宗教・宗派

キリスト教カトリックのお葬式は仏教式とどう違う?キリスト教式の葬儀について解説

キリスト教式と仏式葬儀の違い

日本での葬儀は、ほとんどが仏教と深く関わっています。多くの人たちが思い浮かべる葬儀とは「仏式の葬儀」のことです。しかしキリスト教信者の方々は、もちろん彼らが信仰するキリスト教での葬儀を行うでしょう。

文化庁宗教年鑑令和4年度版によると、令和3年12月現在の仏教系の信者数が全体の46.4%で、キリスト教系の信者数が1.1%でした。両者の信者数の割合を見ると、日本人にとってキリスト教はなじみが薄いことがわかります。

仏教には多くの宗派があり、宗派による違いはあるものの、人は亡くなると仏の弟子になると考えられます。そのため、仏門に入った者に与えられる戒名がつけられます。仏式の葬儀は、亡くなった人が現世への未練を断ち切り来世へ旅立てるよう願う儀式が中心になります。

キリスト教カトリック教会では、故人の罪を神に詫びて許しを請い永遠の安息を願って祈りを捧げ、プロテスタントでは神への感謝と遺族に対して祈ります。

このように「死」に対する考えかたがそれぞれの宗教・宗派により異なることが、葬儀のかたちが違うことにつながっています。

キリスト教の葬儀|カトリックとプロテスタント

キリスト教にも様々な教派がありますが、日本では「カトリック」と「プロテスタント」が主流です。

カトリックとプロテスタントでは教義が違います。聖職者の呼称もカトリックでは「司祭」または「神父」、プロテスタントでは「牧師」、典礼はカトリックでは「ミサ」、プロテスタントでは「聖餐式」です。教会で歌われる歌はカトリックでは「聖歌」、プロテスタントでは「讃美歌」で、用語だけでもこのような違いがあります。

日本全体のキリスト教信者数は約100万人で、比率はカトリックが4割、プロテスタントが6割と言われています。ローマ教皇を最高指導者とする、キリスト教最大教派がカトリックです。

カトリック中央協議会の「カトリック教会現勢」によれば、2021年現在、日本の信者数は424,900人でした。

なお、教派と宗派はほぼ同じ意味です。ただ、宗派は主に仏教において使用されるため、キリスト教に関しては教派とします。

この記事では、多くの人になじみが深い仏式の葬儀との類似点や相違点をあげながら、カトリック教会での葬儀を解説します。

カトリック教会の葬儀の流れ

臨終から通夜まで

キリスト教では、信者が臨終の際に聖職者が立ち会い、祈りをささげるのが原則です。カトリックでは信者が危篤になると「病者の塗油」とよばれる儀式を行います。

これは神父が信者のひたいなどに聖油を塗り、神に罪を告白して許しを請い、故人が永遠の安息を得られるよう祈る儀式です。

ただ、実際には神父が逝去に間に合わなかったり、家族が遠慮して亡くなってから神父に連絡をしたりするケースもあるようです。信者が神父の到着を待たずに息を引き取った場合、遺族や周囲の人が祈り、神父が到着してから改めて祈りを捧げてもらうことになります。

逝去の後は棺に遺体を納め、仏式の通夜にあたる儀式を行います。カトリックでは「通夜の集い」や「通夜の祈り」とよびます。

本来、キリスト教に通夜はありません。しかし、日本の慣習にならい行われるようになったため、決まった作法はないのです。所属する教会の方法に従いましょう。

キリスト教では、仏式の通夜ぶるまいにあたる習慣も、もともとありませんでした。日本では通夜の集いに続き、軽食や茶菓で参列者をもてなし、故人を偲ぶ時間を設けるのが一般的になっています。

よく見られるカトリック教会の通夜の進行は次のとおりです。

  1. 参列者一同による聖歌斉唱
  2. 神父による聖書朗読
  3. 説教
  4. 祈り
  5. 神父による献香
  6. 参列者の献花
  7. 喜びの祈り
  8. 遺族代表者挨拶

葬儀・告別式

カトリックの葬儀を「葬儀ミサ」といいます。仏式では葬儀・告別式を一連の流れで行いますが、カトリックでは葬儀と告別式を分けて行い、葬儀ミサは教会主催、告別式は遺族主催で執り行われます。

葬儀ミサの進行

  1. 入堂式:教会へ棺が到着→安置
  2. 言葉の典礼:聖書朗読→聖歌斉唱→福音書の朗読→神父の説教→祈り
  3. 感謝の典礼:遺族によるパンとぶどう酒の奉納→聖体拝領(神父による感謝の祈りと信者にパンを分け与える儀式)

告別式の進行

  1. 聖歌斉唱
  2. 神父の言葉
  3. 撒水(さっすい:神父が棺に聖水をかける儀式)
  4. 告別の祈り
  5. 弔辞、弔電の紹介
  6. 献花
  7. 遺族代表あいさつ

出棺

告別式が終了すると、遺体は火葬場に向かいます。出棺から火葬の儀式は仏式に似ていて、参列者が火葬の前に故人と最後の対面をし、棺に花を入れます。

神父による祈りと聖書朗読の後、参列者の聖歌斉唱で出棺され、荼毘に付されるという流れです。

火葬

火葬の前にも聖歌斉唱、神父の祈祷があります。キリスト教は本来土葬ですが、日本では火葬します。土葬が行われるのは、キリスト教には故人の魂は肉体に戻り、復活するという思想があるからです。火葬してしまうと、戻るべき肉体がなくなってしまうという理由です。

しかし、日本では自治体が墓地関係の条例を定めていて、土葬はほとんど受け入れられません。したがって、キリスト教式でも仏式と同様、火葬して骨壺に収骨します。

自宅に戻った遺骨を安置するのに、仏式のような後飾りはありません。小ぶりな台や机に布をかけた祭壇を作って遺骨を置き、遺影、花、十字架やろうそくを飾るのが一般的です。

カトリックの葬儀における注意点

喪主となったらすべきこと

教会への連絡

仏式では人が亡くなってから僧侶に連絡をし、枕経をあげてもらいます。キリスト教の場合は、原則として危篤を告げられた時点で教会に連絡します。

遠方で亡くなったり、急病、不慮の事故などで急逝したりした場合はこの限りではありません。しかし、可能な限り神父に臨終に立ち会ってもらいましょう。

葬儀社の選定

故人がカトリック教会の信者であった場合、所属教会か斎場が葬儀会場になります。キリスト教式葬儀の経験豊富な葬儀社を選べるよう、教会から紹介してもらうのがよいでしょう。

費用については見積もりをもらい、おおよその出費の心づもりをしておきます。喪家、教会、葬儀社の三者で葬儀の打ち合わせを行い、祭壇の装飾などは教会の指示に従います。

なお、参列者のなかにはキリスト教徒ではない人、初めてキリスト教の葬儀に参列する人もいます。そのため、式次第、聖歌の歌詞や祈りの言葉のプリントを配るとよいでしょう。教会か葬儀社に、作成を依頼します。

会葬者のマナー|仏式葬儀との違いに注意

服装

カトリックの葬儀でも、仏式と同様に喪服を着用します。通夜には略礼装、葬儀・告別式には準礼装が基本といわれています。

略礼装は男性がダークスーツ、女性はダークカラーのスーツまたはワンピースです。準礼装は男性がブラックスーツ、女性がブラックフォーマルである、黒無地のワンピースやアンサンブルです。

女性のアクセサリーは結婚指輪と真珠かオニキスの一連のネックレス、イヤリングにとどめます。薄化粧をし、ロングヘアの人は耳より下で束ねます。

ベールのついた「トークハット」は正喪服となりますので、喪主や親族など喪家側の人のみが着用します。また、参列者自身が仏教徒であっても、キリスト教式葬儀で数珠は持ちません。

マスク

葬儀のような人が多く集まる場所では、新型コロナウイルス感染症への対策が必要です。感染予防のマスクは黒と限らず、白でも構いません。礼拝時にはマスクをはずすのが本来のマナーですが、状況に応じてマナーよりは感染防止対策が優先されることがあります。教会や葬儀社の指示にしたがいましょう。

香典

仏式の葬儀では通夜、告別式に参列する際に「香典」を包みます。香典はもともと香奠と書き、「奠」とは神仏への供え物のことです。香典にあたるものが、キリスト教では「お花料」になります。

不祝儀袋は葬儀の宗教・宗派に合わせて選ぶのが基本で、キリスト教は白無地、または十字架や百合の花が印刷されたものを選びます。表書きは「お花料」です。よく目にする蓮の花の印刷がある袋は、仏式用です。カトリックの不祝儀袋には適しませんので、注意をしましょう。

金額の目安は親族が5,000円〜10万円、職場・取引先関係、友人、近隣では5,000円です。この金額は、全日本冠婚葬祭互助協会が行った「香典に関するアンケート調査(令和3年度)」の最多回答額に基づいています。

香典やお花料は地域によっても差がありますので、金額がわからないときには経験豊富な年長者に聞いたり、同行する参列者に合わせたりすれば心配がありません。

遺族にかける言葉

葬儀の場は、慣れないと多少なりとも緊張するものです。特になじみの薄いカトリックの葬儀に参列する際には、遺族にかける言葉にも戸惑います。ここでは、言葉遣いの注意点をあげておきます。

「ご愁傷さま」や「お悔やみ」の表現は仏式の用語で、キリスト教でタブーとされています。キリスト教では、死は永遠の命のはじまりと考えられているためです。

カトリックでは、仏式葬儀で使われる「このたびはご愁傷さまでございます」や「お悔やみ申し上げます」ではなく、「安らかにお眠りになりますようお祈りいたします」と声掛けをするようにしましょう。

献花

仏式の「焼香」にあたるものが、キリスト教では「献花」です。献花の作法を記しておきます。献花の方法はインターネット上に多くの動画が公開されていますので、視聴して確認しておくと安心です。

  1. 順番が来たら係の人から花を受け取る。その際、花が右、根元が左にくるように両手で持つ。
  2. 遺影に一礼し、花が手前で根元が祭壇に向くように右に90度回す。
  3. そのまま献花台に置く。
  4. 遺影に一礼し、一歩さがって神父や遺族にも一礼して席に戻る。

カトリックの葬儀費用について

支払いに含まれる主なものに、葬儀社への支払い、教会への御礼、通夜の集いの軽食、茶菓代、その他(交通費、文具代など)があります。そのなかで大きな金額となるのが、葬儀社への支払いと教会への御礼です。

葬儀代金の目安は、一般葬で100万~200万円、家族葬で40万~100万円です。参列者により金額が変わるのは仏式の葬儀と同じですので、あらかじめおおよその参列者数を葬儀社に伝え、必ず見積書を出してもらいましょう。

葬儀社への支払い

後日、葬儀社から請求書が届いたら、見積書や納品書と照合します。追加費用が発生していることもありますので、間違いがないか確認の上、現金、クレジットカードまたは銀行振り込みで支払います。

神父へ渡す御礼はいくらか

カトリックの葬儀でも、宗教者への御礼が必要です。仏式での「御布施」にあたるものです。カトリックの葬儀では教会への御礼を「献金」の表書きで、白封筒に入れて渡します。

金額は5〜20万円が相場といわれていますが、教会が規定を設けている場合もあります。金額に迷ったら、率直に教会に聞いてみましょう。

オルガン奏者や、頼んだ場合は聖歌隊への謝礼も必要です。5,000円から2万円が相場ですが、これも教会に確認するのが一番です。表書きは「御礼」とし、白封筒を使用します。

教会への御礼は、葬儀の翌日に喪主と遺族代表とで教会にうかがい、神父へ渡すのが望ましいとされています。服装は、準喪服か地味なスーツ着用です。

ただし、感染症流行時には人と人との接触機会を少なくすることを優先し、当日に御礼を渡しても構わないと現在は考えられています。

カトリックの追悼ミサ・命日祭とは

仏式の法要にあたるものが追悼ミサと命日祭

仏教では亡くなった日を忌日といい、七日目ごとに追善供養を行います。実際には初七日と七七日(四十九日)の法要以外は省略されます。その法要にあたるものが、カトリック教会での「追悼ミサ」と「命日祭」です。

決まった日に追悼ミサや命日祭を行う

キリスト教では、カトリックもプロテスタントも追悼儀礼の厳格な決まりはありません。

カトリック教会では死後3日目、7日目、30日目に追悼ミサを行い、遺族や近親者、友人、知人が参列して祈りを捧げます。30日目以降、月命日と年命日に行われる追悼会を「命日祭」といい、故人を偲びミサが行われます。

万霊節という特別なミサ

キリスト教では11月を「死者の月」とし、11月2日にはすべての死者の霊を祈るミサを行います。「万霊節(ばんれいせつ)」または「死者の日」とよばれる特別なミサです。

まとめ

この記事では、キリスト教徒でない人にはあまり馴染みのない、カトリック教会における葬儀について解説しました。

ある程度の年齢になると、葬儀に参列する機会が増え、喪主を経験することもあります。多くの人が参列した経験がある仏式の葬儀と比較しつつ、カトリックの葬儀について解説を進めました。

悲しみの知らせは、大抵突然やってきます。誰しも、いざというときに慌てたり、マナーを知らなかったことで葬儀の場で居心地の悪い思いをしたくはありません。

カトリックでの葬儀に参列する場合にそなえて、記事中の注意ポイントを心に留めておきましょう。