海洋散骨とは?自然に還る新しい供養の形

海洋散骨の基本
散骨とは遺骨を墓に納骨せず、海や山の自然のなかにまく葬送のスタイルで、故人が自然に還る「自然葬」のひとつです。
その中でも海に遺骨をまく方法を特に「海洋散骨」といいます。
海洋散骨は、故人が海が好きな人であった、海に関わる仕事をしていた、思い出の地が美しい海であるなど、海洋にゆかりの深い人に選ばれることが多くなっています。
近年、少子高齢化や都市部への人口集中が進む日本では、一家の墓の継承者問題が深刻です。
墓が遠方で墓参りの旅費が高額である、継承者自身も高齢になり、墓参りや墓の管理が困難になった、子どもがいないため自分たちの代以降は墓を守る人がいない、などの理由で、墓じまいを検討する人も増えました。
また、新たな墓地の購入には、墓地の永代使用料と墓石建立費用の合計で200~250万円ほどが必要です。
墓地の永代使用料は墓石を建てる一区画を永代に使用する権利のことで、地価を反映するため都市部に行くほど高額です。
永代使用料の全国平均は60~80万円といわれていますが、大阪や東京などでは150万円以上になります。
墓石代を加えると墓の費用は大きな出費です。
以上のような、墓の跡継ぎがいない問題と墓の購入費が高額であることの解決策としても、近年注目を集めている供養方法のひとつが「海洋散骨」です。
一般社団法人日本海洋散骨協会では、加入企業の散骨施行件数を年次で発表しており、2018年からの推移は以下のとおりです。
5年間で約2.5倍に大きく増加したことがわかります。
- 2018年(平成31年)…1,049件
- 2019年(令和元年)…1,215件
- 2020年(令和2年)…1,509件
- 2021年(令和3年)…1,729件
- 2022年(令和4年)…2,466件
- 2023年(令和5年)…2,611件
散骨は違法ではありませんが、いくつかのルールがあります。
海洋散骨で最低限守るべきことは「遺骨を散骨に適した形状にすること(粉骨)」と「周囲の人々や環境への影響を考慮し、散骨に適した場所(沖合)で行うこと」です。
海洋散骨の歴史
散骨はインドで生まれ、アジア全域に広がったといわれています。
日本では歴史が古く、奈良時代にはすでに散骨が行われていました。
その後、江戸時代に檀家制度が始まり、人々はいずれかの寺の檀家となることが定められ、亡くなった人は寺院墓地に埋葬されるようになりました。
現在でも多くの家が特定の寺院の檀家として、寺院墓地に一家の墓を所有しています。
海洋散骨は日本で合法?各国での法的規制の違い
日本には1948年(昭和23年)に制定された「墓地、埋葬等に関する法律」があり「墓埋法」または「墓地埋葬法」と略されています。
この法律には墓地や火葬場運営、埋葬、埋蔵に関する条項などが定められています。
第四条に「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。」とあります。
たとえば、自宅の庭や所有する山など、仮に自己所有の土地であっても墓地ではない場所に遺骨を埋葬することはできません。
しかし、散骨には禁止する法律がなく、ルールに従えば問題がないとされています。
散骨に関する法規制がまだ整備されていないのが現状で、法務省は「節度をもって葬送の一つとして行われる限り違法ではない」という見解を示しています。
ただし、地方公共団体によっては散骨に関する条例を定めているところもあります。
海外での海洋散骨を希望する人も増え、ハワイは人気の散骨場所です。
アメリカでは州ごとに散骨に関する法規制があり、たとえばハワイを希望するのなら、ハワイ州の法律に従って行うことになります。
イギリスでは散骨の規制が厳格で、散骨エリアが決められています。
海外での海洋散骨を希望する人は、その国、その州の法規制に従えば行うことが可能です。
出典:墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)
海洋散骨の問題とは?
海洋散骨への注目度は、年々高まっています。
しかし日本では一般的な供養方法ではないため、散骨に抵抗を示す人も一定数います。
海洋散骨は、関係する人々全員の理解を得られるまで、時間を要することがあります。
自分で海洋散骨はできる?手順や必要な準備を確認

自分で散骨する際の準備と手続き
故人と生前に話し合って海洋散骨を決めていた、故人がエンディングノートなどに散骨希望と書いていた、散骨事業者と生前契約を結んでいたなど、故人の遺志が明確な場合は比較的スムーズに執り行うことができます。
ここでは業者に依頼せず、可能な限り遺族や親族だけで散骨する際のポイントを考えてみましょう。
海洋散骨の際に、公的機関に提出する特別な書類は不要です。
しかしいったん墓に納骨された遺骨を取り出して散骨する場合は、埋葬許可証(埋火葬証明書)が必要になることがあります。
①日程調整
すべての海洋散骨に言えることですが、日程は好天が続く時期を選ぶのがよいでしょう。
散骨は船上で行われるため真夏や真冬、梅雨時も避けるのが無難です。
夏は台風の影響や海上の混雑が予想され、冬は海が荒れがちで海上は寒さがいっそう厳しくなります。
過ごしやすい春か秋が、参加者にも負担が少ないでしょう。
②参加者調整
遺族のみか、親族にも声がけするか、故人の親しい友人や仕事関係の人にも参加いただくかなど、どの範囲の人々で故人を送るかを決めます。人数により必要な船のサイズが変わってきます。
③招待状発送または電話・メール連絡
参加していただきたい方々に海洋散骨を行う旨を通知し、参加可否の返信をもらいます。
自分で船を借りる際のポイントと選び方
海洋散骨には参加人数に応じたサイズの船が必要です。
船体はなるべく大きく、デッキと船内空間のあるものが理想です。
散骨する場所を「散骨ポイント」と呼びます。
散骨ポイントまでは岸から沖合へ最低でも1海里(約2㎞)以上出航しなくてはいけません。
散骨ポイントまでの移動に利用できるのは、散骨専用にチャーターした船のみです。
フェリー、定期船、観光船など他の一般乗客も乗る船に遺骨を持ち込み、散骨することはできません。
また、漁業従事者のなかには漁船を所有している人も多いでしょう。
自己所有の漁船であっても、散骨には利用できません。
漁船は、漁業に従事する人が業務のためだけに乗る船だからです。
船内に持ち込むものは以下のとおりです。
- 粉骨した遺骨
粉骨専門業者または個人でパウダー状に粉砕した遺骨を、水に溶ける袋に小分けにします。
個人で行う場合は、水溶性の封筒状の袋をAmazonや楽天市場で購入できます。
散骨は、遺骨が入った小袋ごと海に納めるか、遺骨を袋から出して海面にまき、袋は別に海に入れたりします。
- 献花
花は故人が好んだもの、故人のイメージに似合うものを選びましょう。
海洋散骨には、海水の色と同化しにくい、赤系、ピンク系、黄色系、白系などの花がよく選ばれています。
- 献水、献酒
ペットボトルや瓶入りの水や酒を容器から海に注ぎ入れます。
プラスティックやビニール、飲み物の容器など、海中で分解されないものは持ち帰ります。
なお、故人が愛用していたものでも、副葬品は海には入れられません。
遺骨の粉末化方法
厚生労働省では令和3年3月に「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」をホームページに追加しています。
散骨事業者向けとなってはいますが、利用者にとっても有益な情報が多く含まれています。
そのガイドラインに「焼骨は、その形状を視認できないよう粉状に砕くこと。」と規定されています。
遺骨を粉状に砕くことを「粉骨」といいます。
具体的には2㎜以下まで遺骨を細かくします。
要するに「一見骨とはわからない形状に加工すること」が海洋散骨には必須です。
遺骨の重量は年齢や体格によりますが、男性が1.5~3kg、女性が1~2.5kgといわれています。
また、遺骨の体積は平均6リットルほどで、粉骨することで1/4~1/6ほどに小さくなります。
火葬後の収骨(骨上げ)方法は地域により違い、東日本では全収骨、西日本では一部収骨の地域が多くみられます。
全収骨の場合、遺骨の重量、体積ともに大きいため、個人で遺骨のすべてをパウダー状に粉砕するには時間と労力を要します。
出典:厚生労働省ホームページ 散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)
自分で散骨する際のマナーと心構え
なるべく業者に頼らず、遺族や親族の手で散骨ができれば費用はあまり高額にはなりません。
しかし費用面だけにとらわられず、個人でできる範囲はどこまでか、専門業者に依頼するほうがベターなのはどの部分かの見極めが大切です。
個人で散骨を行うには、①散骨場所の確認(散骨の可否) ②船の用意 ③遺骨の粉骨、この3点が最低限必要です。
これらが遺族や親族たちだけで可能かどうかを検討しましょう。
海洋散骨の料金相場は?個人散骨と業者依頼の費用比較

自分で海洋散骨を行う場合の費用
個人で海洋散骨を行おうとすると、業者に依頼するより時間や労力が必要です。
船のレンタルや粉骨を行う必要があります。
船のレンタル
まずは船のレンタル費用について見ていきます。
所要時間は乗船から寄港まで約3時間を想定しています。
<費用の目安>
小型クルーザー(2~10名):3時間3万円から
中型クルーザー(2~30名):3時間15万円から
大型クルーザー(2~200名):3時間30~60万円
費用はあくまで目安なため、実際の料金はレンタル業者に問い合わせる必要があります。
また、レンタルの目的として海洋散骨が可能かどうかの確認も必要でしょう。
粉骨について
骨壺に入ったままの骨では散骨することはできません。
骨を粉々にすることで初めて散骨が可能となります。
粉骨を個人で行う方法をご紹介します。
手作業で自分で行う方法と、業者に依頼する方法の2つがあります。
手作業で粉骨するには、袋に入れた遺骨をハンマーやめん棒などでたたいて粉砕し、すり鉢とすりこぎでパウダー状にするのが一般的です。
家庭内にある道具で行うことができ、費用はかかりません。
しかし、労力や心理的な負担が大きい作業になります。
粉骨専門業者では専用の機械を使用し、早くきれいに仕上げます。
粉骨専門業者の料金プラン例をあげます。
費用の目安
<A社>
骨壺サイズによりいくつかのプランを提供しています。
遺骨の引き渡し方法は、利用者の持ち込み、郵送、スタッフによる引き取りの3パターンです。
3寸(10㎝以下):7,700円~
4~5寸(12~15㎝):11,000円~
6~7寸(18~22㎝):16,500円~
<B社>
骨壺サイズにより2つのプランを提供しています。
2寸~5寸(15㎝未満):9,000円
6寸~(15㎝以上):12,000円
料金はいずれも税込みです。
長期間保管されていたり、いったん墓に納骨された遺骨を取り出したりして粉骨するには、洗浄と乾燥が必要になるため、その分の料金が加算されることもあります。
散骨専門業者に依頼した場合の料金の内訳
では散骨専門業者に依頼する手順は、次のとおりです。
申し込み
支払い(現金、クレジットカード、振込など業者による)
遺骨を業者に引き渡し業者側で粉骨
散骨当日は指定時間、指定場所に集合し乗船
沖合の散骨ポイントにて散骨
寄港
基本料金に含まれるものは、船のチャーター代、粉骨料金(業者により別途料金の場合もあり)、献花・献酒代、散骨証明書、保険料です。
船内で会食をする場合は別途料金が必要です。
散骨専門業者が提供している海洋散骨の料金プランには、大きくわけて以下の3つがあります。
個別散骨プラン:30~50万円
遺族、親族、友人など故人とゆかりのあった人たちが、一家族のみの貸し切りで乗船し散骨を行います。
個別プランは10名以上の比較的参加者が多い散骨に向いています。
合同散骨プラン:15~20万円
複数の遺族が乗船し、合同で散骨を行います。
一家族の参加者が少なく、費用を抑えたいときに選ばれています。
他家と一緒でもあまり気にならない方々に向いています。
代行散骨プラン:5万円前後
散骨専門業者のスタッフが遺族から直接遺骨を預かり、遺族に代わり散骨をします。
依頼者が高齢、病気やけがの療養中、妊娠中、船酔いしやすいなどの事情がある場合に向いています。
3社ほどから見積もりをもらい比較検討してみましょう。
基本料金のなかに含まれるものは何か、どのようなオプションプランを提供しているか、スタッフの対応はどうかなどを比較してみてください。
資料や見積もり請求は、ほとんどの業者で電話かインターネットで受け付けています。
料金以外に考慮すべきポイント
現在、多くの業者が海洋散骨の「体験クルーズ」を提供しています。
海にまくのは遺骨に見立てた塩などです。
機会があれば参加してみるのもよいでしょう。
海洋散骨の生前契約をしておきたい人は、自分が亡くなったあとにどのように散骨されるのかのイメージがわきます。
体験クルーズに参加することで、船内の様子やスタッフの対応の良しあしがわかります。
海洋散骨のメリットとデメリットとは?

海洋散骨のメリットとデメリットをしっかりと理解することも大切です。
デメリットに関しては、解決策や代替案も合わせて紹介しています。
海洋散骨のメリット
- 金銭負担が少ない
墓の建立には、墓地の立地、経営母体が公営か民営か寺院かによりますが、永代使用料と墓石代の合計が全国平均で200万円前後、首都圏や大阪などでは250万円程度かかるといわれています。
海洋散骨は墓が必要なく、高く見積もったとしても墓の購入費用の5分の1ほどで執り行うことができます。
もちろん、墓を建立すれば子孫が引き継ぐことができます。
永代使用料は墓地の一区画を永代にわたり使用できる権利(永代使用権)に対する料金で、一度支払えば次世代、次々世代以降も、長い年月使用できます。
一方、海洋散骨は一回限りの費用です。
そのため、単純に費用面だけで比較できるものではありません。
しかし一時的な出費として考えると、海洋散骨は費用負担が少ない、といえます。
- 継承者を必要としない
少子高齢化により、墓の継承者がいなかったり、継承者自身も高齢になったりして、墓を維持、管理するのが難しい時代になりました。
海洋散骨は墓を必要としない供養方法で、跡継ぎの心配はなくなります。
海洋散骨を生前予約する人には、子どもに墓の管理の負担をかけたくないという思いもあります。
- 宗旨・宗派を問わない
日本の宗教葬は仏教式、神式、キリスト教式があり、特に仏式葬儀が圧倒的に多く、葬儀の9割は仏式で執り行われています。
ほかに新興宗教、無宗教の葬儀も行われます。
宗教葬では、その宗教、宗派により決められた儀式が存在します。
仏教で菩提寺がある場合、故人に戒名を授かり寺院墓地に納骨するのが一般的です。
海洋散骨は、故人や遺族の信仰は問われません。
どのような宗教の人でも、無宗教の人でも、すべての人が海洋散骨を行ってもらうことができます。
- 故人の遺志を尊重できる
「終活」という概念が広く知られるようになって、15年ほどになります。
終活とは「人生の終わりのための活動」のことです。ひと昔まえは死の準備を行うことは、縁起でもなく不謹慎なことと考えられていました。
しかし時代は変わり、自分の人生の幕引きを考え、準備をする人が増えています。
エンディングノートには、希望する葬儀の形を記載する欄がありますので、海洋散骨を希望する人は記録しておきましょう。
故人が生前、海洋散骨を望んでいた場合には、遺族がかなえてあげることができます。
海洋散骨のデメリット
- 遺骨が手元に残らない
散骨により、遺骨は自然に還ってゆきます。
そのため、基本的に遺骨は手元に残りません。
しかし「分骨」により一部を手元に残し、自宅に安置することもできます。
または、遺骨の一部を海洋散骨で見送り、一家の墓があれば残りの遺骨を墓に納骨する方法もあります。
遺骨を自宅に安置することを「手元供養」といいます。
遺骨は粉骨され体積も小さくなっていますので、手元供養用のコンパクトな骨壺に納めて自宅で供養することができます。
ほかには「遺骨アクセサリー」と呼ばれる、いつも故人を身近に感じていられる商品があります。
ペンダントや指輪の中に、少量の粉砕された遺骨を納め、常に身に着けて供養するものです。
見た目は一般的なアクセサリーですので、周囲の人たちに気づかれることもありません。
- 墓参りができない
日本では故人の命日や、お盆、春秋のお彼岸には墓参りをし、先祖をしのぶのが慣例になっています。
遠方に住む子や孫、親戚と顔を合わせる機会にもなり、日本の季節行事のひとつです。
墓じまいをして散骨したり、最初から墓を持たず散骨を選択したりすると、お参りする墓がありません。
「霊園に購入はできないがお墓の代わりがほしい」という人のために、自宅に安置できる小さな墓が販売されています。
「宅墓」や「自宅墓」とよばれる室内用の墓で、粉骨した遺骨を納めるスペースがついています。
実際に起こった海洋散骨のトラブル事例とその回避策
日本において海洋散骨は合法であり、一定のルールやマナーを守り節度を持った散骨を行うことは問題ないとされています。
しかし、散骨にまつわるトラブルが実際に発生しています。
トラブル事例を事前に知っておくことで、回避することが可能です。
家族間の意見の相違によるトラブル
日本では、亡くなった人は火葬し、骨壺に収骨して墓に納骨するのが伝統的な供養のしかたです。
命日やお彼岸、お盆には墓前で手を合わせ故人に思いをはせます。
海洋散骨は、従来の供養方法とはまったく異なります。
そのため、遺族や親族のなかには散骨に反対する人がいても不思議ではありません。
故人の関係者が多いほど、意見の相違が出ると考えておいたほうがよいでしょう。
海洋散骨を主催する喪主や遺族代表者は、散骨を選ぶ理由を説明し、周囲の理解を得ることが大切です。
故人がエンディングノート、ボイスレコーダー、ビデオなどに海洋散骨を希望する旨を遺していれば、有力な説得材料になります。
しかし、ことを急いで関係が悪化しないよう、時間をかけて話し合いを持つのが得策です。
幸い、遺骨は火葬後何日以内に納骨しなくてはいけない、という法的な決まりはありません。
散骨を行う場所でのトラブル
散骨を行えるのは、沖合に限られます。少なくとも1海里(約2㎞)は船で沖に出る必要があります。
以下の場所では散骨ができません。
散骨を希望する場所が禁止区域に該当しないかの確認が必要です。
以下のような場所で散骨をしてしまうと、近隣住民、観光業や漁業従事者とトラブルになりかねません。
- 観光地、観光名所とその周辺
- 海水浴場とその周辺
- 漁業区域、漁場、養殖場
- 船の航路
河川や湖沼、ダムや滝も水源や生活用水となるため、散骨は控えます。
海洋散骨専門業者に依頼すれば、散骨禁止区域に誤って散骨を行う心配はありません。
なお、散骨の乗船場となる桟橋は公共の場であり、多くの人たちがレジャー目的や仕事で訪れています。
そのため、海洋散骨の参加者は喪服着用を控えるのがマナーです。
船内に持ち込む遺骨、遺影、献花、献酒などもバッグや袋に入れるなどして、周囲から見えない配慮が必要です。
業者選びでのトラブル
現在のところ散骨事業者に対する許可や認可がないため、悪質な業者や経営破綻しそうな業者と契約をしてしまうリスクも否定できません。
業者のサービスの質やアフターサポート、信頼性についても調査する必要があります。 利用した人の評判や口コミなども参考にしましょう。
厚生労働省の「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」には、「散骨事業者は、自らの散骨の実施状況(散骨の件数、散骨の場所等)を年度ごとに取りまとめ、自社のホームページ等で公表すること」とあり、業者の実績をホームページ上で見ることができます。
業者が散骨専門の協会や団体に加盟しているかも、確認してみてください。
たとえば「一般社団法人日本海洋散骨協会」は加盟する事業者に対して海洋散骨のガイドラインを作成し、遵守を求めています。
菩提寺とのトラブル
菩提寺があり代々の墓が寺院内にある家では、墓に納骨せず散骨を行うと、寺院との関係が悪化することがあります。
大切なことは、菩提寺に黙って海洋散骨を行わないことです。
事前にご住職に故人の遺志により海洋散骨を行いたい旨を伝え、理解を得る必要があります。
または、あらかじめ本人が自分の亡きあとは海洋散骨を希望していることを、ご住職に伝えておくのもよいでしょう。
分骨することで、半分は寺院墓地へ納骨、半分を故人が望んだ海洋散骨という方法をとることも可能です。
まとめ
従来の墓地への納骨にかわり、近年注目を集めている海洋散骨について解説しました。
海洋散骨には多くのメリットがあり、費用面でも墓の購入に比べて負担が軽い供養の方法です。
散骨に関しては現在のところ確固とした法規制がなく、節度をもってマナーを守って行うことには問題がないとされています。
海洋散骨で最低限覚えておきたいことは、「岸から沖合に2km以上離れた船上で、パウダー状に粉骨した遺骨を海にまく」ということです。
海洋散骨の人気上昇にともない、取り扱い業者も増加中です。
興味のある人は、資料請求をしたり体験クルーズに参加したりするのもよいでしょう。