宗教・宗派

禅宗の葬儀の特徴、曹洞宗・臨済宗それぞれの金額の相場を解説

葬儀は日常的に接する機会があまり無いため、いざ参列したり喪主となったりする場合に知らないことが多く、困ることがあります。また、地域や宗派によって礼儀作法も異なるため、事前の確認を怠らないようにすることが重要です。

今回の記事では禅宗の葬儀の特徴、費用の相場、葬儀の礼儀作法について解説します。禅宗の曹洞宗、臨済宗は日本三大禅宗ともされているため、自分自身が該当する宗派であることも多いでしょう。

葬儀は計画立てて行うものでなく突発的に起こるものであるため、当日失礼の無い振る舞いができるように、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。

禅宗の葬儀の特徴とは?

禅宗の葬儀の特徴は、「授戒」と「引導」が大きな特徴です。故人がお釈迦様の弟子となるために戒名・戒法を授かるのが「授戒」であり、「引導」は棺の前で、僧侶が故人を仏様の元へ導くよう法語を唱えます。

そもそも禅宗とは、座禅を重視していることが特徴の仏教宗派のひとつです。代表的な宗派として「曹洞宗」と「臨済宗」があります。曹洞宗と臨済宗の葬儀が他の宗派と比較してどのように特徴的なのかを解説します。

曹洞宗と臨済宗の葬儀の特徴と流れ

曹洞宗と臨済宗の葬儀は、いずれも「授戒」と「引導」を中心として大きく前半と後半の2つに分かれています。

前半は、故人がお釈迦様の弟子となるために戒名・戒法を授かる「授戒」が中心となっています。後半は、故人を仏様の元へと導く「引導」が中心であり、引導法語が唱えられます。

「葬儀は、故人がお釈迦様の弟子となる儀式である」という概念が曹洞宗・臨済宗の基本となってます。そのため授戒と引導は、故人の新たな旅立ちを見守るための儀式でもあり、他の宗派の葬儀と比較して葬儀時間が長い傾向にあります。また、僧侶の人数も他の宗派と比較して多いです。

葬儀全体を通して、もう一つ特徴的なのが鼓鈸三通(くはつさんつう)という儀式です。

鼓鈸三通は、三つの鳴り物を使用して三人の僧侶が盛大にリズム良く音を奏でます。音の様子から「チン・ドン・ジャラン」と呼ばれることもあります。寺院によって異なりますが、鼓鈸三通は葬儀全体を通じて三回行う寺院もあります。出棺の際に鼓鈸三通が行われることで、参列者は荘厳な空気を感じることになるでしょう。

曹洞宗の特徴

曹洞宗は、鎌倉時代の初期に道元によって伝えられました。坐禅に重きを置いた考え方で、坐禅をする姿を「仏の姿」としています。また坐禅は「悟りの姿」でもあり、修行した後に悟りを開くのでは無く、「修証一如(しゅしょういちにょ)」として修行と悟りは常に一体であるという考えをもっています。

鎌倉初期に伝えられた曹洞宗は、地方を中心に武士や農民の間で広まっていきました。曹洞宗の坐禅は、壁に向かって黙ってひたすら坐禅を組むことが特徴的です。同じ禅宗でも坐禅に対する姿勢は全く異なり、臨済宗は師から与えられた内容について考えながら、人と向かい合って坐禅を組みます。

唱える言葉として、一般的には「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」や「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」をイメージしますが、曹洞宗では「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」と唱えます。繰り返し何度も唱えるのではなく、お経を読む前に一度唱えることも特徴の一つです。

曹洞宗と臨済宗は、坐禅に重きを置いている点においては共通してますが、作法や坐禅に取り組む考え方に違いがあります。

臨済宗の特徴

日本に伝えられたのは、曹洞宗と同じく鎌倉初期で、栄西により伝えられました。曹洞宗・黄檗宗と並ぶ日本三大禅宗のひとつで、坐禅に重きを置いた考え方を特徴としています。

曹洞宗が地方を中心に武士や農民の間で広まった一方で、臨済宗は武家社会を中心に広まりました。幕府の力添えもあり、政治の世界と深く結びつき芸術の世界にも影響を与えるなど、広く支持されていたことがうかがえます。

曹洞宗とは坐禅への向き合い方が異なり、臨済宗は人と向き合う対面方式であり、師から弟子に与えられた問題に対して、頭で考え全身で坐禅を通して答えを導き出すという思想を持っています。

唱える言葉は曹洞宗と同様の「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」であり、「私はお釈迦様に帰依します」という意味を持っています。「帰依」には、悟りを開いた人や、宗派の教えを広く広めた人に対して尊敬を持って接するという意味が込められています。

曹洞宗と臨済宗それぞれの費用の相場

曹洞宗と臨済宗の費用はそれぞれ異なり、曹洞宗が20~60万円で臨済宗が15~50万円が相場とされています。ただし、地域や寺院によっても異なりますので、あらかじめ確認しておいたほうがよいでしょう。

また、上記の費用とは別に戒名にも費用が発生します。戒名はランクによって大きく、100万円以上の費用がかかることもあります。

読経料、お車代などさまざまな費用がありますが、「お気持ちで」とされていることが多く相場を知っておくことは重要です。葬儀には参列者が包む香典や、謝礼として包む「読経料」「お車代」「御膳代」などさまざまあります。曹洞宗と臨済宗それぞれの、葬儀にかかる費用の相場を詳しく見ていきます。

香典の相場

曹洞宗、臨済宗の香典は他の宗派とあまり変わらない相場となっています。香典費用は特に決まりはありません。そのため、一般の相場を知ったうえで適切な金額を包むことが求められます。少なすぎると恥をかきますが、一方で多すぎると相手のお返しが大変になるため迷惑となってしまいます。

勤務先の同僚や友人であれば5000円が相場であり、親族の場合は1万円が相場となっています。地域によっても相場は異なり、中部地区が平均して高い傾向にあります。参列する周りの方に相談してみるとよいでしょう。

お布施の相場

お布施は、僧侶への感謝を込めて渡すお金であり、曹洞宗は20~60万円、臨済宗は15~50万円が相場となっています。葬儀のほかに、初七日や四十九日といったシーン毎のタイミングでお布施は必要となります。葬儀は数十万円ですが、それ以外は数万円が相場となっています。ただし、地域や寺院によっても異なりますので、前もって確認しておくとよいでしょう。

また、臨済宗はさらに10以上の宗派に分かれており、それぞれの宗派で相場が異なります。自分がどの宗派に該当するのかを確認したうえで、相場を合わせて確認するとよいでしょう。

戒名の相場

戒名は、ランクによって相場が異なり、最も高いランクだと100万円以上の費用が必要となります。宗派によってランクは異なっており、曹洞宗と臨済宗それぞれでランクと相場が異なっています。

曹洞宗のランクと相場は次のようになっています。

戒名 費用
信士・信女 30万円~
居士・大姉 50万円~70万円
院信士・院信女 100万円~
院居士・院大姉 100万円~

臨済宗のランクと相場は次のようになっています。

戒名 費用
信士・信女 30万円~50万円
居士・大姉 50万円~80万円
院居士・院大姉 100万円~

 

上記はある程度の相場の目安ではありますが、寺院によっても費用の相場は異なりますので、戒名についても事前に確認する必要があります。

お車代の相場

曹洞宗と臨済宗のお車代の相場は、他の宗派と差はなく5000~1万円が相場となっています。僧侶の交通費の名目であるため、往復のタクシー代がまかなえる程度と考えてよいでしょう。

県外から来てもらう場合はより多めに包む必要があります。また、自分たちでタクシーを手配したり、葬儀会場が寺院であったりする場合はお車代を渡す必要はありません。

御膳代の相場

曹洞宗と臨済宗の御膳代の相場は、他の宗派と変わらず5千円~2万円程度が相場となっています。もともと、法事の後は故人を偲んで思い出を語り合う食事の場を設けて、僧侶に参加してもらうのが風習でした。

ただし、時代の流れとともに、会食自体が行われなくなってきたり、会食の場があったとしても僧侶が次の法事へ向かうため欠席したりすることが多くなってきました。そこで、食事の代わりに御膳代として包んで渡すようになりました。

まずは、僧侶が会食に参加するかどうかを事前に確認しておき、欠席の場合のみ御膳代を用意するようにしましょう。

禅宗の葬儀のマナー礼儀作法

曹洞宗と臨済宗を含めた、禅宗の葬儀マナーについて紹介します。たとえば焼香について、曹洞宗は2回ですが臨済宗は1回とされています。宗派や地域によって異なる部分は多いため、まずはこの記事で事前に確認をしたうえで、寺院の人や同じ宗派の親戚の人に確認してみるとよいでしょう。

今回の記事では次の内容について、マナーを紹介しますのでぜひ参考にしてみてください。

    1. お布施のマナー
    2. 数珠の使い方
    3. 焼香の仕方
    4. 香典の包み方

お布施のマナー

お布施は、表の書き方や墨の色、包む紙や渡すタイミングなど礼儀作法がたくさんあります。守れない場合、僧侶に対して失礼な行為となることもありますので、慎重な対応が必要です。お布施について「書き方」「包み方」「渡し方」それぞれについて解説します。

お布施の書き方

表の上段に「お布施」または「御布施」と記入しますが、特に気をつけるのは墨の濃さです。濃い墨で書くことが礼儀作法とされており、薄い墨はマナー違反とされているため注意しましょう。一方で、香典袋の場合は、薄い墨が適切であるとされている場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。

金額は必ず旧字の漢数字(壱、参など)を使用します。最後に「也」を記入します。3万円を包んだ場合は「金参萬圓也」と記入します。「萬圓」については「万円」でも代用可能です。

奉書紙を使う場合と、白封筒を使う場合とで記入する場所が異なる点にも注意しましょう。奉書紙は中包みの表側、白封筒は封筒の裏側に記入します。

お布施の包み方

和紙の一種である「奉書紙」を使用するか、または白い無字の封筒も使用することができます。コンビニエンスストアや百円ショップでも売っているので、気軽に買うことができます。派手に装飾されている包み紙の使用は避けましょう。

また、香典とは異なり、寺院に対する納め物のため水引も不要な点にも気をつけましょう。香典と同様の包み方をすると、寺院に対して失礼な行為となります。お札の向きも同様に香典とは異なります。肖像画が表側になる向きで揃えて、かつ肖像画が包みの上側にくるようにします。

お布施の渡し方

最も気をつけなければいけないのは、お布施は裸のまま手渡しで渡してはいけないという点です。必ず袱紗の上に重ねるか、または切手盆の上に載せて渡すようにしましょう。袱紗の色にもマナーがあり、葬儀の場合は暗めの色を使用することにしましょう。深緑や紺色などが多いですが、紫色でもマナー違反とはならず、紫色は慶事にも使用できるため便利な色です。

葬儀が始まる前か、または読経の終了時に渡すのが適切なタイミングです。感謝の言葉を述べながら、袱紗か切手盆にのせて渡しましょう。

数珠の使い方

曹洞宗、臨済宗ともに数珠は108の主玉がある数珠を使用します。男性用と女性用で房の種類が異なるため注意しましょう。曹洞宗と臨済宗はほぼ同じ形ですが、曹洞宗は銀の輪が付いていて、臨済宗には付いていないという違いがありますので、気をつけたいポイントです。

輪っかを二重にして、房が下になるように持ち、そのまま合唱するように両手で持つのが通例です。曹洞宗と臨済宗どちらも同じ持ち方です。

焼香の仕方

曹洞宗と臨済宗では焼香の作法が異なります。曹洞宗は2度焼香を行うのに対して、臨済宗は1度で良い場合が多いです。ただし、葬儀によっては臨済宗でも2度行う場合がありますので、焼香前の説明をよく聞くようにしましょう。

曹洞宗では、1度目は額に押し、念じて焼香します。2度目は額には押し当てずに焼香をします。一方で臨済宗では1度でよく、かつ額に押し当てることもしません。

葬儀に参列する際に迷うのが焼香の仕方です。間違ったやりかたをしてもマナー違反とされることはあまりありませんが、なるべく宗派に合わせた礼儀で行うのが良いでしょう。

香典の包み方

曹洞宗では、葬儀の際の香典は「御霊前」または「御香典」を使用しますが、臨済宗は特にマナーはありません。ただし臨済宗でも「御霊前」を使用するのが一般的です。コンビニエンスストアや百円ショップで購入できるもので、問題無く使用できます。水引の下の中央部分に名前をフルネームで記入しましょう。

包むお札については、新札は失礼に値しますが、使い古されたお札も適切ではありません。新札を用意して、ある程度折り目をつけて包むのが良いでしょう。

まとめ

今回の記事では、禅宗の葬儀の特徴と、費用の相場、礼儀作法について解説しました。禅宗の葬儀では、三つの鳴り物を使用し、僧侶が盛大に音を奏でる「チン・ドン・ジャラン」が特徴的です。故人はお釈迦様の弟子となるという思想のもとに、「授戒」と「引導」を中心とした流れとなっています。

費用の相場は曹洞宗と臨済宗で異なり、曹洞宗は20~60万円、臨済宗は15~50万円が相場となっています。戒名の費用はランクによって大きく異なり、院居士・院大姉のランクとなると100万円以上の費用となっています。

葬儀には礼儀作法があり、宗派や地域によって異なることが多いです。参列する場合や喪主となる場合は、必ず事前に寺院の方や親戚の方に相談しましょう。お布施、数珠の使い方、焼香の仕方、香典の包み方それぞれに地域性や宗派による違いがあります。

相手の失礼に当たらないように気を使って、故人の葬儀を滞りなく終えることができるようにしましょう。