葬儀後にやることは想像以上に多い
家族の一員が亡くなり、葬儀、火葬が済んで安堵する間もなく、葬儀後にもやるべきことがたくさんあります。
この記事では、葬儀直後から1週間以内に済ませること、四十九日法要に合わせて行うこと、百箇日法要を営むまでを、順を追ってご紹介します。具体的には、以下の項目に分けました。
- 葬儀事務の引き継ぎ
- 各方面への支払い
- あいさつ回り
- 各種手続き
- 四十九日法要と百箇日法要
- 遺品整理と形見分け
葬儀後にすることには、すみやかに行うことと、時間をおいてもよいこととがあります。やることをリスト化し、順番に処理してゆきましょう。
近年は、小規模な家族葬や直葬も人気です。一方、故人が在職中だったり関係者が多かったりして、規模の大きい一般葬をあげる家もあります。
葬儀の規模が大きいほど、参列者をはじめかかわってくれた人も多く、葬儀後に行うことが増えます。可能な限り、遺族や親族が皆で手分けして取り組みましょう。
また、ほとんどの葬儀社ではアフターサポートを行っています。遺族や親族だけで手が回らないときには、葬儀社への依頼も検討しましょう。
葬儀後に行う事務処理
葬儀直後の引き継ぎ
規模の大きな一般葬では、世話役や手伝いの人を依頼することがあります。喪主は葬儀が終了次第、受付や会計、司会の人から以下を受け取りましょう。物品の購入代金を立て替えてもらっていたら、その場で精算します。
- 香典と芳名帳(芳名カード)
- 供花・供物の記録帳
- 会葬者の名刺
- 領収書、レシート、納品書、請求書など
- 出納記録
- 弔辞、弔電
帰宅後に行うこと
火葬場から帰宅し、ご遺骨を後飾り祭壇に安置します。遺族や近親者が集まり「還骨法要」を行い、儀式は終ります。
その後は、香典の整理を始めましょう。芳名帳(芳名カード)は連番で来場順に氏名、住所が記録されています。それとは別に、金額別の香典リストを作成すると、忌明け後の香典返しの品を決めるのに役立ちます。
葬儀後の支払い
葬儀関連費用はすべて、後払いです。日をおかず、支払いを済ませましょう。
葬儀終了後または翌日まで渡す
宗教者への御礼(僧侶、神官、神父、牧師へ)
白無地封筒に、仏式は「御布施」、神式は「御祭祀料」、キリスト教式は「献金」とし、喪主名または〇〇家として渡します。金額がわからないときは、事前に寺院、神社、教会に問い合わせましょう。
世話役、手伝いの人への謝礼
白無地封筒に表書きは「御礼」または「志」とし、喪主の氏名を書いて渡します。現金のほか、商品券やプリペイドカードが使われることもあります。手伝いの内容、日数、時間に応じ3,000~10,000円が目安です。
葬儀後1週間以内に支払う
葬儀一式費用の支払い
葬儀社から請求書が、郵送または手渡しされます。葬儀前に受け取った見積書や明細書と照らし合わせ、不明点がないかを確認しましょう。
追加費用として、ご遺体搬送料金の距離加算や時間外加算、追加ドライアイス、安置施設使用の延長料金、返礼品の追加分などが発生することがあります。
支払い方法は、現金一括払い(銀行振込、郵便振替、手渡し)、クレジットカードが一般的です。一括で支払えないときには、葬儀社が分割払いに応じるか、葬儀ローンを勧めることもあります。
飲食費の支払い
通夜ぶるまい、精進落とし、火葬場控室での飲食代金は、仕出し店や酒店などから請求書が来ます。現金、銀行振込またはクレジットカードなどで支払います。
入院費や施設利用料の精算
病院の会計が閉まっている時間に死亡退院したら、すみやかに入院費を支払います。銀行振込を受け付けている病院もありますので、確認してください。
死亡月の入院費には死亡診断書料として3,000〜10,000円(医療機関による)、死後処理料(エンゼルケア)に5,000円程度(医療機関による)が含まれます。病院からのご遺体搬送時に病衣を借りたら、洗濯をして返却しましょう。宅配便で送ってもかまいません。
介護施設などの入所中に死亡したら、利用料の精算をし、私物を持ち帰ります。
葬儀後のあいさつ回り
葬儀でお世話になった僧侶など宗教者や、葬儀を手伝ってくれた人たちへの御礼は、日を改めるのが本来のマナーとされています。
しかしコロナ禍以降は接触の機会を減らすため、葬儀当日に御礼を渡すことも多くなりました。当日に渡すときは「本来ならば日を改めておうかがいするところ、失礼ですが…」とひとこと添えるとよいでしょう。
葬儀翌日か翌々日までに
寺院、神社、教会へのあいさつ
葬儀当日に宗教者への御礼を渡さなかったときは、翌日か翌々日に喪主と遺族代表の2名であいさつに出向くのが通例です。服装は準礼装かダークスーツ、女性なら地味なスーツかワンピースを着用するのがマナーです。
近隣や町内会へのあいさつ
隣近所や町内会会長宅へも、喪主か親族があいさつに出向きます。近所付き合いがない場合は、省略してかまいません。
世話役代表へのあいさつ
葬儀の世話役代表(葬儀委員長)へは、喪主があいさつに出向きます。世話役代表は遺族側の立場となり、喪主、宗教者、葬儀社と葬儀全般の打ち合わせに加わって、他の世話役に指示を出す役割の人です。
数日にわたりお世話になっていますので、じゅうぶんに御礼を伝えましょう。謝礼は1~3万円が目安です。ただし目上の人には現金よりも、商品券が適しているともいわれます。判断に迷ったら、弔事に詳しい地元の経験者に聞くなどして、地域の慣習に従うのがよいでしょう。
故人の職場へはなるべく早く訪問
故人が在職中に死去したら、あいさつと各種手続き、私物の引き取り、ロッカーや机の整理のために、勤務先を訪問します。事前に、死亡退職に伴う手続きに必要な書類などを問い合わせて、用意しておきます。
健康保険証、社章、身分証明書、名刺、社用携帯、パソコン、制服など勤務先から貸与されていたものを返却します。小分けできる菓子などを、手土産として持参するとよいでしょう。
葬儀後の各種手続き
役所関係など、法的に届出期限が決まっているものがあります。手続きが必要なものは多く、リスト化して処理すると効率的です。
故人(被相続人)と相続人の住民票、戸籍謄本、除籍謄本、印鑑登録証明書などは後に様々な手続きで必要になります。必要枚数を調べ、まとめて交付してもらうようにしましょう。なお、死亡届のコピーが必要になることもあるため、提出する前に何部かコピーをとっておきます。
すみやかに行う手続き
役所関係の手続き
- 世帯主変更届:故人が世帯主だった場合、14日以内に市区町村役場へ届出ます。
- 年金受給停止:国民年金は死亡から14日以内、厚生年金は10日以内に年金事務所または年金相談センターへ受給停止依頼をします。停止の手続きをしないと死後も年金が振り込まれ、返却手続きに手間がかかります。
- 国民健康保険被保険者証(75歳以上は後期高齢者医療被保険者証)、介護保険被保険者証の返却と資格喪失届を、14日以内に市区町村役場へ届出ます。
- 葬祭費、埋葬料の申請:申請期限は2年以内です。ただ、早く申請すればそれだけ早く受け取れます。葬祭費は市区町村役場、埋葬料は健康保険組合(または社会保険事務所)へ申請します。葬祭費は自治体により3~7万円、埋葬料は一律5万円です。
その他の手続き
- 電気・ガス・水道、固定電話の停止または名義変更
- 賃貸住宅に単身住まいは契約解除と退去:管理会社や大家へ連絡し手続きします。その際、原状回復の費用が発生することがあります。
- 各種サービスの解約:携帯電話、プロバイダー、クレジットカード、サブスクリプションなど、故人が利用していたサービスの解約をします。
- 運転免許証の返却:運転免許証を遺族が返還する義務はありません。しかし、万が一の悪用防止のためにも返還手続きが推奨されています。警察署か運転免許センターへ返却します。
- 有効期限が残っているパスポート:旅券法により返納することになっていますので、都道府県パスポートセンターへ返納します。
運転免許証もパスポートも無効化処理をしてもらえば、形見として遺族の手元に残すことが可能です。希望する人は届出の際に、その旨を伝えてください。
遺産相続前に行っておくこと
金融機関への死亡届
遺産分割協議が終るまで、相続人が故人の預貯金を引き出せないように、口座が凍結されます。ただし葬儀費用や入院費、生活費などで必要があれば「預貯金仮払い制度」により、1金融機関150万円まで引き出しが可能となりました。
- 遺言書の有無を確認します。エンディングノートには法的効力がありませんが、残っていれば内容を確認します。
- 遺言書があったら「自筆遺言書」は開封せず、家庭裁判所で検認の手続きを行います。「公正証書遺言」は検認が不要です。
- 相続人を確認します。法定相続人が2名以上のときは、遺産分割となります。
- 「相続放棄」と「限定承認」は3か月以内のため、プラスの財産とマイナスの財産をすべて洗い出すことが必要です。3か月を過ぎるとすべての財産を継承する「単純承認」とみなされ、負債も相続人に返済義務が生じてしまいます。
遺産相続確定後の手続き
- 不動産の名義変更:相続後すみやかに(法務局へ、または司法書士など専門家に依頼)
- 預貯金、株券、債権の名義変更:相続後すみやかに(銀行、証券会社へ)
- 車両の名義変更:相続後すみやかに(陸運支局、手数料がかかるがディーラーや代行業者に依頼も可能)
- 故人の準確定申告(相続人が行う、納税者が死亡したときの確定申告):相続を知った日から4か月以内に税務署へ
- 相続税申告:10か月以内に税務署へ
配偶者の死後に変更できること
配偶者の死去により、以下の3点が変更可能です。期限の定めはありませんので、検討のうえ決めましょう。
婚姻前の姓に戻る
配偶者の死後に旧姓に戻りたいときは、現住所または本籍地の市区町村役場に「復氏(ふくし)届」を提出します。戸籍は婚姻前の戸籍に戻るか、分籍届を提出し新たに戸籍を作るかのふた通りがあります。
子どもの姓の変更
家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出します。
婚姻の解消
配偶者が死亡しても婚姻関係は続き、義父母の介護や扶養の義務が残ります。「姻族関係終了届」を市区町村役場に提出することで、婚姻関係が解消されます。
いわゆる「死後離婚」です。「死後離婚」は亡くなった配偶者と離婚することと誤解されやすい表現です。あくまでも、配偶者の血族との縁を断つことを意味します。
葬儀後の法要|100日目まで
仏教では、人は死後49日間は現世と冥途の間をさまよいながら、旅をしていると考えられています(浄土真宗を除きます)。四十九日は故人が仏になる、つまり成仏する日とされ、喪に服していた遺族の忌明けの日です。この日に行う四十九日法要は、数ある法要のなかでも重要といわれています。
浄土真宗には、人は死後すぐに仏になる「往生即成仏」という教えがあります。そのため四十九日は、故人の供養というより遺族の心の癒しの意味合いを持ちます。
仏教では命日から四十九日まで、七日ごとに法要を営む日として「忌日(きにち)」があります。通常は、初七日法要と四十九日法要以外は省略されます。
現在、初七日法要は繰り上げ法要として、葬儀当日に行うことがほとんどです。喪家の負担軽減や、参列者の利便性を考慮してのことです。よって葬儀後の初の大きな法要が、四十九日法要となります。
死後何日目の数え方
通常は亡くなった日を1日目として数えます。関西地方では、亡くなった日の前日を起点に数えています。
四十九日法要を営む
四十九日法要は、逝去から7週間後です。準備期間が短いため、葬儀後すぐに着手します。
菩提寺の都合を聞き、日程と会場を決めて、案内(はがき、封書、電話、最近はメールも可)を出し、出席人数をまとめます。四十九日法要は遺族、親族のほか、友人・知人を広く招いて執り行う、節目となる重要な法要です。
供花・供物などの準備物は宗派により異なるため、あらかじめ菩提寺に確認しておきましょう。
この日に納骨を行うことが多いのですが、冬場で積雪があるときには延期するのが一般的です。納骨までには墓石(戒名碑)への彫刻を石材店に依頼しておきましょう。菩提寺にある寺院墓地では、石材店が指定されていることがあります。事前に確認してください。
四十九日には、仮の位牌であった白木位牌から本位牌に替えます。本位牌は塗位牌や唐木位牌で、四十九日に間に合うよう死後に戒名を授かったらすぐに、仏具店や葬儀社、インターネットショップに注文しておきます。
四十九日が平日になる場合は、前倒しで土日に行うのが一般的です。仏事は先送りを避けるべき、という考えが主流です。ただし四十九日過ぎでも可とする地域もあるようです。
香典返しの用意
近年は、葬儀の際に香典返しを渡す「当日返し(即日返し)」が増えています。しかし本来は、忌明けに発送するものです。忌明けに香典返しをする場合は、葬儀後に作成した香典リストにもとづき、金額に応じた品を発送します。
例)香典5,000円には○○(品名)、10,000円には△△(品名)と、半額から3分の1の品を決めます。
掛け紙の表書きは「志」が全国的に使われます。関西、西日本では「満中陰志」も使われています。水引の下には喪家の姓のみ、または「〇〇家」が一般的で、最近は喪主のフルネームもみられます。
香典を寄付した場合
故人の遺志や遺族の希望により、香典を寄付することがあります。その際は香典返しは送りません。寄付先を記して、報告を兼ねたお礼状を送ります。
百箇日法要を営む
死後100日目には、四十九日以降初めての法要となる「百箇日法要」を営みます。この法要は、遺族だけで供養するのが一般的です。四十九日法要の次は一周忌法要とし、百箇日法要を省略することもあります。
百箇日法要には「卒哭忌(そっこくき)」、すなわち遺族が嘆き悲しむことから日常に戻る、という意味があります。
「哭(こく)」には「慟哭、号哭、痛哭」などに使われるように、大声で泣くという意味が、「卒」は「卒業」のように終る、終えるという意味があります。
つまり故人がこの世を去って100日目には、嘆き悲しむ日々から、そろそろ通常の生活に戻るきっかけとなる法要です。遺族にとっては意味深いものとなります。
多くの人を招かず、身内だけで執り行いますが、供花や供物を準備して祭壇を飾り焼香を行うのは他の法要と同様です。服装は、一周忌までは喪服を着用します。
遺品整理と形見分け
遺品整理
遺品整理や形見分けを行うのに、決まった時期はありません。ただし、故人が賃貸物件や社宅での単身住まいだった場合は、早急に部屋を明け渡す必要があります。
遺族だけで行うには心情的にも体力的にも難しいときには、専門業者に依頼することも検討しましょう。インターネットには遺品整理業者の比較サイトもあり、複数の業者から見積もりをとることができます。
※参照サイト みんなの遺品整理
例)1LDKの単身世帯で、大型家具や家電と、衣類や食器などの処分、室内清掃で10万円前後です。作業スタッフの人数、故人の持ち物の量、室内の状態、エレベーターの有無により料金がかわります。
遺品整理は、故人の持ち物を以下の4つに分類すると、作業がしやすくなります。作業中に迷うものが出たら一旦保留の箱や袋に入れておき、後日判断しましょう。
- 保存するもの
- 処分するもの
- 寄付するもの
- 形見分けするもの
形見分け
忌明け後に、故人の愛用品を親族や友人・知人に形見分けすることがあります。故人のエンディングノートに、品名と受け取ってほしい人のリストが載っているかもしれません。先方が辞退しなければ故人の遺志を尊重し、受け取ってもらいましょう。
故人より目上の人には、形見分けをしないのが一般的といわれています。ただし希望する人がいれば、差し上げてもかまいません。
まとめ
家族の葬儀は一生のうちに何度もあるわけではなく、喪主や喪家として、不慣れで知識不足なのは当然のことです。わからないことは、経験豊富な親族を頼ったり、葬儀のプロである葬儀社、宗教者に相談したりして、乗り越えてゆきましょう。
葬儀後にやることはリスト化し、期限の早いものから処理してゆくとスムーズです。会葬者名簿、芳名帳、香典リスト、供花・供物の記録などは、貴重な情報源になるので大切に保管します。後に会葬者のお宅でご不幸があったときは、記録を見れば「我が家でいただいた同程度の香典や供花を送る」という判断材料になります。
遺された家族は葬儀後も、しばらくは多忙な日々を過ごします。葬儀後にするべきことをひとつひとつこなすことで、遺族はしだいに心の整理がつき、家族の死を受け入れてゆくものです。