをどうするのかなどの話は生前に済ませておくと安心です。

お参りが難しい

遺骨が海に散らばってしまうので特定の場所でお参りをすることが難しくなります。

お花や好きな食べ物や飲み物を供えるということもできません。

命日にお参りに行くなどの行為も難しくなります。

海洋散骨の会社によっては、法要クルーズのようなサービスを行っているところもあるので、検討時に調べてみてください。

海洋散骨の種類

海洋散骨には、大きく3種類の方法があります。代行散骨、合同散骨、チャーター散骨です。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

代行散骨

代行散骨は、遺族は乗船せずに、散骨業者が代わりに散骨をする方法です。

遺族が遠方に住んでいたり、高齢だったり船酔いしやすいなどの事情がある場合などに選ばれています。

費用は5万円前後が相場で、負担が少ない方法と言えます。

合同散骨

複数の遺族が同じ船で一緒に散骨を行う方法です。

費用を抑えられるメリットがありますが、乗船人数が限られていたり、他の家族の目に気を遣って満足のいくお別れができない可能性もあります。

チャーター散骨

一家族だけで船を貸し切って散骨を行う方法です。

船を一隻貸し切るため、他の二つの方法に比べると費用は高くなります。

しかし船上でお別れの儀式をしたり、食事やお酒を飲んだりと他の遺族に気を遣わずに思い思いのお別れの時間を過ごすことができます。

海洋散骨の費用相場

海洋散骨の費用は、散骨の方法や散骨業者によって異なります。

一般的に代行散骨は2万5千円~8万円、合同散骨の場合は10万円~20万円、チャーター散骨の場合は30万円~50万円ほどです。

その他、船上でお別れのセレモニーを行う場合に、お花代や飲食代が別途でかかる場合があります。また業者によっては、海に撒く前の粉骨代が別途かかる場合もあるので確認しておきましょう。

海洋散骨の流れ

流れ

海洋散骨の流れはプランや業者によっても異なりますが、一般的には申し込み・支払い、遺骨の引き渡し、粉骨、乗船所に集合、セレモニー、帰港という流れになります。それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。

申し込み・支払い

散骨業者に問合せをして散骨地域、散骨時期、散骨方法、見積りなどを確認したら、申し込みを行います。
申し込みに必要な書類は、亡くなった後どこにも埋葬をせずにすぐに散骨する場合と、すでにお墓などに埋葬されている遺骨を散骨する場合とで異なります。

亡くなった後すぐに散骨する場合には、埋葬許可証が必要です。火葬後に火葬場の職員から受け取るので必ず保管しておきましょう。

すでに別の場所に埋葬されている遺骨を散骨する場合には、改葬許可証、遺骨引き渡し証明書等が必要です。

その他、業者によって必要書類が異なりますので、申し込み時に確認をしましょう。

申し込みを行ったら費用を支払います。

散骨が終わってから後払いの場合もあります。

遺骨の引き渡し

申し込んだ散骨業者に遺骨を引き渡します。

家まで引き取りに来る場合、パック便などで送る場合、遺族が業者に持って行く場合など方法は様々です。

代行散骨の場合は、遺族が行うのはここまでです。

粉骨

遺骨を散骨業者が粉骨します。引き渡す前に他の業者で粉骨しておく必要がある場合もあります。プランを確認しておきましょう。

乗船所に集合

指定された日時、場所に集合して乗船します。

他の遺族も一緒に行う合同散骨の場合、遅れてしまうと他の遺族にも迷惑が掛かってしまうため、特に時間厳守を心掛けましょう。

セレモニー

船上で、散骨前のセレモニーを行います。

セレモニーの内容は散骨業者や、遺族の選んだオプションによって異なります。

故人を偲びながら遺骨を海に撒きます。

帰港

すべてのセレモニーが終わったら船は港に戻ります。遺族は解散し、帰宅します。

海洋散骨を行う際の注意点

海洋散骨を行う際には、次のようなことに注意をしましょう。

親族からの了承を得る

海に遺骨を撒くという散骨方法に対して抵抗がある親族もいるかもしれません。

また代々のお墓がある場合には「なぜ代々のお墓に入らないのだ」と難色を示される可能性もあります。

海洋散骨をしたい理由や、故人の意向などを丁寧に説明して、理解を得ておきましょう。

粉骨する

海洋散骨を行う際には、1~2ミリメートル程とほぼ粉の状態になるように粉骨する必要があります。骨と分かる状態で海に沈めてしまうと、犯罪になってしまう場合もあるので注意しましょう。

基本的には業者に依頼をすれば適切に粉骨してくれます。

周囲に迷惑にならない場所に撒く

業者に依頼すれば基本的に心配はいりませんが、漁業の邪魔になる場所、私有地、条例などで禁止されているところなどで散骨しないようにしましょう。
岸から十分に離れた場所で行う必要があります。

服装

海洋散骨では喪服ではなく、平服を着用するのが望ましいとされています。

黒や紺、グレーなど地味な色の服装です。

船の上ということで、安全性を一番に考えなければなりません。そのため普段あまり着慣れない喪服は避けるべきとされているためです。

また海上には、仕事をしている人やレジャーとして楽しんでいる方々もいます。
その方たちから見ると、喪服を着た方が多く居ると気分を害する可能性もあるため、周囲への配慮としても平服が相応しいです。

また船上なので足元がふらつく可能性があります。そのため足元は履きなれた靴を着用しましょう。

海洋散骨を行った著名人

海洋散骨を行った著名人には次のような方がいます。

立川談志

笑点の初代司会者を務めた立川談志さんは、生前から家族へ散骨の意向を伝えていたそうです。ハワイのハナウマ湾で散骨されました。

石原裕次郎

人気俳優だった石原裕次郎さんは海が大好きだったということで遺族は散骨を希望していました。しかし亡くなった当初、日本では散骨が一般的ではなく断念したそうです。しかし1991年以降に日本でも散骨が盛んになり、相模湾に散骨されました。

石原慎太郎

2022年に亡くなった元東京都知事の石原慎太郎さんは葉山沖で散骨されました。

石原慎太郎さんも弟の石原裕次郎さんと同様、海が好きで特にヨットが好きだったそうです。

沢村貞子

女優、エッセイストの沢村貞子さんも、本人の意向によって相模湾に散骨されました。

hide

XJAPANのギタリストだったhideさんは生前ロサンゼルスに住んでいたことから、ロサンゼルス近郊のサンタモニカ沖で散骨されました。

勝新太郎

昭和の人気俳優だった勝新太郎さんは、生前大好きだったというハワイのワイキキ沖で散骨されました。

いずみたく

「手のひらを太陽に」「見上げてごらん夜の星を」「ゲゲゲの鬼太郎」などの名作を作曲したいずみたくさんは相模湾沖に散骨されました。

荒井注

ザドリフターズの初代メンバーである荒井注さんは、本人の希望によりオーストラリアのケアンズ沖で散骨されました。

ジョンレノン

ザ・ビートルズのメンバー、ジョンレノンも散骨されたと言われています。
しかしこれは噂であり、定かではありません。

フレディ・マーキュリー

クイーンのボーカルであるフレディ・マーキュリーさんも本人の遺言にしたがって散骨されたと言われています。散骨場所は明らかになっていません。

海洋散骨はこんな人におすすめ

様々な著名人も行ってきた海洋散骨ですが、その特徴から次のような方におすすめの散骨方法と言えるでしょう。

  • 海が好きだった、海に関係する職業についていた方
  • 亡くなった後は自然に還りたいという方
  • 費用を抑えた供養方法を選びたい方
  • お墓の後継者などがいない方

まとめ

この記事では、海洋散骨の概要やメリットデメリット、種類や費用相場、海洋散骨を行う際の注意点などをご紹介しました。

まとめると次の通りです。

  • 海洋散骨は海に遺骨を撒く供養方法であり、日本では法的に禁止されていない
  • 費用が比較的安く、お墓の後継者がいない場合などに適している
  • お花などをお供えしてのお参りができないなどのデメリットもある
  • 散骨を行う際には、業者に依頼をして適切な粉骨をし、適切な場所で行うことが求められる
  • 海が好きだった、海に関係する職業についていた方などにおすすめ

以上です。

海洋散骨は故人や遺族の価値観や希望に合っているなら、経済的負担も少なく、海に還るというロマンあふれる選択となります。
価値観の異なる遺族がいらっしゃる場合や、既に先祖代々のお墓がある場合などには、親族でしっかりと話合いをして決めることが大切です。

海洋散骨についての理解を深め、後悔のない供養方法を選びましょう。