葬儀の席順には決まり事があることを知らない方も多いのではないでしょうか。地域の習慣や基本的な決まり事があり、場合によっては参列者に対して失礼となることもあるため席順を知っておいたほうがよいでしょう。
今回の記事では、席順の決まり事を解説しています。基本的な決め事に加えて、喪主の席や遺族・親族席など具体的な内容にも触れています。また、知っておくべきマナーや注意点を紹介しているため、これから葬儀を行う方は参考にしてみてください。
葬儀の席順ルール
葬儀の席順には決まり事があります。上座・下座があり、場合によっては失礼に当たることもあるため注意しましょう。基本的な決まり事のほか、次の内容を解説します。
- 喪主の席
- 遺族・親族の座る席
- 弔問客
- 地域の特例
- 家族葬の場合
- 通夜振る舞いの場合
それぞれ詳しくみていきましょう。
基本的なルール
葬儀の席順にはいくつかの基本的な決め事があります。まず、故人との血縁関係が近い人が祭壇に近い場所に座るのが基本です。親族や直接の家族が通常、祭壇に近い位置に座ります。また、故人と関わりが深かった人も祭壇近くに座るのが一般的です。
席は通路を中心に左右に分かれており、右側は親族席、左側は一般席が基本となっています。通路側が上座とされ、祭壇前の通路側には喪主とその家族が座ることが多いです。続いて、故人の子ども家族、孫、兄弟姉妹が順に座ります。
ただし、兄弟姉妹が出入り口近くになる場合は、故人の子どもや孫よりも優先的に上座に座ることもあります。喪主が配偶者でない場合、最上座には配偶者が座ることが一般的です。
これらの席順の基本は、故人との関係性や家族構成によって微調整されることもありますが、一般的な葬儀での慣習として覚えておくとよいでしょう。
喪主の席
喪主の席は通常、通路右側の親族席に位置します。具体的には、親族席の中で祭壇前の通路側が喪主の席です。喪主は故人と最も密接な関係を持つため、席の配置でもその重要性が反映されています。
親族席の配置は喪主に続いて、両親、子ども、兄弟姉妹、叔父・叔母の順です。喪主は故人との家族関係に基づいて周囲の親族と共に座ります。
一方で、通路左側の一般席では、祭壇前の通路側に関係性の深い人が座るのが一般的です。生前の友人や近しい関係者がその位置に座ります。
ただし、会場によっては設備の都合やマイクの配置などによって多少の調整が行われることもあるため注意しましょう。また、会館の構造や参列者の人数によっても席の配置が異なることがあります。
従って、具体的な葬儀の会場や状況によっては、一般的な慣習に則りつつも微調整が行われることを理解しておくとよいでしょう。
遺族・親族の座る席
喪主に続いて遺族が座り、その次が親族の席です。遺族と親族の区別は、独立しているかどうかによって決まります。
故人が独立していない場合、遺族になるのは両親と兄弟姉妹です。一方で、故人が独立している場合は、子どもや孫が遺族となります。子どもが遺族の場合、長男、次男、長女、次女の順になることが一般的ですが、これに厳格にこだわる必要はありません。
兄弟姉妹の席は、男子が優先して前に座ることが一般的です。年齢に関係なく、長男、次男が続き、その後に長女、次女が座ることが慣習とされています。ただし、近年では昔の慣習にこだわらず、年齢順で座っても失礼とされないこともあるため、あまり気にする必要はありません。
遺族や親族の席の配置は家族構成や文化によって異なりますが、一般的な慣習に則りつつも柔軟性を持つことが重要です。
弔問客
葬儀の弔問客の席順は基本的に自由であり、会場の中で自分で座る位置を選ぶことが一般的です。弔問客が誰が来るか事前に予測できないため、「自由にお座りください」と案内を出すとよいでしょう。
ただし、世話役を任命している場合は、世話役の人が一般席の中で上座に座ります。世話役の後には弔辞を読む人が続くことが通例です。
自由に座ってもらう場合、上座と下座の中央部分が空いてしまうことがあります。そのため、参列者に前に詰めてもらうように促すとよいでしょう。席が均等に埋まり、会場全体が落ち着いた雰囲気になります。
地域の特例
葬儀席順では、地域ごとに特例が存在することがあります。一般的な通例とは異なり、地域の独自の風習に基づいてるため注意しましょう。事前に地元の慣習を確認することが重要です。
特によく見られる特例には、次の4つがあります。
- 正式な血縁順
- 本家を優先
- 男性を優先
- 年長者を優先する
これらの地域ごとの特例は葬儀文化や伝統に根ざしており、一般的な通例よりも儀式が進行する上で重要な要素です。地域の特例に従うことで、故人や家族に対する敬意を示すことができます。葬儀を執り行う際には、地元の慣習や特例に配慮し、適切な席順を守ることが望ましいです。
家族葬の場合
家族葬の場合、参列者は故人と関わりの深い親族や親しい友人のみです。狭い範囲の参列者であるため、通常は厳格な席順はありません。
一般的に、喪主が最前列の左側に座り、その後に同居家族が順に座ることが一般的です。しかし、これも厳格な規定ではなく、参列者同士の関係性や希望によって変わることがあります。その後の席は順不同で詰めて座ることが一般的です。
家族葬は規模が小さく、アットホームな雰囲気が重視されることが多いため、席順に関しても参列者の希望や配慮が優先されます。柔軟性があり、家族や親しい関係者が共感しやすい形式です。
通夜振る舞いの場合
通夜振る舞いの席順は一般的に、故人との血縁関係が濃い順に上座から座ることが一般的です。家族や親戚、遺族が上座に座り、その他の参列者は下座に座ります。席順は故人との関係が深い人が上座に近い位置に座る形です。
故人の友人や知人は、通例では下座の位置に座ることが多くなります。故人との血縁関係がある親族や家族に対して、敬意を表す一環です。そのため、通夜に参列する際には、自身の関係性や席順に注意を払うことが重要となるでしょう。
通夜は悲しみを共有し、故人に追悼の意を示す場であるため、適切な席順は心地よい雰囲気を作り出す一環となります。
お焼香の順序
席順以外に気を付けるポイントとして焼香の順序があります。親族や遺族が集まる中で、トラブルの原因になりかねないポイントのため注意が必要です。
基本的なルールと、子どもの焼香を解説します。
基本的なルール
お焼香の順序は通常、血縁関係が深い人から順に行われます。焼香の順序に関するトラブルを避けるため、事前に親族間で話し合いを行い、あらかじめ決めた順序を守りましょう。喪主が最初に焼香を行い、その後に遺族や親族が続き、次に会社関係者、友人知人、最後に一般の参列者の順序が一般的です。
また、葬儀委員長がいる場合は、葬儀委員長が最初または最後を務めます。葬儀の主催者や進行を統括する立場として、最初か最後に焼香を行うことが一般的な流れです。焼香の順序は参列者への敬意を表すものであり、慎重に検討し、参列者と事前に共有しておくことが重要です。
子どもの焼香
子どもの焼香の順序は、次の3つの考え方があります。
- 年長者から
- 同じ姓の人から
- 男性優先
「同じ姓の人」に関しては、将来的な墓守りを考慮する意味合いがあります。この場合、家族の中で同じ姓の人が最初に焼香を行います。年齢や性別を優先して焼香を行う場合もあるため注意しましょう。
孫の場合は、子どもの焼香順に合わせることが一般的です。また、故人の息子が喪主を務める場合、その配偶者の焼香順はトラブルの原因となり得るため、事前に周囲の人と相談し、理解を得ておくことが重要となるでしょう。
葬儀の席順マナーや注意点
葬儀の席順やマナーとして、知っておくべき注意点を紹介します。上座と下座はどのような考え方から決まるのか、嫁に出た長女や孫の配偶者などをどのように席指定すればよいかなど解説します。
席順を決める前に知っておいたほうが良い内容となっているため、参考にしてみてください。
上座と下座
上座と下座の概念は、日本特有の文化で、座る位置によって社会的な地位や敬意の表現がなされます。通常、部屋の奥が上座で、出入り口付近が下座です。
この考え方には、さまざまな由来があります。出入り口付近は人の出入りで慌ただしくなりやすく、また、敵が来た際に地位の高い人を守るため、上座が奥に位置づけられた説が一般的です。
葬儀の場では、祭壇に近い席が上座とされ、通路側が一番席となります。
嫁に出た長女の席
嫁ぎ先に出た長女は、遺族ではなく親族として扱われます。席の配置は親の意向や、実家に残る他の兄弟姉妹の考えに従うことが一般的ですが、主に親族側の席に着くことが多いです。
通常、座る席は上座から始まり、喪主、遺族、そして親族が続きます。長女が嫁いだ場合、彼女は遺族ではないため、遺族よりも下座に座ることが一般的です。兄弟姉妹の配偶者よりも下座に座ることに注意しましょう。
ただし、弔問客が焼香している間、長女は遺族の立場で前に立ち、お礼をすることもあります。嫁ぎ先での席の配置は慣習や家族の価値観によって変わりますので、事前に家族と相談し、適切なマナーを守るよう心掛けることが重要です。
孫の配偶者の席
孫の配偶者の席は、通常、親族席の下座側が一般的です。しかし、親族の人数が多い場合は一般席の下座に座ることもあります。孫からすると、故人は配偶者の祖父母に当たるため、面識がないこともありますが、葬儀には出席するほうが望ましいでしょう。
配偶者の祖父母は通常の親族よりも接点が少ないため、葬儀に出席することで故人やその家族に対する敬意を示せます。葬儀に出席する場合、故人との生前の関係性によってどのように振る舞うかを決め、事前に対応を話し合っておくとよいでしょう。
どこまでを親族とするか
法律上、血縁では6等親、姻戚で3等親が親族とされています。姻戚は、婚姻によって生まれた血縁のない親戚のことです。ただし、故人との関係性によっては法的な範囲を超え、離れていても親族扱いされることがあります。
周囲の親戚と協議し、どこまでを親族と認識し、親族席に座るかを事前に決めることが重要です。法的な範囲だけでなく、感情的なつながりや習慣も考慮することが大切となるでしょう。親族の席に誰が座るかは故人や家族の関係性を尊重しながら、事前に調整しておくべきです。
欠席者の席をどうするか
欠席者の席は、一般的にはその席を空けずに詰めることが慣例です。30分前になっても連絡が取れない場合は、主催者や司会者が欠席とみなし、他の参列者に席を詰めるように促しましょう。
特に注意が必要なのは、上座側の席です。上座側は敬意や格式を示す場所であるため、空席が目立たないように心掛けましょう。上座側に欠席者がいた場合、その席を他の親族や大切な関係者で埋め、整然とした雰囲気を保つことが求められます。
葬儀や法要は故人や家族に対する最後の別れとなる場であり、席の配置も慎重に行うことが大切です。欠席者の席の取り扱いは、円滑な進行と敬意の表れとして重要となります。
まとめ
今回の記事では、葬儀の席順ルールと知っておくべきマナーを解説しました。葬儀の席順は、故人との血縁関係が近い人が祭壇に近い場所に座るのが基本です。
席は通路を中心に左右に分かれており、右側は親族席、左側は一般席です。通路側が上座で、最上座には喪主とその家族、続いて、故人の子ども家族、孫、兄弟姉妹が順に座ります。
喪主に続いて遺族が座り、その次が親族の席です。遺族か親族かは、独立しているかどうかによります。故人が独立していない場合、遺族になるのは両親と兄弟姉妹です。一方で、故人が独立している場合は、子どもや孫が遺族となります。
ただし、地域の特例によっては本家を優先したり、年齢順であったりすることもあるため、事前に親戚や周りの人に相談しておくとよいでしょう。
また、焼香にも同様に順序にルールがあるため注意が必要です。そのほか、上座と下座など知っておくべき注意点を紹介しているため、これから葬儀を行う方は参考にしてみてください。