葬儀にかかわる連絡は、逝去の通知から法要の案内まで多様です。送るタイミングも急を要するもの、返信が必要なため余裕をもって発送するもの、慣習によりおおよその期限がきまっているものなど、内容によって違います。
この記事では、葬儀や法要の案内状を送る範囲やタイミング、作成時の注意事項を、文例を添えて解説します。弔事の案内状には特有のマナーがありますので、知っておくと安心です。
葬儀にかかわる案内の種類と連絡手段のいろいろ
はじめに、弔事の連絡や案内にはどのようなタイプがあり、どの連絡手段が適しているかを確認してゆきましょう。
知らせる
危篤連絡:電話、FAX、メール
医師から危篤を告げられたら、家族や近い親族、会わせたい人に連絡をします。親族は3親等まで知らせる人が多いようです。危篤連絡は、早朝や深夜でもかまわいません。電話が最適な連絡手段ですが、通じないときは留守番電話にメッセージを入れる、FAXする、メールやLINEで連絡するなどの方法をとります。
死亡連絡:電話、FAX、メール
医師により死亡確認がなされたら、家族や親族、故人と親交の深い人、仕事関係の人には速やかに、電話、FAX、メールで連絡をします。
故人との関係により、早急に知らせる人、通夜、葬儀日程が決まってから連絡する人とにわけられます。闘病中などで死期が近いと考えられる場合、連絡先をリスト化しておくとスムーズです。家族にとっては抵抗のある作業ですが、大切なことです。
故人がエンディングノートなどに、最期に呼んでほしい人、死亡連絡をしてほしい人を記載していることがあります。もしあれば、故人の遺志を尊重しましょう。
死亡通知状:はがき、封書
通夜、葬儀・告別式までに時間がある場合は、はがきか封書で死亡通知状を発送します。印刷は葬儀社に依頼するのが、早くて正確です。
死亡広告:新聞
故人の社会的地位が高い、在職中で仕事の関係者が多い、交友関係が広いなどの理由で、多くの人に通夜、葬儀・告別式に参列を希望する個人葬や社葬では、新聞に死亡広告を出すことがあります。
死亡広告は大きさにより掲載料が異なり、地方紙でも約4万~約50万円と幅があります。同じサイズでも、全国紙のほうが掲載料は高く、朝日新聞や読売新聞は、最小サイズで約35万円です。
掲載内容は故人の氏名、死亡年月日、享年、通夜、葬儀・告別式日時と会場名(所在地、電話番号)、喪主や施主の氏名です。死亡広告には個人情報を広範囲に知られるリスクがありますので、故人や喪主の自宅住所や電話番号は掲載しないのが一般的です。
謝意をつたえる
会葬礼状
香典の有無にかかわらず、通夜、葬儀・告別式に参列した人に当日渡す返礼品に添えるカードが会葬礼状です。返礼品とともに、はがき大のカードを添えるのが一般的です。通常は、葬儀社に印刷を依頼します。
料金は葬儀プランに含まれている場合と、オプションの場合とがあります。
香典の礼状
多額な香典や供花、花輪などをいただいた人に、香典返しとして3分の1から半額ほどの品を、忌明けに送ります。
デパートなどから直接、香典返しを発送する場合、品物が届く前にはがきか封書でお礼状を出しておきます。その際「別便にて心ばかりのお品を送らせていただきました。お納めください」と、ひとこと添えましょう。宅配便で香典返しを送る場合は、封書でのお礼状を同梱することが通例です。
事後報告をする
葬儀を済ませた報告
近年は家族やごく親しい人のみで小規模に執り行う「家族葬」や、通夜、葬儀・告別式を行わず火葬のみで送る「直葬」が増えています。
家族葬や直葬が終ったら故人の関係者、友人・知人、葬儀に参列しなかった人に、逝去の連絡と葬儀を終えた報告を、はがきか封書で送ります。
人を招く
葬儀の案内状
葬儀まである程度時間がある場合は、はがきか封書で葬儀の案内状を出します。日数があるとはいえ、早急に発送するようにします。
お別れの会や偲ぶ会の案内状
家族葬で見送ったあとに、故人の交友関係が広い、在職中に亡くなり仕事関係の付き合いが広かったなどの理由で、日を改めてホテルなどで「お別れの会」や「偲ぶ会」を開くことがあります。
喪主が主催者になることが多いのですが、「〇〇先生を偲ぶ会」のように、教え子たちが発起人となり恩師を偲ぶ、というタイプの会もあります。
日程が決まったら、遅くとも1か月前までには案内状を出し、出欠の返事をもらいましょう。案内状は封書に返信用はがきを同封するか、往復はがきで送ります。
法要の案内状
仏式の法要は、遺族が仏に故人の冥福を祈るために行われます。故人が成仏すると考えられる四十九日(七七日)法要は、忌明けとよばれ大切な節目となります。
四十九日法要を行う際には、葬儀後なるべく早く案内状を発送します。四十九日法要のあとの一周忌法要、三回忌法要までは盛大に営み、それ以降は遺族、近い親族の内輪で行うのが一般的です。
この数年はコロナ禍という特殊な状況下で、法要の中止や縮小化、代替案としてのオンライン法要など、伝統よりも感染防止を優先する傾向がみられました。
挨拶をする
年賀欠礼状
近親者が亡くなって1年間は喪中となり、翌年の年賀状は出さないのが慣例です。そのため年内の11月から12月初旬までに、「喪中はがき」で年賀欠礼の挨拶をします。
亡くなった人が何親等までを喪中とするかは、2親等までが多いようです。しかし厳格な決まりはありませんので、3親等以降でも心情的に喪に服したい人がいる場合は、喪中とします。
1親等は父母、子、子の配偶者、義父母、2親等は祖父母、義祖父母、兄弟姉妹、孫です。
年末に不幸があり喪中はがきが間に合わないときには、年が明けてから「寒中見舞い」として、年末に不幸があったため年賀を欠礼した旨のはがきを送るのが一般的です。
案内状作成の依頼先と費用
案内状を業者に依頼する場合、テンプレート(文例)から選ぶ人がほとんどです。オリジナルの文面で送りたい場合は、なるべく早く原稿を作り印刷を依頼します。人手があり費用を抑えたいときは、案内状を自作してもよいでしょう。
案内状が納品されてから誤字脱字に気づくことが、まれにあります。必ず校正刷りを確認後に、本刷りしましょう。複数人で確認するのが確実です。
郵便料金と印刷代を合わせたものが、案内状の総額になります。郵便料金は、はがきが63円、往復はがきが126円、封書は定形郵便物で25グラム以内が84円で50グラムまでが94円です。
定形郵便物のサイズは縦14~23.5㎝、横9~12㎝、厚み1㎝、重さ50g以内です。ほとんどの案内状は、定形郵便物にあたります。
印刷代は、はがきで1枚あたり約200円から、往復はがきだと約400円からになります。以下に料金例をあげますので、参考にしてください。数量が多くなるほど1枚当たりの単価は安くなります。
なお、宛名印刷やスピード印刷、地図などの画像データ挿入などのオプションをつけると、追加料金が発生することがほとんどです。
往復はがきの料金例(税込)
- 10枚:印刷代3,990円+はがき代1,260円=5,250円(1枚525円)
- 20枚:印刷代5,490円+はがき代2,520円=8,010円(1枚401円)
- 100枚:印刷代10,090円+はがき代12,600円=22,690円(1枚227円)
参照サイト 法事案内状ドットコム
シングルカード、返信はがき、封筒セットの料金例(封筒代込・税込)
- 10セット:印刷代6,400円+返信はがき代630円=7,030円(1セット703円)
- 20セット:印刷代6,570円+返信はがき代1,260円=7,830円(1セット392円)
- 100セット:印刷代10,644円+返信はがき6,300円=16,944円(1セット169円)
参照サイト 郵便局の総合印刷サービス
納期は通常、1日から2日です。主な依頼先は、以下になります。インターネット注文では、自宅までの送料がかかりますが、葬儀や法要に特化した業者なら文例数も多く、礼状や案内状の作法やタブーについて解説しているサイトもあり、参考になります。
- 葬儀社に注文する
- 印刷会社に注文する
- インターネットで注文する
- 自分で作る
案内状作成のマナーと注意点
弔事の案内状を作成する際には、独特のルールがあります。細かいことですが、失礼にならないよう気をつけるに越したことはありません。以下にマナーや注意すべき点をあげますので、参考にしてください。
縦書きか横書きか
案内状で使われるカードやはがきは、縦書きが文字のおさまりもよく美しく見えます。特に改まった案内や、目上の人には縦書きで送るのが常識とされています。縦書きの文章では、数字も漢数字を使うのが正式です。
お別れの会や偲ぶ会で、参列者が比較的若い層では横書きが使われることもありますが、基本的には封筒の宛名や差出人も含めて縦書きのほうがフォーマルな印象です。
敬称
個人は「様」、団体は「御中」で統一します。「殿」は現在ほとんど使われません。「先生」と呼ばれる職業の人宛てでも「様」で失礼にはあたりません。
忌み言葉
葬儀社や印刷会社が用意しているテンプレート(文例集)を使用するのでしたら安心ですが、自作すると知らず知らず忌み言葉を使っていることがあるため、注意が必要です。
不祝儀では、不幸が重ならないようにという意味で、「相次いで」「重ね重ね」「繰り返し」「重々」「重ねて」などが忌み言葉とされ、使われません。
時候の挨拶
緊急を要する葬儀の案内には不要ですが、法要の案内状では時候の挨拶が使われています。季節により決まり言葉がありますので、適宜選んで使ってみましょう。
出典:時候の挨拶
頭語と結語
頭語とは手紙の書き出しの言葉、結語は終りの言葉です。「拝啓」に対する「敬具」や「前略」に対する「草々」はよく目にします。女性に限り「かしこ」の結語を使うこともあります。
頭語と結語は、組み合わせが決まっています。法要などの改まった案内状では「謹啓」の頭語に対し「謹白」「敬具」の結語が多く使われます。
句読点
個人的な手紙やはがきでは句読点が使われますが、案内状のような格式のある文書では使われません。
句読点が使われない理由は、諸説あります。かつて日本語は毛筆で書いていた名残であるという説や、じゅうぶんな読解力のある人に向かって、読むことの補助となる句読点をつけるのは失礼である、という説があります。
しかし、実際問題として句読点のない文章は非常に読みにくいため、読点の代わりにスペース(□)句点の代わりに改行を入れて読みやすくしています。
字下げ
一般的な文章では、段落が変わるときに字下げ(一字分空白を空ける)をするのが普通です。しかし、案内状では字下げをしないのが慣例となっています。
封筒
案内状に使用する封筒は、白無地が適しています。長封筒と角封筒のどちらを使ってもよいのですが、返信用はがきを同封するのなら角封筒を使うことになります。
二重封筒は目上の人宛ての改まった手紙には適していますが、弔事では、不幸が重なることを意味するとして使われません。一重封筒を使用します。
切手
現在、はがき用の63円切手のみ、弔事用切手が販売されています。弔事用切手を使いたいのでしたら私製はがきに貼る場合に限られます。封書用の弔事用切手は現在は販売されていませんので、普通切手を貼ります。
料金別納郵便という、切手を貼らず郵便局で代金の全額を払い、料金別納郵便である表示をする方法もあります。10通以上で可能です。切手を貼る手間が省けますので、発送数が多い場合は利用してもよいでしょう。ただし、切手を貼るほうがていねいな印象です。
画像引用元 日本郵便 料金別納
案内状の文例
ここからは案内状に記載する項目を説明します。文例を添えますので参考にしてください。案内状で主に使われるのは以下の2タイプです。
- はがきか往復はがき
- はがき大のシングルカードか二つ折りのダブルカード(シングルカードの倍の大きさ)に返信用はがきを入れた封書
ダブルカードには、会場の地図を印刷することも可能です。また、別紙で地図を同封することもあります。会場がわかりにくいと思われるときには、案内状の会場住所に「〇〇線〇〇駅中央口から徒歩〇分」など、最寄り駅を書き添えると親切です。
葬儀の案内状…日程が決まりしだい速やかに発送
【通知する項目】
- 故人の氏名
- 死亡月日、時間
- 死亡理由(書かなくてもよい)
- 享年
- 通夜、葬儀・告別式の日時、会場、所在地、電話番号
- 葬儀の形式(仏式、神式、キリスト教式、無宗教式)
- 喪主の氏名(故人との関係)
- 連絡者の住所、氏名、電話番号
- 香典、供花、供物を辞退する場合は明記する
【はがきの文例】
はがきで出す葬儀案内状の文例です。
お別れの会、偲ぶ会の案内状…1~2か月前に発送
【通知する項目】
- 故人の氏名
- 死亡年月日、密葬を行った日
- お別れの会、偲ぶ会の日時、会場、所在地、電話番号
- 連絡者(施主)の住所、氏名、電話番号
- 香典、供花、供物を辞退する場合は明記する
- 会費制かどうか(金額)
- 服装について(平服など)
- 出欠の返信期限
【カードの文例】
角封筒にシングルカードと返信用はがきで送る、お別れの会の案内文例です。
文中の「ご厚志かたくご辞退申し上げます」とは、香典、供花、供物を受け取らないという意味です。「ご厚志」がわかりづらいと感じるときは「まことに勝手ながらご香典、ご供花、ご供物は故人の遺志によりご辞退申し上げます」と具体的に書いてもよいでしょう。
法要の案内状…1か月前まで発送、大規模な法要なら2か月前
仏教では、人が亡くなると七日ごとに忌日があり法要が行われます。現在では、初七日と四十九日(七七日)以外は省略されることが多くなりました。
初七日法要は、参列者の利便性を考慮して葬儀・告別式の当日に前倒しで行うことが多く、葬儀の次に人を招く最初の日が四十九日となることがほとんどです。
四十九日法要を「満中陰法要」ともいい忌明けの大切な法要とされています。案内の範囲は、基本的に親族全員と故人と親しかった人といわれていますが、その土地の慣習があれば従いましょう。四十九日法要は準備期間が短いため、葬儀が終ったらすぐに準備にとりかかります。
案内状はシングルカードまたはダブルカードと返信用はがきを入れた封書、または往復はがきで発送します。封書の案内状がていねいですが、近年は往復はがきの案内状も増えています。
四十九日法要の次が、一周忌法要になります。故人の祥月命日(亡くなった日と同月同日)に行うのが正式です。しかし、平日にあたると参列が難しい人も出てきます。
そのため、平日の場合は命日より早い日の休日に行われるケースが多くなっています。日程は前倒しが原則で、命日より後に行うことはよほどの事情がない限りはありません。親族のほか、故人と関係の深かった友人、知人も招いて故人を偲びます。
【通知する項目】
- 故人の氏名(戒名)
- 法要の種類(四十九日、一周忌など)
- 法要の日時、会場、所在地、電話番号
- 連絡者(施主)の住所、氏名、電話番号
- 香典、供花、供物を辞退する場合は明記する
- 会食(お斎)の用意の有無
- 出欠の返信期限
【カードの文例】
角封筒にシングルカードと返信用はがきで送る、四十九日法要の案内文例です。
【往復はがきの文例】
往復はがきで送る、一周忌法要の案内文例です。
まとめ
この記事では、葬儀、お別れの会・偲ぶ会、法要の案内状を中心に、書き方のマナーや出すタイミング、タブーなどをご紹介しました。
冠婚葬祭にはさまざまな決まりごとがあり、伝統的に続いているものや時代とともに変わってきたものもあります。
マナーを重要視する度合いには、年代差や個人差があります。葬儀に関することで迷ったときは「気にする人に合わせる」と考えれば間違いがないでしょう。