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土葬とは?メリットは?各国で行われている土葬についても解説

現代の日本では亡くなったらほぼ火葬が行われますが、かつては土葬が行われていました。

この記事では、古くから存在する土葬という埋葬方法について、その歴史、宗教とのつながり、日本国内での実施の可否、メリット・デメリット、さらには世界の各国での土葬事情を詳細に説明しています。

この記事を読むことで、土葬にどのような宗教的背景や価値観があるのかを理解することができます。また土葬に似た自然に還る供養方法も紹介しますので、故人を偲ぶ新たな選択肢を知れるでしょう。

土葬とは?

土葬とは、遺体を地中に埋めることで自然に還す埋葬方法であり、キリスト教を信仰する地域などを中心に、世界各地で行われています。

地中に遺体を直接埋めたり、布等で包んで埋めたり、棺に収めて埋めるなど、埋葬方法はその地域や信仰によってさまざまです。

土葬をする理由には、宗教的信念に基づく場合や、火葬施設がないといった現実的なものなどがあります。

 

宗教と土葬の関係

宗教的な死に対する考え方と土葬には密接な関係があります。

キリスト教と土葬

キリスト教の教義では、世界の終わりに人類全員に最後の審判が下ると考えられています。

そして最後の審判の時に、魂が肉体に還ってくるという教えです。

火葬をしてしまうと、魂が戻る肉体が無くなってしまいます。そのためキリスト教圏では土葬が行われることが多いです。

 

イスラム教と土葬

イスラム教もキリスト教と同様に、死後に魂が復活するという考えがあるため、火葬をせずに身体を残す土葬が行われます。

イスラム教徒の聖典であるコーランに死後の復活について書かれています。

またコーラン内では、地獄は炎が燃え盛る場所だとされています。そのため遺体を燃やすことは死者に対する冒涜だと考えるというのも、火葬を行わずに遺体を土に埋める理由の1つです。

 

ユダヤ教と土葬

ユダヤ教では戒律によって遺体を土葬することと定められています。

ユダヤ教の聖書の中の『創世記』にも「あなたはついに土に還る、あなたは土からとられたのだから。あなたは塵だから塵に還る」と書かれています。

 

儒教と土葬

儒教では陰陽に従って、人は死後魂と身体に分かれ、魂は天に昇り、身体は地に降るとされています。

そのため位牌に魂をいれて祀り、遺体は土葬します。

また儒教では「孝」の考え方があり、親など目上の方を敬うことを重視しています。

そこで親の遺体を火葬するのは、悪い行いだとされています。

日本での土葬の歴史

日本での土葬の歴史は縄文時代までさかのぼります。

縄文時代:土葬の始まり

縄文時代には屈葬と呼ばれる方法で埋葬されていました。

身体を折り曲げた状態で埋葬します。身体を折り曲げる理由は、墓穴を掘る手間を省くためという説があります。

また胎児のころの姿勢と類似しているため死者が安らかに眠れるという説、死者の魂が浮き上がらないようにするため等、様々な理由がいわれています。

 

弥生時代:伸展葬が主流に

弥生時代には、遺体を四肢を伸ばした状態で埋葬する「伸展葬」が主流になったと言われています。

古墳時代:豪族が古墳に埋葬される

古墳時代になると、強い権力をもつ豪族などが古墳に埋葬されるようになりました。

 

飛鳥時代:火葬が行われ始める

飛鳥時代以降、天皇や僧侶など地位が高い人が火葬されるようになったと言われています。

庶民は変わらずしばらくは土葬で埋葬されていました。

 

鎌倉時代~庶民にも火葬が広がり始める

鎌倉時代になると、庶民にも火葬が広がり始めます。ただし火葬する設備が整備されるには時間がかかったため、一定数土葬も残っていました。

 

明治時代~一時的な火葬禁止令

明治時代には、明治政府は神道を広めようとしていたため仏教的な供養方法を廃止するべきとしました。

そこで出されたのが火葬禁止令です。しかしすぐに土地が不足し、わずか2年で禁止令は廃止されました。

 

戦後:ほぼ火葬に

戦後には「墓地、埋葬等に関する法律」が定められました。

この法律の中では土葬が禁止されているわけではありませんが、公衆衛生的な問題などからほとんどの自治体で土葬が制限されています。

現代では日本人のほぼ99%以上が火葬を行っています。

 

現代:災害時には土葬が行われることも

災害の影響で、死者が多く出てても、火葬場が被災して使えない場合などには土葬される場合もあります。

東日本大震災の時には「仮埋葬」という形で、一度棺に納めて土葬をし、改めて掘り起こして火葬を行う措置が取られました。

日本で土葬はできる?

法律上は日本でも土葬を行うことができます。

「墓地、埋葬等に関する法律」では、遺体を火葬しない状態で埋葬することについても禁止されていないと解釈できるためです。

しかし土葬をするには条件があり、現実的にはほとんど土葬は行われていません。

 

日本で土葬を行う条件

日本で土葬を行うには、まず自治体から土葬許可証をもらう必要があります。

そしてさらに墓地管理者に土葬許可証を渡して、許可をもらいます。

北海道の一部地域、宮城県、栃木県、茨城県、山梨県などの一部地域には土葬ができる霊園があります。

 

土葬のメリット

土葬をすることには次のようなメリットがあります。

故人をそのままの状態で供養できる

火葬では遺骨になることで故人の姿が失われますが、土葬では遺体を原型のまま埋葬できます。

 

自然に還れる

神道では、人間は自然から来て自然へ還るという考えがあります。その教えに従い、自然へ 還りたいと願う人に適した方法です。

 

環境にやさしい

火葬には燃料が必要ですが、土葬ではその必要がなく、環境に配慮した供養方法と言えます。

土葬のデメリット

土葬が日本でほとんど行われないのは次のようなデメリットがあるためです。

広い土地が必要

土葬をするためには、棺が埋められる大きな土地があることが条件になります。また土葬をするには2メートル以上深く掘ることが条件とされていることが多く、深さも必要です。

国土が狭く、人口密度の高い日本においては、その土地を確保するのは難しいでしょう。

 

衛生的な問題

遺体をそのまま埋葬すると、地下で遺体が腐敗し、感染症の蔓延や地下水の水質汚染につながる可能性があります。

日本では衛生環境の整備が進められているため、土葬を行うのは難しいでしょう。

 

世界の土葬

モロッコの共同墓地

日本ではほとんど土葬が行われることはありません。

しかし世界では現代でも各地で土葬が行われています。主に宗教的な理由によるものです。

それぞれについてご紹介します。

 

アメリカ

アメリカではキリスト教徒が約7割いるとされており、また広大な土地があることから現代でも土葬が一般的に行われています。

ただし火葬も受け入れられており、州によっては半数近くが火葬を選んでいるようです。

一方でケンタッキー州やミシシッピー州などの地域では火葬率は5%ほどと州によっての差が大きいとされています。

イギリス

イギリスもキリスト教徒の多い国で、土葬が行われています。

しかし国土が日本の約3分の2と狭いことから火葬率が70%を上回り、キリスト教圏の中では高い水準です。

 

フランス

フランスもキリスト教徒が多い国です。

さらにフランスには熱心な信者が多いこと、国土が日本の1.5倍と広いことなどから土葬を行う割合は50%以上と現代でも高くなっています。

 

イタリア

イタリアには厳格なカトリック信者が多いため、現代でも土葬が主流です。

国土は日本と同じぐらいですが、人口は半数ほど。そしてイタリアでは過去4回にわたって火葬禁止令がでたことも影響して、火葬率は現代でも20%ほどと、土葬の文化が強く残っています。

 

中国

中国では儒教の信仰が強かったため、土葬を好む傾向にあります。

しかし衛生的な問題や人口密度の問題などから、都市部を中心に火葬が主流になりつつあります。

 

イスラム圏

イスラム教が信じられている地域では信仰により土葬が行われています。火葬をすると信仰に背くことになってしまうのです。

しかし日本に住むイスラム教徒の方が亡くなった場合、日本で土葬するのは難しく、時折問題となっています。

 

イスラエル

イスラエルでは原則火葬は行われずに土葬されます。イスラエルにはユダヤ教徒が多く、ユダヤ教では火葬が戒律によって禁止されているためです。

2004年に葬儀社が火葬場の建設をしたものの、ユダヤ教徒に放火されてしまったというエピソードもあるそうです。

 

土葬に似た自然に還る納骨方法

土葬は自然に還ることのできる埋葬方法です。

その他にも自然に還ると考えられる方法があります。土葬が難しい日本においては「自然に還りたい」という方は、次のような供養方法も選択肢に入れてみてください。

 

樹木葬

樹木葬とは許可を得た霊園で、樹木の側に遺骨を埋葬し、その樹木を墓標とする埋葬方法です。

樹木葬ができるのは許可を得た霊園だけです。樹木葬だからといって、公園の木の側などに埋めたりしたら、犯罪になってしまうので注意しましょう。

一人の遺骨に対して一本ずつ苗木を植えるところ、シンボルとなる大きな樹木を上てその周りに遺骨を埋葬していくところなど、樹木葬の中でも様々なスタイルがあります。

墓石代がかからないことから、お墓を建てるより比較的安価な供養方法です。

 

海洋散骨

海洋散骨とは海に遺骨を撒く埋葬方法です。

故人が海好きだった、海に関わる仕事をしていたという場合などに選ばれています。

粉末状にした遺骨を船などから撒く方法や、ヘリコプターなどで空から撒く方法とがあります。

遺骨を撒く人についても、一家族が単独で行う場合、複数の家族が合同で行う場合、家族が立ち会わずに委託する場合など様々です。

 

山への散骨

海だけでなく山にも散骨することができます。故人が登山が好きだったという場合などに選ばれる埋葬方法です。

しかし他人の所有している土地や国有地に撒いてしまうと違法になるので注意しましょう。

また自治体によっては条例で山への散骨が禁止している場合もあります。

 

バルーン葬

バルーン葬とは、バルーンに粉末化した遺骨を入れて上昇させ、成層圏に達した際に気圧によって割れたバルーンから散骨するものです。

撒かれた遺骨は宇宙の中で旋回します。ロマンがある供養方法として近年注目されています。

 

宇宙葬

宇宙葬とは粉末化した遺骨を専用のカプセルに入れ、ロケットで打ち上げる供養方法です。

人工衛星に載せて地球の周りを旋回する方法、外宇宙まで打ち上げる方法などがあります。

GPSと専用のアプリによって、宇宙のどこにあるのかを確認できるサービスもあります。

バルーン葬と同様、宇宙へのロマンのある供養方法です。

 

まとめ

土葬について、詳しくご紹介しました。

まとめると次の通りです。

  • 土葬とは、遺体を土の中に埋葬することで身体を自然に還す埋葬方法のこと
  • キリスト教やイスラム教、儒教などでは宗教上の理由から土葬を行うことがある
  • 日本では縄文時代から土葬が行われていたが、衛生上の問題や土地の問題から現代では土葬されるのは1%にも満たない
  • 土葬には自然に還れる、環境にやさしいというメリットがある
  • 世界では宗教上の理由などから現代でも土葬が多く行われている
  • 自然に還る供養方法として、樹木葬、海洋散骨、山への散骨、バルーン葬、宇宙葬などがある

土葬は法律上禁止されているわけではないので、希望する場合には、行える場所をよく探してみましょう。

もし条件の合う場所を見つけるのが難しい場合には、樹木葬や海洋散骨などの方法も検討してみてください。