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葬儀後に遺族が受け取れる給付金について

近年は葬儀の規模がコンパクトになり、直葬(火葬式)や一日葬、家族葬が選ばれる傾向にあります。葬儀規模が小さくなることで、葬儀にかかる費用も以前ほど高額ではなくなりました。

しかし、もっともシンプルな葬儀形式の直葬(火葬式)でも20万円ほどの費用がかかり、遺族の負担は決して軽いものではありません。

そこで、遺族へ給付される葬儀費用の補助がありますので、忘れずに受け取るようにしましょう。補助されるのは、故人が加入していた公的医療保険(国民健康保険や社会保険)により「葬祭費」と「埋葬料」とに大別されます。

ただしこの給付金は、死亡届を提出すれば自動的に支給されるものではありません。葬儀を執り行った家の代表者(通常は喪主)が申請することで、はじめて受け取れます。

この記事では、葬祭費と埋葬料の申請のしかた、申請のために必要になるもの、給付額、給付までの期間、申請時の注意点を解説します。

また、葬祭費や埋葬料が受け取れないケースも、合わせてご紹介します。

公的医療保険の種類

公的医療保険には、会社員など雇用される人が加入する「社会保険(被用者保険)」、自営業、フリーランス、無職の人などが加入する「国民健康保険」、75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」があります。

葬儀後の給付金を請求する際に、念のため故人が加入していた保険を確認しましょう。

保険の種類 加入対象者
社会保険 協会けんぽ(以前の政府管掌保険) 中小企業の従業員と扶養家族
組合健保(組合管掌健康保険) 700人以上の企業の従業員と扶養家族
共済組合 公務員、私立学校の教職員と扶養家族
船員保険 船員と扶養家族
日雇保険 臨時で雇用される人と扶養家族
国民健康保険 市町村国保 地域に住む、社会保険、国保組合加入者以外の74歳未満の人
国保組合(国民健康保険組合) 個人事業所を対象とし、同種の事業に従事する人
後期高齢者医療制度 75歳以上の人および65歳以上75際未満で一定の障害がある人

葬祭費と埋葬料の違い

葬儀後に受け取れる給付金は、故人が加入していた公的医療保険により、「葬祭費」と「埋葬料」の2種類があります。両者は名称が違いますが、葬儀に対する補助という目的は同じです。

葬祭費

故人が市町村国民健康保険、国民健康保険組合、後期高齢者医療制度の加入者だったときに給付されます。

埋葬料、埋葬費

故人が社会保険(被用者保険)の加入者だったときに給付されます。

葬祭費と埋葬料は、葬儀を執り行った遺族(通常は喪主)からの申請により支払われます。埋葬費は埋葬料と似ていますが別のもので、故人に親族がおらず、実際に葬儀を行った人に実費が給付されるものです。

葬祭費の申請方法

故人が市町村国民健康保険、国民健康保険組合(医師国保組合、歯科医師国保組合、薬剤師国保組合、建設業国保組合、土木建築国保組合など)、後期高齢者医療制度に加入していたとき、葬儀を執行した人(喪主)の申請により葬祭費が給付されます。

喪主以外の人が申請する際は、委任状が必要です。

申請先

申請先は以下のとおりです。

市町村国保、後期高齢者医療制度

市区町村役場の保険年金課など、健康保険を取り扱う係へ申請します。

国保組合

故人が死亡した時点で加入していた、国民健康保険組合の支部へ申請します。 

申請期限

申請期限は、葬祭を行った日の翌日から2年です。2年を過ぎると、申請する権利が消失します。

家族が死亡すると、遺族は故人の健康保険資格喪失届をすみやかに市区町村または国保組合に提出し、保険証を返却する必要があります。

その際に、葬祭費の申請も同時に行うことをお勧めします。そうすることで、請求忘れを防ぐことができます。

申請に必要なもの

申請に必要な書類などは、市区町村、各国保組合により異なるため、申請前にホームページで確認するか、直接電話で問い合わせをしましょう。通常、必要とされるものは以下のとおりです。

  • 故人の保険証(既に返却済みであれば不要)
  • 申請者の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、保険証など)
  • 申請者の印鑑
  • 申請者の振込口座がわかるもの
  • 葬儀を執り行った証明になるもの(申請者宛て葬儀社発行の領収書、会葬礼状など)

なお給付金は現金ではなく、申請者の金融口座に振り込まれます。申請する人と、振込口座名義人が同一であることが必要です。

給付金額と給付までの日数

市町村国保、後期高齢者医療制度

給付額は自治体により2~7万円で、5万円が中心です。申請後1~2か月で指定口座に振り込まれます。

国保組合

給付額は国保組合により異なります。医師国保20万円、歯科医師国保10~30万円、薬剤師国保10万円、建設業国保10万円などとなっています。

国保組合では、金額は組合員本人より少ないですが、家族の死亡にも葬祭費を給付します。詳しくは各国保組合支部に問い合わせてください。申請後1~2か月で指定口座に振り込まれます。

給付額の例

以下のように、葬祭費の給付額は自治体や国保組合により異なっています。

【大阪府】

大阪府内は全市区町村で、一律5万円を給付しています。

【東京都】

東京23区は一律7万円、23区以外はおおむね5万円(一部3万円もあり)を給付しています。

【大阪建設国保組合】

組合員本人10万円、家族5万円を給付しています。

【東京都医師国保組合】

組合員本人20万円、家族10万円を給付しています。

直葬(火葬式)でも葬祭費が給付されるかどうか

近年、葬儀・告別式のような儀式を行わず、火葬のみで故人を送るケースも増えています。それを直葬(火葬式)といいます。

葬儀費用を抑えたい場合や、故人が高齢で遺族以外に参列者がほとんどいなかったり、生後間もなく亡くなったりすると、直葬(火葬式)が選ばれる傾向にあります。

その際、葬祭を行っていないわけですから、葬祭費を受け取れるのかどうか、という疑問が生じます。

結論をいうと、火葬のみでも葬祭費を給付するケースと、葬儀・告別式を執り行わないと給付しないケースとがあります。葬祭費の解釈は、自治体や組合により違うのが現状です。

一般的には葬祭費の目的は葬儀の補助のため、葬儀を執り行うことが前提です。そのため葬儀社が発行した葬儀代金の領収書や、会葬礼状の提出を求められます。

しかし火葬のみでも葬祭費を給付すると、ホームページに明記している自治体もあります。

直葬(火葬式)を執り行った際には、請求先のホームページを参照し、詳細については各市区町村役場の保険年金課、各国保組合支部などに直接問い合わせることをお勧めします。

以下の大阪市や堺市のホームページにあるように、「葬祭を行った方」や「葬儀を行ったことが確認できるものが必要」とある自治体では、火葬のみでは葬祭費を給付しない可能性があります。

ただし直葬(火葬式)のあとに「お別れの会」など、葬儀・告別式に準ずる会を設けていれば、葬祭費を認める自治体や組合もあります。

一方、仙台市や相模原市のように「葬儀を行わなかった場合は火葬を執り行った人に支給する」や「葬祭(直接火葬場で執り行う場合も含む)」と明らかな記載があれば、直葬(火葬式)でも葬祭費が給付されると考えてよいでしょう。

自治体のホームページに掲載されている例を、いくつかご紹介します。

【大阪市】ホームページから引用(以下同様)

大阪市国民健康保険の被保険者が亡くなられたときは、葬祭を行った方に50,000円を支給します。

引用元 大阪市ホームページ

【堺市】

被保険者が死亡されたときに、1件につき5万円を支給します。葬祭費を申請できるのは、死亡された被保険者の葬祭を行った方です。

(中略) 

必要なもの:葬儀を行った方の氏名及び葬儀を行ったことが確認できるもの(葬儀費用の領収書など)

引用元 堺市ホームページ

【仙台市】

国民健康保険に加入している方が亡くなったとき、葬祭を行った方(喪主の方)に5万円が支給されます(葬儀・葬式を行っていない場合は、火葬を執り行った方に支給されます)。

引用元 仙台市ホームページ

【相模原市】

国民健康保険の加入者が死亡したとき、葬祭(直接火葬場で行う場合も含む)を行った人に対して葬祭費として5万円が支給されます。

引用元 相模原市ホームページ

埋葬料の申請方法

社会保険(被用者保険)に加入していた本人の死亡、および被扶養者(家族)の死亡では、埋葬料が給付されます。

申請者となるのは葬儀を執り行った人、埋葬を行った人で、通常は喪主です。埋葬料は葬祭費と違い、葬儀・告別式を行ったかどうかは給付の要件ではありません。よって、火葬のみでも支払われます。

申請先

故人の加入先だった健康保険組合、または社会保険事務所に申請します。勤務先でも手続きをしてもらえますので、故人の職場に問い合わせをしてみてください。

申請期限

申請の期限は、死亡日の翌日から2年です。2年を過ぎると、申請する権利が消失します。

申請に必要なもの

  • 申請書(手書き用、入力用ともにインターネットでダウンロード可)
  • 故人の健康保険証
  • 死亡診断書のコピー
  • 埋葬許可証
  • 申請者の振込口座がわかるもの
  • 葬儀にかかった費用が分かる葬儀社発行の領収書(宛名は申請者と同じであること)
  • 生計維持関係を確認できる書類:前年の所得証明書、住民票など

給付金額と給付までの日数

本人の死亡時に5万円、被扶養者(家族)死亡時は家族埋葬料として5万円です。申請から約1か月後に振り込まれます。

健康保険組合によっては、独自の付加給付金を加算しているところがあります。付加される金額は企業により異なります。

埋葬費とは

埋葬費は、埋葬料を受け取る人がいない際に発生します。故人に身寄りがなく埋葬料の受取人がいない場合、実際に葬儀や埋葬を行った人に対して、その人の申請により5万円を上限に実費が支払われます。

葬祭費や埋葬料を受け取れないケース

日本では国民皆保険制度により、生活保護を受給している人を除き、すべての人がなんらかの公的医療保険に加入しています。そのため死亡時には遺族が、葬祭費か埋葬料を受け取れます。

ただし死亡理由やその他の条件によっては、公的医療保険からの給付金を請求できないことがあります。以下が、葬祭費や埋葬料を受け取れない主な理由です。

労災保険からの補償があるとき

労災とは労働災害のことで、業務上の事故(業務災害)や通勤中の事故(通勤災害)により負傷したり、病気になったり、死亡したりした際に、労災保険(労働者災害保険)から補償が受けられる制度です。

死亡すると遺族に対して「葬祭料(葬祭給付)」が支払われます。その場合、医療保険からの葬祭費や埋葬料は給付されません。

第三者行為による死亡で加害者から賠償金を受け取るとき

第三者行為による死亡理由には、以下が該当します。

  • 交通事故
  • 他人からの暴行
  • 食中毒
  • 設備の不具合によるもの
  • 他人が飼っている動物に危害を加えられた
  • その他の他人の行為が原因となるもの

死亡の原因が交通事故など第三者の行為によるもので、第三者(加害者)から葬祭にかかる費用の賠償を受けると、葬祭費や埋葬料は受け取れません。

故人が保険料を滞納していたとき

保険料の滞納があると、葬祭費が給付されないことがあります。国民健康保険では納期限から1年半の滞納で保険給付の差し止めが行われ、特別療養費、高額療養費、葬祭費などは給付されません。

ふたつの医療保険から同時に給付金は受け取れない

社会保険に1年以上加入していた人が退職し、国民健康保険に切り替えた後の3か月以内に死亡すると、社会保険のほうから埋葬料が支払われます。そのため、国民健康保険からの葬祭費は受け取れません。

死亡時の見舞金(弔慰金)とは

故人が会社員だった場合、遺族が受け取れる見舞金に「弔慰金」があります。

これは法定外福利厚生のなかの、慶弔見舞金制度によるものです。任意の福利厚生のため、すべての企業が導入しているわけではありませんが、約8割の企業で取り入れています。

従業員または従業員の家族が死亡した際に、遺族に支払われるのが弔慰金です。一律定額を支給する企業と、勤続年数に応じた金額を支給する企業とがあります。支給額は、1~10万円が中心です。

まとめ

葬儀後に遺族に支払われる給付金に、葬祭費と埋葬料があります。故人が加入していた公的医療保険の種類により、遺族はどちらかを受け取れます。

いずれも葬儀を執り行った家の代表者(喪主)が申請しないと、受け取れません。よって死亡届とは別に、申請手続きが必要となります。

葬儀には大きな出費が伴います。葬祭費や埋葬料の給付額は5万円が中心で、葬儀費用の全額を補うことはできませんが、遺族の負担軽減につながります。忘れずに申請し、受け取りましょう。