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六曜とは?葬儀を避ける日があるの?

良い結果を期待し悪い結果を出さないために、人々が特定の日を選んだり避けたりすることが日本の文化に根付いています。たとえば「結婚式は大安にあげる」「葬儀は友引を避ける」などは、多くの人が耳にしてきた風習です。

この記事では、六曜のひとつである「友引」と葬儀との関係を解説します。

私たちが仕事やプライベートで重要視するのは、日曜日から土曜日までの七曜カレンダーです。日付と曜日を基準に物事を決定したり行動したりして、日常生活を送っています。

大安や仏滅などの「六曜」は、ふだんはほとんど気にされません。しかし特別な行事やセレモニーでは、意識されることになります。

一方で、六曜には科学的根拠がないことから、まったく問題にしない人もいます。六曜のとらえかたには育った環境などによる個人差、年代差、地域差が見られます。

六曜とは

六曜は「先勝」「友引」「先負」「仏滅」「大安」「赤口」の六つを指します。鎌倉時代に、中国から伝来した暦注です。暦注とは暦に記載される吉凶、つまり運勢のことで、中国古来の吉凶占いが原型となっているとのことです。

日本では戦後から、六曜が冠婚葬祭の日程を決める目安になりました。カレンダーや手帳の日付のところに、先勝から赤口までのサイクルが印字されている商品が、多数市販されています。

参照 便利.com 2023年(令和5年)カレンダー

六曜のそれぞれの意味は、以下のとおりです。

先勝(せんしょう、せんかち、さきかち)

「先んずれば即ち勝つ」で、午前は吉、午後は凶。早めにことを運ぶのがよい日です。

友引(ともびき)

朝夕は吉、昼は凶。婚礼には大安の次によい日です。葬儀は避ける日として広く知られています。

先負(せんぷ、さきまけ)

「先んずれば即ち負ける」で、午前は凶、午後は吉。急用は避け、静かに待つのがよい日です。

仏滅(ぶつめつ)

仏も滅びるほど万事において凶。六曜のなかでもっとも縁起の悪い日です。重要な行事は避けますが、弔事は行ってもよいとされています。

大安(たいあん)

「大いに安し」で、六曜のなかでもっとも縁起の良い日。婚礼、開業、大きな契約など新しいことを始めるのにふさわしい日です。

赤口(しゃっこう、しゃっく)

正午のみ吉、朝夕は凶。新しいことを避ける日です。赤は火や血を連想させ、火事や怪我に気をつける日といわれます。

六曜が影響する行事の例

六曜は日にちの良し悪しだけではなく、時間帯の良し悪しも表していて、以下のような行事で意識されます。人生におけるなんらかの節目、新たなことのスタート、そして人生の終焉、つまり葬儀に六曜がとりあげられています。

  • 結納、結婚式、入籍
  • お宮参り
  • 開業、開店
  • 地鎮祭、起工式
  • 引越し
  • 各種契約
  • 納車
  • 葬儀・告別式

「大安吉日」といわれるように、結婚式は大安の日から予約が埋まります。もっとも最近では、日柄の良し悪しよりも、本人や列席者の都合を優先する傾向にあるようです。

予約が入りにくい仏滅の結婚式に、割引や特典を提供する施設もあり、利用者が増えています。若い世代で大安などの日柄を気にする人は、しだいに減少している模様です。

しかし年齢が高い層に六曜を気にする人は多く、たとえば「友引の日に葬儀をあげないのは常識」と考える人は多数います。

六曜と宗教のかかわり

六曜のなかの「仏滅」に仏の字があるため、仏教とかかわりがあると思うかもしれません。しかし、六曜と仏教との関連はありません。

特に浄土真宗では、友引に葬儀をしてもかまわないと明言しています。宗祖の親鸞聖人が「迷信を信じることなかれ」と、説いたのだそうです。

神道、キリスト教も六曜との関連はありません。六曜の考えは宗教的というより、風習、風潮、言い伝えのようなものと解釈されます。

六曜のなかで葬儀を避ける日は「友引」

六曜のなかで葬儀とかかわりがあるのが「友引」です。友引はもともと「共引」という字でした。順番からすると先勝と先負の間にあり、共に引く、すなわち勝負事には良くも悪くもない引き分けになる日、という意味であったのが、いつしか「友引」となりました。

現在、友引は「友を引く」つまり故人があの世に友を引き寄せるため、葬儀にはふさわしくない日、との言い伝えが残っています。いつ、誰が語り始めたことなのかは、わかっていません。

葬儀の流れは通常、通夜の翌日に葬儀・告別式を執り行い、終了後に出棺して火葬します。友引の日に葬儀を避ける風習のためか、全国に友引の日を休業としている火葬場があります。

火葬場の友引休業の日は、機器、設備点検にあてられるとのことです。友引休業の翌日の火葬場は、当然ながら非常に混み合い予約が入れにくい状況です。

友引の日に開場している火葬場でも、利用率は他の日より低くなっています。このことからも、友引の葬儀を避けたい人が一定数いることがわかります。

火葬場の友引休業にも地域差がある

葬儀のしきたりやマナーには、地域差があることが知られています。その土地独特のスタイルが、随所に見られます。転居先や嫁ぎ先で通夜や葬儀に参列し、自分の地元とやり方が違っていて戸惑った、という話は頻繁に聞かれます。

友引に火葬場が営業するか休業するかも、地域により異なります。日本で特に人口の多い、大阪府と東京都を見てみましょう。

対照的な大阪府と東京都の火葬場事情

大阪府

大阪市内の火葬場6か所(公営5、民営1)は、いずれも友引の日も営業しているため葬儀・告別式、火葬が行われます。

大阪府全域をみても、同様に友引に休業はしていません。火葬場の休業日は1月1日のみか、1月1日と2日です。つまり「大阪では、友引にも葬儀を執り行うのが通例」です。

東京都

一方で、東京23区内の火葬場9か所(公営2、民営7)では、公営1か所を除き友引の日は休業のため、基本的に葬儀・告別式は行いません。23区内で大型斎場6か所を運営する、東京博善株式会社の営業カレンダーを見ると、休業日はいずれも友引の日です。

※参照:東京博善営業カレンダー

23区内で唯一友引の日も営業している公営の臨海斎場でも、友引の利用率は他の日より低いとのことです。

八王子市をはじめ、23区外のほとんどの火葬場でも友引の日は休業です。西多摩郡の公営瑞穂斎場に限り、友引の日でも開場しています。

以上から大阪と違い「東京では友引に葬儀をしないのが普通」ということになります。

その他の主要都市ではどうか

近年、迷信を根拠に友引を休業にするのは合理的ではないという声もあり、仙台市、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市など友引でも火葬場を営業する地方自治体が増えています。

地方自治体が母体の火葬場は、友引の日も稼働している印象です。しかし、やはり友引の日の利用率は、他の日より低いようです。

都市名 火葬場数 友引
札幌市 公営2 休業
仙台市 公営1 営業
横浜市 公営4 民営1  民営1のみ休業
名古屋市 公営2 民営1  月に数回休業
広島市 公営4 営業
福岡市 公営1 営業

友引に葬儀を避けるべきかどうか

友引の日に葬儀を避けるべきかどうかは、地域の風習と喪家の考えしだいです。友引に葬儀を行うのも行わないのも、どちらが正しいとはいえません。

たとえば前述のとおり、大阪府では友引の日にも葬儀・告別式、火葬を行っています。友引を気にする地方からの参列者は、違和感を覚えるかもしれません。しかし葬儀は、故人の居住地のしきたりや風習に従うのが基本です。

葬儀の前に火葬を済ませ、ご遺骨を安置して葬儀を行う「前火葬(骨葬)」が多い地域では、友引を避けての日程調整がしやすくなります。

前火葬は北海道、東北、九州、沖縄に多い葬儀の形です。全国的には、前日の通夜に続き、棺を式場に搬入して葬儀・告別式を行った後に火葬場に向かう「後火葬」を行う地域が多数です。

ところで友引の葬儀の、メリットとデメリットを考えてみましょう。メリットは「仏滅の日の結婚式」のように、他の日よりも利用者が少ないことを利点と考えることです。デメリットは、喪家の人々の心理的な部分にあります

友引に葬儀をあげるメリット

  • 友引以外の日より式場や火葬場が空いている
  • 希望が集中するお昼前後の火葬も予約が取りやすい
  • 控室など火葬場内の施設もゆったり使える
  • 葬儀会場、宗教者のスケジュールも調整しやすい
  • 総じて日程調整がスムーズ

友引に葬儀をあげるデメリット

  • 友引の葬儀を嫌がる家族や親族が反対すると日程調整が難しい
  • 世間体が気になる人には「友引に葬儀をあげる非常識な家だ」などと非難されるのが心配
  • 友引に葬儀をあげなければよかった、と後悔するかもしれない

葬儀日程の決めかたの基本

現在も、六曜が冠婚葬祭の日程を決める目安とされていて、友引に葬儀を避ける風潮も根強いようです。しかし葬儀日程を決めるには、六曜とは別な視点が必要です。

家族が亡くなり、遺族になったらまずは葬儀社を決めます。都市部では、常に火葬場が混み合うのが現状です。特に10月~3月は葬儀件数が多いため、早急に火葬場を押さえたいところです。

友引を気にしているうちに予約が埋まり、葬儀まで日数がかかることがあります。葬儀が延びると、ドライアイスの代金や遺体安置施設の利用料金など、安置にかかる費用が高額になり、ご遺体の状態も悪くなります。

葬儀、火葬は逝去後、早めに行うのが理想です。葬儀日程を決めるには、以下の要素を考慮しなくてはいけません。

火葬場の空き状況を確認

混み合う地域、冬期の繁忙期は最初に火葬場を押さえましょう。葬儀社が予約代行してくれます。

宗教者のスケジュールを確認

宗教葬をあげる場合は宗旨宗派により、僧侶や神父などの予定を確認し葬儀の依頼をします。

葬儀会場の予約

葬儀社に予算や予想参列者数を伝え、手配してもらうのが一般的です。

参列者の都合

遠方から来る親戚や故人の関係者がいれば、葬儀までの日程に余裕を持たせることも考慮します。

地域の風習

火葬には、葬儀の前に火葬を行う前火葬、葬儀後に火葬を行う後火葬があり、地域の風習に合わせるのが一般的です。

 友引の葬儀を気にする人について

自身は六曜のような言い伝えは気にならない、科学的でないことは好まないとしても、一方で気にする人がいるのも事実です。気にする人もしない人も、お互い反発せず理解し合うことが大切です。

友引に葬儀を行っても、実際はなんら問題がありません。六曜は科学的根拠がない迷信で、イベントやセレモニー、事業の成功とは無関係ですし、人の幸不幸を左右するものでもありません。

しかし六曜を気にする人には、その人なりの理由や根拠があります。その気持ちや感情を、尊重する姿勢も必要です。喪主、遺族や親族との打ち合わせでは、友引に葬儀をあげるかあげないかで揉めることもあります。冷静に話し合いを行いましょう。

友引の葬儀を気にしない人は、一方で六曜を考慮しないことに、不安感や不快感を覚える人がいることを理解したいものです。

友引に葬儀を行うことに抵抗を示す人には、僧侶など宗教者や葬儀社の見解を伝えたり、友の代わりとなる「友引人形」を棺に納めたりして、気持ちを和らげる工夫をしてみましょう。

友引に対する宗教者、葬儀社の見解は「友引と弔事は関係がない」で共通しています。葬儀の依頼を受けた担当者は「友引と葬儀は関係がありませんが、気になるようでしたら日をずらしましょうか」と喪家に声掛けをするのが通例となっています。

僧侶をはじめとする宗教者、地域のしきたりに詳しい葬儀社の人は、葬儀の専門家です。友引に葬儀をあげたいけれども、遺族や親族のなかに受け入れられない人がいて困ったときは、菩提寺のご住職や葬儀社のスタッフから声掛けしてもらうのも一案です。特定の分野の専門家が言うことには説得力があり、耳を傾けてもらいやすくなります。

友引人形(友人形)とは

友引に「故人があの世に友を連れてゆく」という言い伝えは迷信とはいえ、気にする人が一定数います。そのため、友引の日の葬儀には棺に人形を納め「友の代わり」にしてもらうという風習があります。

遺族や参列者の都合により友引の日に葬儀、火葬を行う必要があるときに、棺に人形を納めるものです。

友引人形は葬儀社で用意してもらえます。または、遺族側で持ち込んでもよいとされています。ただし火葬場の安全のため、棺に入れられない素材やサイズもありますので、喪家で人形を用意したら葬儀社の担当者に確認してもらってください。

友引人形を棺に入れることで、友引の日の葬儀を気にする人の気持ちが安らぐのなら、行う価値があります。友引の相談をすると、葬儀社の担当者から友引人形を勧められることもあります。

まとめ

この記事では、六曜のひとつである友引と葬儀の関連性について解説しました。六曜のうち、友引は葬儀を避ける日として知られ、休業している火葬場も全国に見られます。

友引に葬儀を行うことの良し悪しは、結論が出ません。土地の習慣や個人の価値観によるため、どちらともいえないのが本当のところです。

宗教者や葬儀社は「友引と葬儀には関連性がない」という見解を示しています。また、地方自治体が運営する公営の火葬場のなかには、友引の日を休業から営業に変更したところもあります。今後は世代交代にともない、友引の日の葬儀を避ける人は減少してゆくのかもしれません。