宗教・宗派

天台宗の葬儀の特徴は?特徴やマナー、お布施の費用についても解説

天台宗は長い歴史をもつ仏教の宗派です。仏教の葬儀は、宗派によって流れやマナーが異なる場合があるため、事前に宗派独自のポイントを抑えておくことが重要です。

本記事では、天台宗の特徴や考え方、実際にかかる費用の相場を解説します。また、参列する場合のマナーや仏具の紹介もしていますので、天台宗の葬儀に参列する前に本記事の内容を参考にしてみてください。

天台宗の葬儀の特徴とは?

天台宗は法華経を経典とした仏教の一つであり、天台法華宗や法華宗と称されることもあります。葬儀で唱えられるお経は「法華経」「阿弥陀経」「光明真言」の三つです。天台宗には三つの儀礼があり「顕教法要(けんぎょうほうよう)」では法華経が読誦され、夕方に行われる「例時作法」では阿弥陀経、そして「密教法要」では光明真言が唱えられます。

また、阿弥陀経の「故人は仏になる」という思想のもとに「剃度式」「誦経式」「引導式」「行列式」「三昧式」の五つの式をもとに葬儀が進行されます。

天台宗の特徴である三つの儀礼、五つの式、そして天台宗の葬儀で見られる「散華」についてそれぞれ解説します。

三つの儀礼

天台宗では仏の教えが顕教と密教の二つに分類され、顕教は衆生が理解しやすく説かれたもの、密教は真理を突いた秘密の教法です。二つに分かれている場合と、併用している場合とがあるので注意が必要です。

天台宗の三つの儀礼「顕教法要」「例時作法」「密教法要」について解説します。

 

顕教法要

顕教法要では、僧侶が法華経を読み上げる「法華懺法(ほっけせんぽう)」という儀式が行われます。罪を懺悔し、仏教としてあるべき生活を送ることが説かれることで、故人が生前の行いを懺悔し、仏になる意識を自覚させることが目的です。

法華懺法は故人のために行われるだけでなく、参列者自身も懺悔の心を持ち、仏教の教えに基づいた生き方を心がけることを促します。またこの儀式を通じて故人の冥福を祈ると同時に、参列者それぞれが自分自身を振り返ることで、精神的な成長にもつながるでしょう。

顕教法要における法華懺法は、天台宗の教えの一つであり、生死を超越した真の自己を開くことを目指すための懺悔の儀式として、重要な役割を果たしています。

例時作法

例時作法は、阿弥陀経を唱え阿弥陀如来の力を借りて故人を成仏させる儀式です。天台宗では「朝題目夕念仏(あさだいもくゆうねんぶつ)」という言葉があり、朝に題目である「法華懺法」を読み、夕方の時刻に阿弥陀仏を唱えます。故人が極楽浄土で往生することを祈ります。

密教法要

十八道といわれる十八の手の結び方を行う行法であり、十八の手の結び方は印契と称されています。印契は仏様の悟りを内面から表す形といわれていて、十八道に準じて作られた光明供によって、故人の成仏を祈って修されます。

光明真言と言われる短くとも力強いお経が読まれることが特徴的です。

 

五つの式

故人と最期のお別れをし、火葬場へ送り出す葬送の作法において、天台宗では五つの作法を用いています。五つの作法は阿弥陀経を主体としており、故人はすべて仏になるという思想にもとづいて構成されています。「剃度式」「誦経式」「引導式」「行列式」「三昧式」の五つの式を見ていきましょう。

剃度式

剃度式は、故人が僧侶になるための儀式として行われます。故人の希望や家族の意向により、葬儀の際に剃髪し、戒名を授かることができます。現在は実際に剃髪することは少なく、かみそりを髪の毛に当てる形式が主流です。

誦経式

誦経式は故人の冥福を祈り、供養を行う儀式です。僧侶が経典を読誦し、参列者は故人の死を受け入れ、その命が終わったことを悲しむと同時に、生きることの大切さを再確認します。

引導式

光明真言を唱えて、故人に光明供を使って説教をします。故人の旅立ちを後押しします。

行列式

西方にある極楽浄土へ、故人が向かっていく儀式です。

三昧式

三昧は仏教用語で、集中し動揺しない様子を指します。参列者全員が気持ちを整えて集中し、法華経を唱えます。三昧式によって、故人は心が安定して成仏する境地へと至るでしょう。

散華

天台宗の葬儀には散華といわれる儀式があります。実際に行われる所作は、棺の中に色紙を撒くことになりますが、色紙は蓮の花びらを模しています。さまざまな説はありますが、仏をたたえるために人々が花びらを撒いたこと、または仏が来迎した際に花びらが降ってきたことなどが由来とされています。

蓮の花びらの香りによって、悪い物を払う思想も元になっています。

 

天台宗のお布施の費用相場は?

葬儀を行うに当たって、費用は気になるところであり、特にお布施については「お気持ちで」としている寺院も多いことから、具体的な金額が明確に分かりにくいという特徴があります。

天台宗においても、他の宗派と同様に明確にはなっていなく、地域や寺院によって異なります。一般的には葬儀の形式や規模、また故人の関係性によって決められる傾向にあり、葬儀費用や戒名料も同様に状況によって異なるため明確に分かりづらいのが現状です。お布施の相場と、戒名料や葬儀の費用相場について解説します。

お布施の相場

天台宗のお布施の相場は他の宗派とあまり差はなく、一般的には20万円〜35万円が相場となっています。ただし、感謝の気持ちを込めて渡すものであるため相場は目安と捉えて、自身の心もちから包むことが重要なポイントです。また、寺院や地域によっても相場に違いがあるため、葬儀会社や親戚に事前に相談してみるのも良いでしょう。

葬儀の形式によっては御車代や御膳代が別途かかる場合があるため注意が必要です。僧侶の交通費が発生した場合は御車代、僧侶が会食に参加できない場合は御膳代が必要なことを考慮しておきましょう。

戒名料の相場

天台宗の戒名料は他の宗派同様に、位によって相場が異なります。低い位とされている「信士・信女」の相場は30万円〜50万円であり、高い位とされている「院居士・院大姉」の場合は100万円が相場になります。

戒名については、故人の生前における寺院に対する関わりの深さや、同じお墓に入るご先祖様とのつながりなどさまざまな要因によって変わります。また、相場は目安でしかなく、僧侶への感謝の気持ちを込めた金額であるため明確な決まりはありません。

戒名についても事前に親戚や寺院と相談しておくほうが良いでしょう。

葬儀の相場

葬儀の費用は参列者の人数によって異なります。火葬場に直接納棺する「直葬プラン」の場合は12万円が相場となっていますが、一般の葬儀の費用は80万円~100万円が相場となっています。近親者のみで行う家族葬の場合は、やや費用を抑えることができ、50万円~60万円が相場です。

葬儀形式は遺族の意向によって決まることが多いため、事前に親族含めて相談し、費用がどの程度必要かを把握しておく必要があるでしょう。

天台宗の葬儀のマナーや注意点

葬儀のマナーは、宗派や地域によって異なりますので、参列する場合は事前に調べておくことが重要です。特に香典や服装は、間違えるとマナー違反となり失礼な印象を与えてしまうことがありますので、注意が必要です。

天台宗における葬儀のマナー、注意点について解説していきます。

数珠

天台宗の数珠は一般的な数珠とは異なる形状となっています。丸い球の数珠ではなく、楕円形の平たい形をした数珠を使用します。108つの主玉、4つの天玉、そして親玉で構成された数珠です。

参列者は、天台宗の作法に沿った数珠を持参する必要はなく、ご自身の宗派の数珠を使用しても構いません。数珠の持ち方も宗派によって異なるため注意が必要です。

焼香

天台宗は焼香の回数に定めはありません。そのため、葬儀の焼香の前に「一度で良い」とアナウンスがあれば一回額にいただく作法で良いでしょう。基本的には3回の場合が多く、右手で香を取り額にいただき、3回繰り返し合掌礼拝を行います。

線香で焼香を行う場合もあり、1本や3本使うことが多いです。焼香前のアナウンスをよく聞き本数を合わせましょう。線香の火は手で仰いで消すのがマナーですので、注意が必要です。1本は真ん中に立てて、3本の場合は手前に1本と奥に2本立てるのが一般的です。

服装

参列時の服装は間違えるとマナー違反となるので気をつけましょう。親族の場合は、モーニングコートにコールパンツを合わせた正喪服を着用しましょう。基本的には黒を基調とし、中には白シャツを着用します。

また、準喪服でもよいとされる場合があります。準喪服とは、ブラックスーツを着用し、靴、靴下などは全て黒で統一された服装です。

女性はブラックフォーマルウェアが適切とされており、光沢の無いものを選びましょう。

ストッキングや靴など全て黒で統一します。

香典

葬儀の香典は、表書きに「御霊前」と記入しますが、四十九日過ぎて渡す場合は「ご仏前」とするのがマナーです。仏教では四十九日を境に成仏して仏となる考え方が一般的です。天台宗でも同様のため、四十九日を境に香典の表書きも変える必要があります。また、自分で表書きを書く場合は必ず濃い墨のペンを使用しましょう。

香典の相場は、故人との関係性によって変わってきます。友人、知人の場合は3000円~5000円ですが、両親の場合は10万円程度が相場となっています。包む金額に合わせて香典袋も変える必要があり、1万円まではシンプルな印刷された水引きの香典袋ですが、3万円以上の場合は、印刷ではなく水引きが付いている香典袋を選びましょう。

使用するお札は新札は避けなければいけません。また、使い古されたお札も失礼となってしまうため、新札を1度折り目をつけて使用することが多いです。

天台宗に必要な仏具

天台宗は密教として「梵音具(ぼんおんぐ)」と呼ばれる音の鳴る仏具が使用されます。代表的な梵音具の一つが「大徳寺りん」です。読経に使用される鈴で、鳴り響く音は極楽浄土まで聞こえると言われています。大徳寺りんには空間を清める効果があるとされています。

また「木魚」も梵音具の一つです。天台宗、浄土宗、禅宗など広く使用されている木魚ですが、宗派によっては使用しないこともあります。元々は魚の形を模した魚板が使用されていました。現代では形が変形し円形の木魚となっていますが、木魚の表面には魚のウロコがデザインされているなど魚板の名残がみてとれるでしょう。

葬儀で使用される梵音具には「妙鉢」があります。シンバルのような使い方で音を鳴らし、邪気を払い空間を清めると同時に、参列者の意識を集中させる用途として使われています。葬儀で使用される梵音具には他にも「銅鑼(どら)」、「懺法太鼓(せんぽうたいこ)」「錫杖(しゃくじょう)」などさまざまなものがあります。

天台宗の四十九日

仏教には輪廻転生の思想があり、故人はまた生まれて命を全うするとされています。命日から7日毎に次に生まれるところが決まりますが、四十九日目を過ぎても決まらない場合は成仏できずに霊が彷徨うことになります。

成仏できないことにならないように7日ごとに法要を行い、次に生まれるところが決まるようにお祈りをします。

四十九日目に納骨を行い、忌明けとなるのが一般的です。四十九日目に盛大な法要を行い故人を供養します。四十九日の法要では葬儀ほどではありませんが、さまざまな費用がかかるため事前に確認しておきましょう。

 

まとめ

今回の記事では、天台宗の葬儀についての特徴と、気をつけるべきマナーやお布施の費用相場について解説しました。

天台宗は法華経を経典とした仏教の一つであり、「法華経」「阿弥陀経」「光明真言」の三つのお経が唱えられます。三つの儀礼と五つの式を中心とした葬儀が特徴的です。棺の中に蓮の花びらを模した色紙を撒く散華も特徴の一つといえるでしょう。

天台宗の葬儀、お布施、戒名の費用相場は他の宗派と差はなく一般的な相場となっています。ただし、葬儀のスタイルや寺院、地域によって異なるため、事前に親戚や葬儀会社、寺院の人に相談しておおまかな費用を把握しておくことが重要です。

特に戒名料は、故人と寺院の関係性によって決まり、位によって金額も大きく異なるため事前の確認をしておきましょう。

葬儀マナーにおいては、他の宗派と異なる部分は少ないため、事前に確認して失礼のない振る舞いをしましょう。天台宗の葬儀に参列する場合、ぜひ本記事を参考にしてみてください。