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葬儀費用が払えない場合はどうすればいい?

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家族の一員が亡くなると、遺族はすみやかに葬儀の準備にとりかかります。葬儀、火葬が済んでほっとする間もなく、葬儀社への支払いや宗教者への御礼を用意しなくてはいけません。

故人に財産があり、遺族にも資金があれば問題がありません。しかし、実際には数十万から数百万円という葬儀代が、家計を圧迫します。

長いローンを組んだり、兄弟姉妹や親戚に資金援助を頼んだり、葬儀の支払いのために駆け回ることもあります。

この記事では、葬儀にかかる費用の相場を示し、すぐには費用が払えないときの対処法をいくつかご紹介します。

葬儀にかかる費用の内訳

一般的に葬儀にかかる主な費用は、以下のとおりです。それぞれ支払い先が違いますので、混乱しないようにしましょう。

  • 葬儀一式の費用:葬儀社へ支払い
  • 返礼品、会葬礼状の費用:葬儀社へ支払い
  • 接待飲食費(通夜ぶるまい、精進落とし):仕出し店などへ支払い
  • 宗教者への御礼:宗旨宗派により僧侶、神官、神父、牧師へ支払い
  • 火葬料金:公営火葬場は市区町村へ支払い、民営火葬場は火葬場へ支払い

葬儀形式別の費用の目安 

現在、葬儀は大きく4つの形式にわけられています。それぞれの葬儀費用の目安は以下のとおりです。この費用は葬儀代金のみで、宗教者への御礼は含んでいません。

会葬者が多いほど葬儀の規模が大きくなり、費用は高額になります。通常は通夜、葬儀・告別式と二日にかけて行う儀式を、通夜を省略すればそのぶんの費用は節約になります。さらに儀式を省いて火葬のみを行えば、最低額で弔うことができます。

葬儀会場費や祭壇、火葬に必要な物品など、葬儀に必ずかかる「固定費」と、会葬者数や追加品により増減する「変動費」を合わせたものが、葬儀代金となります。

  • 直葬(火葬のみ):10~20万円
  • 一日葬(葬儀・告別式のみ):30~50万円
  • 家族葬(通夜、葬儀・告別式):40~60万円
  • 一般葬(通夜、葬儀・告別式):75~200万円

儀式を省き、宗教者を呼ばない無宗教葬儀をあげても「火葬」だけは省略することができません。よって火葬にかかる費用が、故人を弔う最低限の費用になります。直葬(火葬式)には、以下の費用が発生します。

火葬に必要なもの

30,000円から。火葬炉に入れるご遺体を納めるために必要です。火葬は必ず棺に入れるという法律はありませんが、ほとんどの火葬場で棺に入れた状態でないと受け付けていません。

ドライアイス

日額5,000~10,000円。法律により死後24時間は火葬できません。ご遺体の保全のため、最低でも1日分のドライアイスが必要です。季節や故人の体の大きさにより量が変動し、火葬が延びると追加料金が発生します。

都市部では常に火葬場が混み合い、特に10月〜2月は死亡者が多く火葬場の繁忙期です。この時期だと、火葬までの待機日数を考えなくてはいけません。

安置施設利用料

日額5,000円から。ご遺体を自宅に安置すれば、費用はかかりません。自宅に安置ができない場合、葬儀社の安置施設などを利用します。火葬が延びると、追加料金が発生します。

車両

ご遺体搬送の車両は、病院や施設などの死亡場所から安置場所までの「寝台車」、安置場所から火葬場に搬送する「霊柩車」が必要です。距離数、時間帯により加算があるのが一般的です。

寝台車は10㎞以上〇㎞ごとに〇〇円加算、深夜早朝加算などの料金設定があり、葬儀社により異なります。目安は寝台車が10㎞まで12,000~20,000円、霊柩車は10,000~50,000円です。

火葬料

0~60,000円。公営火葬場は利用料が安く、民営火葬場は高くなります。地方自治体が運営する公営火葬場では、住民票がある人は無料のところもあります。

骨壺

火葬後の収骨のために必要です。2,000~30,000円。

人件費

葬儀社スタッフ1名20,000円×2名が目安です。車両の運転、ご遺体搬送、納棺、役所の手続き代行、火葬場申込み、収骨の立ち会いなどをしてもらいます。

遺族が行えば費用が節約できますが、専門知識のない遺族だけで行うことは、あまり勧められません。

公営火葬場と民営火葬場の料金差

火葬料金は公営火葬場なら、故人の住民票があれば負担が0円からごく低額で済みます。たとえば大阪府内に故人の住民票があると、公営の火葬場の利用で、費用は1~2万円です。

民営の火葬場は住民票の有無にかかわらず受け入れますが、利用料は高額になります。東京都の火葬料金が高いといわれるのは、ほとんどが民営の火葬場だからです。東京23区内の民営火葬場の料金は75,000~145,000円が目安で、公営火葬場なら2万円です。

葬儀費用が払えないときの対処法

通常、葬儀代金は葬儀終了後1週間以内に現金、銀行振り込み、クレジットカードなどで支払います。宗教者への御礼は、葬儀当日か翌日に現金で渡します。

手元にまとまった金額がなく、すぐに葬儀費用が払えないときには以下の方法を検討しましょう。

預貯金仮払い制度の利用

死亡を金融機関に届けると、故人の口座は遺産分割が成立するまで凍結され、入出金、振替、振込ができなくなります。しかし相続法の改正により口座凍結後でも葬儀費用を引き出せる制度が、2019年7月1日から開始されました。1金融機関につき150万円まで引き出せます。

故人の死亡保険金の受け取り

故人が加入している生命保険の死亡時受取人になっている人は、すみやかに保険会社に請求をしましょう。近年では、多くの保険会社が請求から支払いまでの日数を短縮しています。

葬儀ローン

故人に財産がなく、遺族も葬儀費用をすぐには捻出できない、あるいは、不慮の事故などによる急逝で葬儀費用の手持ちがない場合は、葬儀ローンを検討します。

葬儀ローンは葬儀に特化したローンで、葬儀費用を分割払いにするものです。申込先は葬儀社と提携する信販会社、銀行、労金、信金です。ただしローンの利用には年齢、職業、年収などの審査に通る必要があります。

以下は葬儀社と提携する信販会社の例です。

  • 与信審査:1時間~1日
  • 金利:8%~18%
  • 支払い回数:1~84回(最長7年)
  • 完済時の年齢:70歳
  • 保証人:原則不要
  • 限度額:300~500万円

必要最低限の葬儀プランの選択

故人も遺族も葬儀に充てる費用が出せそうにないときは、会葬者を呼ばず、儀式を行わない火葬のみの葬儀プランを検討します。

市民葬・区民葬の利用

市民葬や区民葬は福祉サービスの一環として、自治体が葬儀社や斎場と提携して安価な葬儀サービスを提供するものです。市民葬・区民葬はプランの選択肢は多くありませんが、シンプルな分、低価格なのが特徴です。自治体によっては取り扱いのないところもあります。以下は大阪市と東京23区の例です。

■大阪市規格葬儀:大阪市が市内72の葬儀業者を取扱店に指定し、低価格の葬儀を提供しています。大阪市民が対象です。

出典:大阪市企画葬儀制度のご案内

■区民葬儀券:東京23区では死亡届提出時に、申請により葬儀で利用できる「区民葬儀券」を受け取ることができます。故人または喪主が23区内の住民であることが条件です。

出典:区民葬儀のご案内

献体

故人が生前、献体の登録をしていた場合は、ご遺体搬送費と火葬費用は大学が負担します。

遺族が同意すれば、死後48時間以内に大学へご遺体を引き渡します。ご遺骨が戻るまでの期間は1~3年ほどです。通夜、葬儀・告別式を行わない予定なら火葬の費用も必要がないため、遺族の金銭負担はなくなります。

献体には生前、本人と親族が「献体篤志家団体」または、大学の医学部に赴き、説明を受けて納得した上で登録済みの必要があります。

葬祭扶助制度、生活保護葬の申請

こちらは条件が厳しく、簡単には申請が通りません。一定の条件を満たせば生活保護葬(福祉葬)が適用されます。条件は以下のとおりです。

  • 故人が生活保護を受給していた
  • 喪主が生活保護を受給している
  • 親族に支払い能力がない
  • 故人に親族がいない

生活保護法の8つの扶助と1つの控除のなかに、葬祭扶助があります。これは死亡した人の葬儀に必要な費用を市区町村が支給するものです。

葬祭扶助は故人が生活保護受給者、同居家族も生活保護受給者で、葬儀費用が負担できない場合にのみ受けられます。故人本人だけが生活保護受給者で、遺族のなかに生活保護を受けず生計を立てられている人がいると、認められません。

つまり故人が生活保護受給者であっても、葬儀を執行する人(喪主)に支払い能力があると申請が 通らなくなります。

日本人の死亡原因はほとんどが病死(政府統計より)

令和2年(2020)人口動態統計(確定数)によると、死因は以下の割合になっています。

  • 病死・自然死:96.9%
  • 不慮の外因死:1.7%(交通・転倒・溺水・火災・窒息・中毒・その他)
  • その他及び不詳の外因死:自殺1.4%、他殺0.1%

上記から、日本人の死因のほとんどが病死や老衰を含む自然死であり、不慮の死はごく少ないことがわかります。

出典:厚生労働省 令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況

葬儀の準備をする時間は作れることが多い

つまり家族に闘病中の人や高齢の人がいたら、担当医に予後を聞いたり、施設入所中であればこまめに様子を見に行ったりすれば、葬儀を迎える日がおおよそ予測できます。

近い将来に葬儀があることを想定し、家族内で葬儀費用や葬儀形式について話し合いを行うと、葬儀で慌てることが少なくなります。まずは、本人名義の預貯金残高や死亡保険金の有無を把握し、葬儀費用にまわせる金額を確認しましょう。

死亡がわかると本人名義の口座が凍結されるため、あらかじめ本人口座から出金しておくことを考える人もいますが、多額の現金を自宅に置くのは防犯上好ましくありません。現在は預貯金仮払い制度があるため、そちらを利用ましょう。

葬儀の準備は複数人で行う

本人に預貯金も保険金もない場合、葬儀費用は喪主となる人や同居家族が負担することがほとんどです。しかし、誰が葬儀費用を負担するかの法の定めはなく、他の遺族たちと出し合う方法もあります。

葬儀社選びなどの下調べも、ひとりで行うには負担が大きいため、喪主となる人は他の兄弟姉妹や親族に協力をしてもらうことです。

近親者内で、葬儀費用にまつわる金銭トラブルが起こりがちなのは遺族間の「不公平感」が発端となることが多く、ひとりだけに負担がかからない工夫が必要です。たとえば、親の葬儀費用を兄弟姉妹が均等に負担できるならトラブルは起きにくくなります。

葬儀まで準備しておきたいこと

葬儀社の選定

かつては葬儀の準備などは縁起でもないと、否定的な見かたをされていました。現在では事前に情報収集をして、準備をするのが一般的です。

身近な人の評判やインターネットの口コミなどを参考に、葬儀社を絞り込んでおきましょう。本人が葬儀の生前契約をしていないかも確認しておきます。以前に利用した葬儀社がよければ候補に入れましょう。

3社ほどに絞り込み、提供しているサービスを調べます。生前見積もりサービスを利用し、同じ条件で数社から見積もりを出してもらうことをおすすめします。

近い距離に複数の葬儀社がある地域では、競合により低価格でサービスを提供していることもありますのでチェックしてみましょう。

葬儀費用の用意

本人の預貯金残高や保険金を確認し、予算を立てておきます。本人に財産がなく、喪主となる人も経済的に厳しいときは、兄弟姉妹、他の親族にも金銭負担の要請をしましょう。

葬儀形式、呼ぶ範囲の決定

葬儀費用は人を多く呼ぶことで、高額になります。会葬者が多ければ大型の斎場が必要で、返礼品や通夜ぶるまい、精進落としの総額も高くなります。葬儀に呼ぶ範囲を明確にすることで、費用を算出することができます。

近年多くなった家族葬は、遺族側から参列して欲しい人に声をかけるかたちの葬儀です。会葬者数を限定するため、葬儀会場の規模、返礼品や料理の数、移動のための車両台数などが明確です。事前に予算が立てやすい点がメリットで、家族葬が選ばれる理由のひとつといわれています。

宗教葬か無宗教葬かを決める

宗教葬にすれば、宗教者への御礼が出費に加わります。仏式葬儀では、読経料に戒名料を加えた「お布施」を寺院に渡すのが慣例です。

宗教者への御礼は高額なため、無宗教葬にできれば、かなり費用を抑えられます。ただし菩提寺がある家は、納骨を断られるなどのトラブルに発展することがあるため、事前にご住職との話し合いが必須です。

葬儀後に申請により得られる給付金(葬祭費と埋葬料)

故人が加入していた公的医療保険により、申請すれば葬儀を挙げた人(喪主)に葬祭費または埋葬料が給付されます。葬祭費と埋葬料は加入していた医療保険による名称の違いで、葬儀代金の補助という趣旨は同じです。

葬祭費

故人が国民健康保険、国民健康保険組合、後期高齢者医療制度に加入していた場合は3~7万円(自治体により異なる)が葬儀費用を支払った人に給付されます。ただし直葬(火葬のみ)を行った場合は対象外としている自治体があるため、確認が必要です。

埋葬料

故人が組合管掌健康保険、政府管掌健康保険(協会けんぽ)、船員保険、共済組合保険に加入の場合、一律5万円が葬儀費用を支払った人に給付されます。故人が扶養家族の場合は家族埋葬料として5万円が給付されます。埋葬料は葬儀を行うことは要件に入っていませんので、直葬でも対象になります。

給付金を受け取る際の注意点

葬祭費も埋葬料も、自動的に受け取れるものではありません。葬儀費用を支払った人の申請が必要です。申請期限は、葬祭費は葬儀を行った日の翌日から2年以内、埋葬料は死亡した日の翌日から2年以内です。申請から約1ヶ月後、申請者の口座に振り込まれます。

まとめ

葬儀費用を無料にすることは、生活保護受給者以外は事実上不可能です。家族に高齢の人、闘病中で経過が思わしくない人がいたら、早い時期から費用を含めた葬儀の準備を始めたいものです。近いうちに葬儀になりそうな家庭では、葬儀の準備をしておくことで、葬儀費用が払えない問題を回避できます。

現在、火葬のみを行う直葬でも、約20万円程度が必要です。市民葬・区民葬を取り扱う自治体に住んでいるなら利用を検討してもよいでしょう。

本人の預貯金、生命保険の内容把握をし、費用捻出が難しいようなら、喪主になる人から兄弟姉妹や他の親族に費用負担の依頼をしておき、場合により葬儀ローンも検討しましょう。葬儀ローンは、数社の金利や手数料も調べておくことをおすすめします。

葬儀費用は金額が大きく、原則として一括払いになるため支払いが簡単ではありませんが、準備や下調べにより負担を軽減することが可能になります。