生前にやっておくこと
家族や友人、大切な人とお別れする日は誰にでもやってきます。
その時に残された人のため、生前にやっておくことは何があるでしょうか。
お金や相続のこと、医療や介護、お葬式やお墓の手配、PCなどのデータ管理などさまざまです。
特に重要なのが相続に関することではないでしょうか。
生前にやっておくこと、すなわち生前対策をしっかりと行い、生きているうちに相続人に一定の財産を贈与することで相続税を軽減したり、遺言書を残すことで親族間の相続トラブルを回避するなど、相続で揉めないために事前に対策をしましょう。
自身が認知症になるかもしれないことも想定しておく
生前対策をしたくても、自身が認知症にかかってしまったらできません。
遺言書の作成や生前贈与をする場合、認知症にかかっているため意思能力がないと判断され、無効となってしまう場合があります。
2025年には、4人に1人が認知症になるといわれており、正確な意思意思能力があるうちに生前対策をしておくのが賢明です。
自身が認知症になるかもしれない、ということも想定しておきましょう。
生前対策をするメリット
生前贈与をしておくことで節税につながる
生前贈与とは、生存しているうちに自分の財産を別の個人へと無償で譲渡することです。生前贈与をすることで、相続税で課税対象となる財産を減らすことができます。
暦年課税(1月から12月)の場合、年間の贈与額が110万円以下なら贈与税が課税されません。
例えば財産が1,000万円あった場合、1年間に110万円を贈与すると、相続税の課税対象となる財産が890万円となります。
1年ごとに110万円ずつ生前贈与しておけば、相続税の課税対象となる財産を減らすことができ、贈与税もかからないということです。
贈与する相手を自由に選べる
生前贈与の場合、贈与する相手を自由に選べます。
親族に限らず、他人であっても問題ありません。
今までお世話になった方、友人に贈与しても大丈夫です。
民法では、相続する相手を定める決まりがありますが、生前贈与にはありません。
また、遺言書によって財産を贈与する相手を指定する手続きも簡単です。
生前に確認しておくべきこと
01
相続税の仕組み・税制を知っておく
相続税とは、自分の親が亡くなった場合、お金や土地などの財産を相続した財産にかかる税金です。相続した時に必ずかかるということではなく、相続した財産から借金や葬式費用などを差し引いた額が基礎控除額を上回った場合に課税対象となります。
基礎控除額は、3,000万円+法定相続人の人数×600万円で計算します。
法定相続人が3人(配偶者、子供2人)の場合の基礎控除額は4,800万円です。
相続する財産が4,800万円を上回らなければ相続税はかかりません。
02
法定相続人を確認しておく
法定相続人とは、民法で定められている被相続人の財産を相続する人のことです。法定相続人になる人は、被相続人の配偶者や血族にあたる人になります。
死亡した方の配偶者は常に法定相続人となり、配偶者以外の相続する人には順位が決められています。死亡した人の子供が1位となり、次に死亡した人の父母や祖父母、続いて死亡した人の兄弟姉妹という順位です。
法定相続人に相続される財産も順位の高い方から分配されていく仕組みになっています。
亡くなられた方の家族構成によって法定相続人は変わってきますので、しっかり確認しておきましょう。
03
資産を把握しておく
自分が亡くなる前に、自分の資産を把握しておくことも重要です。預貯金や所有している住宅などの建物や土地について、あらかじめ把握しておくことで財産相続をスムーズに行えます。
自分の財産を明確にしておき、誰に何を残したいのかを決めておくことで、残された方の負担も軽減できるのです。
04
遺言書を書いておく
遺言書は財産を相続する際に最も重要な書面です。遺産相続における親族間のトラブル回避にもなり、自分の希望をしっかりと反映してくれます。
遺言書を作成する際には、以下の内容がしっかりと記されていることが重要です。
- 遺言書の全文
- 遺言書の作成日
- 遺言者の氏名
- 署名押印
遺言書は全て自書したものであることを証明しなければなりません。パソコンを使用して作成も可能ですが、全ての書面に署名押印が必要となります。法務省の省令によると、次のような遺言書の様式が求められています。
- 用紙はA4サイズで無地のもので必ず余白を設ける
- 遺言書は片面のみに記載する
- 複数枚になった場合、余白にページ番号を入れる
- 複数枚になってもホッチキスなどで留めない
- ボールペンや万年筆など、消えにくいもので書く
法務省で保管するために必要なことなので、しっかり覚えておきましょう。
05
誰にどの資産を遺すのか遺産分割を考えておく
自分の預貯金や所有している建物、土地など、誰にどの資産を残すのかを考えておきましょう。一番分かりやすいのが遺言書に記しておくことです。
遺言書に残しておくことで、相続トラブルを避けることができます。
06
相続税対策をしておく
自分の財産を相続する際に相続税がかかることがあります。相続した方に相続税の負担をかけないよう、事前に相続税対策をしておくことが重要です。
07
相続に必要な情報をエンディングノートに書いておく
相続に必要な情報をエンディングノートに書いておくと、残された方がどうすればよいかが明確になります。遺言書の保管場所、相談している専門家などの連絡先、資産情報、ローンや負債、加入している保険などの情報を書いておきます。
エンディングノートには法的な効力はありませんが、残された方にどうしてほしいかを伝える術にはなります。
08
信頼できる家族に相談しておく
自分が信頼できる家族に相談しておくことも大切です。
自分が死んだ後のことを子供や兄弟などに話す機会を設けて話し合ってみましょう。
生前対策の相談は地元の士業に
生前贈与
生前贈与とは、生存しているうちに自分の財産を別の個人へと無償で譲渡することです。生前贈与をすることで、相続税で課税対象となる財産を減らすことができます。
暦年課税(1月から12月)の場合、年間の贈与額が110万円以下なら贈与税が課税されません。
例えば財産が1,000万円あった場合、1年間に110万円を贈与すると、相続税の課税対象となる財産が890万円となります。
1年ごとに110万円ずつ生前贈与しておけば、相続税の課税対象となる財産を減らすことができ、贈与税もかからないということです。
資産の組み替え
資産の組み替えとは、所有している不動産を現金化しておくことです。
資産の組み替えをしておくと、相続税の支払い資金にできたり、相続しやすいようになるなど有効な手段です。
さらに節税対策にもなるのでメリットが多いのですが、デメリットもあります。
例えば、築年数の長いアパートを所有している場合、資産の組み替えをしても相続税の評価に比べて市場価値が低いことが多く、相続した人が売却しても現金を手にすることができないこともあるので注意が必要です。
任意後見制度
任意後見制度とは、自分が認知症や障害を抱えるなどひとりで決められなくなる前に、してもらいたいことを代わりにやってもらう人を決めておく制度のことです。任意後見契約は公正証書によって契約を結ぶこととされています。
家庭裁判所で任意後見監督人が選任されてから任意後見制度が効力を生じるので注意が必要です。もしもの時に備えて、任意後見制度を活用することも念頭においておきましょう。
家族信託
家族信託とは、自分の老後や認知症になった場合に備えて、所有している不動産や預貯金などを家族に託して管理・処分を任せる方法です。遺言書よりも幅広く資産の承継ができることや、身内に財産管理を任せるため士業に依頼した場合の報酬もかかりません。もしもの時に備えて、自分の財産を信頼のおける身内に託すのも有効な手段です。