葬儀形式

月面葬とは?宇宙葬についても解説

月面葬という言葉を聞いたことはありますか?月面葬は宇宙葬の一部です。

 

近年、宇宙開発の進展や新しい供養の考え方が広がったことから、宇宙葬という新たな供養方法が注目されています。
しかしまだ日本では行われている件数はわずかです。
宇宙葬方法や費用などについてはまだ十分に知られていないため、選択する際に不安を感じる人も多いでしょう。

そこで、この記事では宇宙葬の歴史や種類、実際の方法や費用相場について詳しく解説しています。
宇宙葬に興味がある人や、将来的に検討を考えている人にとって参考になれば幸いです。

また実際に宇宙葬を行った有名人や、宇宙葬を取り扱っている業者についてもご紹介しています。

 

宇宙葬とは

夜空の写真

宇宙葬とは、遺灰を専用のカプセルに入れたうえでロケットに載せて、宇宙空間へ散骨する供養方法です。

まだ一般的な散骨方法とは言えませんが、ロマンに溢れる方法が注目を集め、近年日本でも扱う業者が増えてきています。

成層圏まで飛ばす場合、外宇宙まで飛ばす場合、月面まで飛ばす場合など様々な方法があります。

宇宙葬の歴史

世界で宇宙葬が行われたのは1997年と言われています。

アメリカのCelestis社がスペイン領カナリア諸島で、24人分の遺灰を乗せた宇宙葬を行いました。

その中には、SF特撮作品「スタートレック」を生み出した映画プロデューサーのジーン・ロッデンベリー氏の遺灰もあったとされています。

2000年代以降は、アメリカそして日本国内にも徐々に宇宙葬を扱う業者が増えてきました。

イーロンマスクが率いたスペースX、日本では茨城県つくば市の「SPACENTK」などがその一部です。

宇宙葬の歴史はまだ浅いですが、今後技術の進歩により新たな企業が参入したり、様々な方法が登場することが予想されます。

宇宙葬の方法

まず遺族は宇宙葬を行う専門業者に依頼します。
その後、火葬後の遺灰は特別なカプセルに入れられ、ロケットまたは人工衛星に搭載されます。
ロケットの場合は打ち上げて宇宙空間に達した後、遺灰が散布されますが、人工衛星の場合にはカプセルごと地球周回軌道に残る形式が一般的です。
人工衛星として打ち上げられた場合には、地球の周りを周回して再度地球に落ち、それを改めて回収するというプランもあるようです。

 

月面葬とは

月面葬とは宇宙葬の中でも、遺灰を月面まで送り月面に遺灰を安置する方法です。
月面供養とも呼ばれます。

2017年からアメリカの企業によって日本でも行われるようになりました。
費用は120万円と割高ですが、残された方が月を見上げることで故人を偲ぶことができるというロマンにあふれた方法です。

『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』を代表作とする漫画家松本零士さんも月面供養を望んでいました。

月面葬の方法

まず遺族は月面葬を扱っている専門業者に依頼します。

業者からカプセルなどが入ったキットが届くので、そのカプセルに火葬後の遺灰の一部、約1gを入れて送り返します。

そのカプセルは着陸船の内部に載せられて、月面に到着する流れとなります。

 

その他の宇宙葬の種類

宇宙葬の中には月面葬以外の方法もあります。

バルーン葬

バルーン葬とは、遺灰をバルーンに載せて空へ放つ供養方法です。

バルーンが高度約50kmの成層圏に達すると、バルーンが気圧の変化によって膨張、自然と割れ、宇宙に散骨されます。

散骨された遺灰は地球の周りを漂うことになります。

流れ星供養

流れ星供養とは、遺灰をカプセルに入れた状態で人工衛星に載せて打ち上げる供養方法です。

大気圏に到達した人工衛星は、数カ月から数年間地球を周回した後、流れ星として燃え尽きます。

地球を周回している間は、専用のアプリで現在どのあたりに遺灰があるかを確認できるサービスもあります。

宇宙探検プラン

宇宙探索プランは専用のカプセルを深宇宙探査機に載せて、打ち上げる供養方法です。

宇宙探査機は他の方法と異なり、宇宙をずっと漂い続けます。

 

宇宙葬のメリット

月面葬を含めた、宇宙葬には次のようなメリットがあります。

宇宙に行く夢を叶えることができる

生前、宇宙に憧れを持っていたとしても、実際に宇宙に行くのは現状の技術では簡単なことではありません。

宇宙葬を行えば、死後に憧れの宇宙に旅立つ夢を叶えることができます。

遠方の親族も故人を偲ぶことができる

お墓などを建てる場合、その場所に行ってお参りをすることで故人を偲ぶことができますが、場所が遠い場合大変です。

しかし宇宙葬であれば、どこからでも空を見上げれば、宇宙に散骨された故人を偲ぶことができます。

 

宇宙葬のデメリット・注意点

宇宙葬には次のようなデメリットや注意点があります。思わぬトラブルになる可能性もあるので、しっかりと把握しておきましょう。

高額な費用

宇宙葬は比較的費用が高額です。

ロケットの打ち上げ費用に加えて、ロケットの出発に立ち会うのであればアメリカまでの交通費や現地での旅費なども必要となります。

宇宙葬の中でもバルーン葬であれば比較的費用も安く、日本でも打ち上げができるので費用を抑えられる傾向にあります。

時間がかかる可能性が高い

葬儀が終わってから宇宙葬を行えるまでの時間が長くなってしまう心配があります。

ロケットの打ち上げは大規模に行われるので、数組が集まってから行われるのが一般的です。

そのため打ち上げの日程は不定期で数カ月~数年に1回という不定期になります。

そして宇宙葬を扱っている業者自体も少ないため、全体的に見ても宇宙葬が行われる回数は少ないです。

遺骨をしばらく自宅などに置いておけるかどうかを確認しておきましょう。

親族からの理解が必要

宇宙葬は比較的新しい考え方の供養方法です。

遺骨は先祖代々のお墓に納めるべき、という考えをお持ちの親族がいらっしゃる場合、宇宙葬に抵抗を持つ場合もあります。

また宗教・宗派によって受け入れがたいという場合もありますので、宇宙葬を行いたい場合は、親族とよく話し合いをしましょう。

残った遺灰の供養方法を考える必要がある

宇宙葬で打ち上げられる遺骨は約1g程度と、とても限定的です。

残った遺灰は、お墓や納骨堂に納める、樹木葬や海洋散骨をする、親族間で分骨をする、手元に置いておくなど、供養方法を考える必要があります。

故人のお骨が揃った状態で供養したいという場合には、宇宙葬は向きません。

 

宇宙葬の費用相場

宇宙葬の費用は、種類や会社によって大きく異なります。

バルーン葬であれば比較的安く、最安だと8万円~40万円ほどになります。

その他のプランだと120万円から、高額なところだと270万円近くなど非常に高額です。

 

宇宙葬はこんな人におすすめ

以上のような特徴やメリット、デメリット、注意点などから宇宙葬は次のような方にオススメの供養方法と言えます。

故人が宇宙に対して憧れを持っていた

宇宙に行くことへの憧れを叶えられるのが宇宙葬です。

故人が生前、宇宙が好きだった、宇宙に行きたいという希望を持っていた場合には適切な供養方法と言えるでしょう。

故人が宇宙に関係する職業についていた

故人が宇宙開発に関わっていたりと、宇宙に関係する職業についていた場合、宇宙に対する愛着を持っている可能性があります。

亡くなった後も、その宇宙に旅立つことができる供養方法です。

経済的に余裕がある

宇宙葬は比較的高額です。

そのため比較的経済的に余裕がある方に向いている供養方法と言えます。

残りの遺骨の置き場所や納める場所を確保できる

宇宙葬では遺骨の一部しか打ち上げることができます。そのため残りの遺骨を置いて置ける場所があったり、納めるお墓や納骨堂などを確保できている方が安心です。

また宇宙葬を行えるまでには時間がかかる可能性が高いため、それまでの間に遺骨を置いておけるかどうかの確認も必要です。

 

宇宙葬を行った有名人

これまで宇宙葬を行った有名人には次のような方々がいます。

ジーン・ロッデンベリー

アメリカの脚本家・プロデューサーのジーン・ロッデンベリーさんは宇宙葬で供養されたことで有名です。
代表作にSFテレビドラマ『スタートレック』があります。
1991年に亡くなり、1997年に『スタートレック』の仲間と一緒に宇宙を探索したいという願いを叶えるために宇宙葬を行ったとされています。

ジェームズ・ドゥーアン

SFテレビドラマ『スタートレック』の出演者であるジェームズ・ドゥーアンさんも宇宙葬で供養されました。

2005年になくなり、2007年に宇宙に旅立ちました。

ティモシー・リアリー

ティモシー・リアリーさんはアメリカの心理学者で、LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)や幻覚剤を研究し、精神病の治療としてその使用を推奨していました。

1996年に亡くなり、1997年にジーン・ロッデンベリーさんと同じロケットで宇宙旅立ったと言われています。

クライド・トンボー

クライド・トンボーさんは、アメリカの天文学者で冥王星を発見した人です。
1997年に亡くなり、2006年に無人探査機「ニュー・ホライズンズ」に遺灰が搭載され、冥王星に接近してデータを地球に送り続けたと言われています。

富田勝

元プロ野球選手の富田勝さんも、人工衛星に搭載されるプランを利用し、宇宙葬によって供養されました。

2015年に亡くなり、2019年に人工衛星に搭載されて旅立ったとされています。

島田陽子

女優の島田陽子さんは宇宙葬を生前予約し、2022年に亡くなりました。

島田陽子さんは2015年に宇宙葬を予約してたそうです。

実際に宇宙葬が行われるかどうかは、遺族の判断や宇宙葬の実施のスケジュールによって未定となっています。

 

宇宙葬を扱っている業者

宇宙葬を扱っている業者には次のような企業があります。

Elysium Space社

Elysium Space社はサンフランシスコにあるアメリカの企業です。
月面供養と流れ星供養のサービスを行っています。

日本語のサイトもあり、日本人向けにもサービスを提供しています。

SPACE NTK

SPACE NTKは茨城県つくば市にある企業です。

2022年4月に初の打ち上げに成功しています。

公式ホームページによると流れ星供養などの宇宙葬の他に、宇宙での生前葬などのプランも提供しているようです。

銀河ステージ

銀河ステージは大阪府大阪市に本社を置く企業です。

宇宙葬以外にも、海洋散骨や手元供養など、様々な供養方法を提供しています。

女優の島田陽子さんも、銀河ステージで宇宙葬を申し込んでいます。

バルーン工房

バルーン工房は栃木県宇都宮市に本社を置く企業です。

宇宙葬の中でもバルーン葬のサービスを提供しています。

ストーンアート工業

ストーンアート工業は高知県高知市にある企業です。

墓石を販売している企業ですが、バルーン葬のサービスも提供しています。

 

まとめ

月面葬を含む宇宙葬について、詳しく解説してきました。

まとめると次の通りです。

  • 宇宙葬は、故人の遺灰を宇宙空間に送る新しい葬送方法
  • 月面葬は宇宙葬の中でも、月面に遺骨を安置する方法
  • 宇宙葬には月面葬の他にバルーン葬、流れ星供養、宇宙探検プランなどがある
  • 宇宙への憧れが実現できる、遠方の親族も故人を偲ぶことができるというメリットがある
  • 宇宙葬には高額な費用かかる、親族の理解が必要などのデメリット・注意点もある
  • 費用相場はプランにより8万円から270万円と幅がある。
  • 映画プロデューサーや俳優、天文学者やプロスポーツ選手など宇宙葬を選んだ著名人もいる
  • Elysium Space社、SPACE NTK、銀河ステージ、バルーン工房、ストーンアート工業などが宇宙葬を扱っている 

宇宙葬は高額なこともあり、まだ日本では行われる件数は少ないです。

しかし今後の技術の進歩などにより、もっと気軽に利用できる供養方法となるかもしれません。

大切な方を供養する方法の1つとして検討してみてください。