その他

弔電とは

弔電はお悔やみを伝える電報のこと

弔電は、通夜、葬儀・告別式に参列できないときに、喪主やご遺族への弔意を表すために送る電報です。弔電を送るときには、他の弔事のしきたりと同じように一定のマナーを守らなくてはいけません。故人の宗旨宗派により弔電の文面が違い、使うことを控える表現もあります。

また、弔電での故人の敬称は「ご尊父様(ごそんぷさま)」や「ご母堂様(ごぼどうさま)」のように、日常生活ではなじみのない言葉が使われます。

この記事は、弔電を出す立場の人のために、送る際の手順や費用と注意点などを、ご遺族のためには、弔電を受け取った際にすべきことについて解説します。

電報は連絡手段だった

1960年代(昭和30年代)ころまでは電話が普及しておらず、電報は連絡手段として使われていました。早稲田大学が考案した、大学合格を知らせる「サクラサク」、不合格の「サクラチル」は電報の文面として有名です。「チチキトク スグカエレ」のように、父が危篤なのですぐに帰宅せよ、などは緊急電報の代表的なものでした。

その後の固定電話、携帯電話の普及により、連絡手段としての電報の役目は終りました。現在、電報は慶弔電報、すなわち「お祝いやお悔やみの電報」として多くの人に利用されています。お祝いの電報を「祝電」、お悔やみの電報を「弔電」といいます。

弔電を送る手順

訃報をうけたら

訃報が届いたら、通夜か葬儀・告別式に参列するかどうかを決めましょう。やむを得ず参列ができないとき、弔電や電子郵便で弔意を伝えることにします。

電子郵便は「レタックス」とも呼ばれ、日本郵便が提供しています。ファクシミリやインターネットを通して差出人が郵便局にメッセージを送信し、郵便局が印刷して配達するサービスです。

弔電に必要な情報を得る

弔電は、通常は喪主宛に送ります。喪主名がわからないときは「故〇〇〇〇様ご遺族様」とします。新聞の死亡広告を見て送るときは、掲載内容に従って手配しましょう。

弔電を送るために必要な情報は、以下のとおりです。弔電を申し込む前に、メモしておくとスムーズです。

喪主のフルネーム

宛先の氏名は正確に記します。たとえば「さいとう(斉藤、斎藤、齋藤)」「わたなべ(渡辺、渡邉、渡邊、渡部)」のように、複数の漢字表記がある苗字は間違いやすいので注意しましょう。

弔電は後々まで保管され、ご遺族や親族の目に触れる機会が多いため、氏名の間違いで失礼のないようにしたいものです。喪主や故人からの年賀状や名刺があれば、確認するのもよいでしょう。

故人との続柄 

喪主からみて故人が誰にあたるかで、敬称の使い方が決まります。

通夜、葬儀の日時

通夜の1時間前までには、葬儀会場に届くように手配します。通夜に間に合わないときは葬儀・告別式の2時間前には着くように送ります。

弔電の配達先

葬儀会場(葬儀会館、寺院、教会、自宅など)の正確な住所、電話番号が必要です。

差出人

差出人は、フルネームで書きます。連名は3名までは氏名を列記、4名以上や会社などの団体は〇〇一同(〇〇大学同級生一同、〇〇株式会社△△支社一同など)とします。

弔電の送り主と故人との関係がご遺族にわかるよう、会社、部署名や学校の卒業年を添えると親切です。

弔電の費用と手配方法

弔電の料金

弔電の料金は以下の合算です。

  • 台紙の代金
  • メッセージ料金
  • オプション料金

通常は台紙の代金とメッセージ料金(本文と差出人情報を合わせた文字数による)との合計金額が弔電の料金です。オプション料金とは、差出人に配達した日時を通知するサービスで、880円(税込)がかかります。必要なら申し込みましょう。

台紙はシンプルで手頃な値段のものから豪華で高額のものまで、多くの種類があります。台紙で一番人気があるのが、おし花台紙です。その他、刺しゅう台紙もよく選ばれています。

故人が友人・知人なら1,000~3,000円、親族や特にお世話になった人なら3,000~10,000円の台紙を選ぶ人が多いようです。10,000円前後になると、線香やプリザーブドフラワーがセットになった台紙もあります。

弔電にかける費用は、台紙の代金とメッセージ料金を合わせて、3,000~5,000円が中心です。

参照:弔電 台紙

弔電の手配方法

電話で

NTT東日本・西日本(受付時間8:00~22:00、年中無休)ではオペレーターが対応します。

加入電話からは局番なし115(通話料金無料)に電話し、申込んでください。弔電の料金は、加入電話料金と合算して請求されます。

携帯電話、公衆電話からは0120-759-560(通話料金無料)で、弔電の料金はクレジットカード決済です。

インターネットで

24時間365日利用可能のインターネット申込みは、電話申込みより440円(税込)メッセージ料金が安くなります。支払いはクレジットカード払い、またはd払いです。以下のリンクを参照してください。

電話での申込みは、オペレーターに台紙や文面について相談にのってもらうことができます。

インターネットからの申込みは、画面を見ながら予算や故人のイメージにふさわしい台紙を選べます。文例数がたいへん豊富で、文面に迷ったときに便利です。

郵便局の電子郵便で

郵政省が1981年に、電子郵便(レタックス)のサービスを開始しました。現在は電報と同様、24時間365日利用可能で慶弔メッセージとしても使われています。電報との違いは、文字数が増えても追加料金が発生しないことです。レタックスを利用したい人は、以下のリンクを参照してください。

文面作成の注意点

弔電は簡潔な文章が望ましく、20〜80文字が一般的です。文例集から選ぶと間違いがありません。文例には番号がついていますので送りたいメッセージの番号を選択し、オペレーターに告げるかインターネットで入力します。

自作(オリジナル)の文面で送るときは、故人の宗教に注意し、個人的なことは書かないようにします。文例をヒントにオリジナリティを加える方法もあります。送り先は故人ではなく、あくまで喪主とご遺族であることを忘れないようにしましょう。

弔電の文面は、故人の宗教に適したものにします。間違いやすい表現に「ご冥福をお祈りします」があります。「冥福」は仏教の用語で、神道やキリスト教など他の宗教や無宗教では使いません。

仏教のなかでも、浄土真宗では使うことができません。浄土真宗には、人は死後すぐに仏になる「往生即成仏」という考えがあります。そのため、死後の世界である冥土での幸福を祈る意味の「ご冥福をお祈りします」は浄土真宗では使用しないことになっています。

弔電の文例

典型的な文例をいくつかご紹介します。〇〇には故人の敬称が入ります。敬称については次の項の「敬称一覧」を参照してください。

宗旨宗派を問わず使える文例

〇〇様のご逝去の報に接し、謹んで哀悼の意を表します。

〇〇様突然の訃報にただ驚いております。心よりお悔やみ申し上げます。

弔問に伺えない非礼をお詫びしますとともに、心からお悔やみ申し上げます。

仏式葬儀

〇〇様ご永眠の報に接し、言葉もありません。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

仏式葬儀(浄土真宗)

〇〇様ご逝去の報に接し、謹んで哀悼の意を表します。

〇〇様ご永眠の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。

神式葬儀

〇〇様の御霊(みたま)が平安な眠りにつかれますよう、お祈り申し上げます。

キリスト教式葬儀

〇〇様御昇天(召天)の報に接し、心から哀悼の意を表します。

ご逝去の報に接し、悲しみにたえません。〇〇様の安らかな旅立ちとなりますよう、心よりお祈り申し上げます。

社葬、仕事関係者の葬儀

社長〇〇〇〇様の訃報に接し、謹んで哀悼の意を表します。ご生前のご厚情に感謝申し上げ、ご功績をしのび心よりお悔やみ申し上げます。

敬称一覧

故人の敬称は、喪主から見て故人が誰にあたるかを間違えないようにします。弔電の敬称には決まった表現があるので、従いましょう。

例)ご尊父様のご逝去を悼み、心よりお悔やみ申し上げます。(喪主の父が亡くなったとき)

父、義父 ご尊父様、お父様、お父上様
母、義母 ご母堂様、お母様、お母上様
ご主人様
ご令室様
ご令兄様、兄上様
ご令弟様、弟様
ご令姉様、姉上様
ご令妹様、妹様
祖父、義祖父 ご祖父様
祖母、義祖母 ご祖母様
息子 ご令息様、ご子息様
ご令嬢様、ご息女様
ご令孫様

出典:NTT西日本 すぐに使える!弔電を打つ際に活用できる「敬称一覧」

忌み言葉に注意

冠婚葬祭のような特定の場で使用を控える言葉を、「忌み言葉」といいます。弔事では口頭でお悔やみを述べるときや、手紙やメールでお悔やみを伝えるときと同様、弔電も忌み言葉に注意します。

以下が代表的な忌み言葉です。NTTや郵便局の文例集を利用するのなら、心配はいりません。オリジナルの文面で送る際に、知らず知らずのうちに使ってしまうことがありますので気をつけましょう。

  • 不幸がつづくことを連想させる:重ね重ね、たびたび、いよいよ、次々、皆々様、返す返す、重々、再び
  • 悪いことを連想させる:とんでもないこと
  • 読みが不吉:四(死に通じる)、九(苦しむに通じる)
  • 直接的な表現:死亡、死ぬ、生きているとき(死亡、死ぬはご逝去、生きているときは生前またはご存命中)

弔電を受け取った喪家がすること

いただいた弔電は、通常、葬儀で紹介します。通夜の前には葬儀会場に弔電が配達されるので、喪家は通夜のあとに目を通し、葬儀で読み上げをしてもらう弔電の選定を行いましょう。

葬儀での弔電紹介

葬儀では、受け取った弔電を紹介します。全文を読み上げるのは2~3通とし、あとは氏名のみを紹介します。大型葬で弔電の数が多いときは、氏名のみの紹介も数名とし「ほかにも多くの方々から頂戴しております」としましょう。

喪主は読み上げる弔電を選び、読み上げ順を決めて司会担当者に依頼します。紹介の順番は、故人と近い関係の人からです。関係性が同じなら、年齢が上の人を先にします。

弔電紹介は式のなかで、仏式なら僧侶の読経、神式では斎主の祭詞奏上、キリスト教式では、神父や牧師の言葉のあとに行われるのが一般的です。

ただし式のどこで行うかは、地域や宗旨宗派によっても違いがあるため、葬儀社との打ち合わせで確認してください。どの宗教でもたいていは、弔辞の拝受に続いて弔電の紹介を行っています。

弔電紹介は、司会者が行うのが一般的です。地域によっては喪主が自ら行うところもあります。地域によりやり方があるため、葬儀社スタッフに確認しましょう。

弔電へのお礼状

葬儀後1週間前後に、封書またははがきでお礼状を出すのが一般的です。地域によっては、出さない習慣のところもあります。数が多く手書きで送れないときは、弔事・仏事のはがき印刷サービスを利用するとよいでしょう。

弔電にまつわる疑問

弔電を出したあとで葬儀に参列できることになったら

弔電を送ってからでも、参列して問題ありません。弔電を受け取った時点で、喪家では送り主が参列できないものと考えます。しかし参列すれば、「都合がついて来てくれた」と解釈するのが自然です。

弔電は葬儀のあとでも出してよいか

葬儀後は出さないのが一般的です。葬儀後に訃報を知ったら、お悔やみの手紙や香典を郵送するか、ご遺族の都合を聞いたうえで自宅に弔問に行くのが望ましいでしょう。

弔電のほかに香典、供花、供物を送りたい

近年は、香典、供花、供物を辞退する喪家も増えてきました。そのため事前に確認が必要です。

辞退していないことがわかれば、香典は不祝儀袋に入れて現金書留で自宅宛てに送ります。供花、供物は葬儀会場を飾る役割もあり、他とのバランスを考えて設置されます。担当葬儀社を通して手配しましょう。

まとめ

弔電とは、やむを得ず通夜、葬儀・告別式に参列できないときに、ご遺族に対する弔意を示すために送る電報です。

弔電にもマナーがあり、宗旨宗派によっては使えない表現があります。そのためNTTなどの文例集から選んだり、文例をアレンジした文面にしたりすると間違いがありません。

弔電は簡潔に、文字数20〜80字程度、多くても100字以内に収まるようにします。

弔電は「たいへん残念ながらお見送りには行けませんが、哀悼の意を表します」という、ご遺族へのメッセージです。マナーを守り、心を込めて送りましょう。