「浄土宗の葬儀では、お焼香を何回したらいいのか分からない?」
「浄土宗独自の数珠ってあるの?」
葬儀は、宗派や地域によって変わってくるため、正解や決まりがある場合が少ないですが、故人のために丁寧に行うことが大切です。
特に、浄土宗の葬儀の喪主を務める人や、参列者として参列する人に向けて解説しています。少しでも疑問点や不安な点がある人は、読むと解決の糸口になりますので、ぜひ読んで参考にしてください。
浄土宗の葬儀の特徴
浄土宗の葬儀は、浄土宗の教義や法要式に則った進行で行われます。ここでは浄土宗の葬儀における特徴について紹介します。
念仏を唱える
浄土宗の葬儀は、念仏を唱える点が大きな特徴です。
浄土宗は、阿弥陀仏の救いを信じることにより、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば必ず極楽浄土に往生できるという教えであるからです。具体的には、故人が煩悩を捨て、極楽浄土に行けるよう下炬引導で参列者にも念仏を唱えてもらう必要があります。
それだけ浄土宗は、念仏を唱えることに重要だと考えています。
焼香回数に決まりがない
浄土宗で葬儀を行う場合の焼香の回数には、決まりがありません。抹香を軽くひとつまみし、額の高さまで持ち上げて、故人の冥福を祈って、香炉に入れましょう。
仏(仏さま)・法(仏さまの教え)・僧(仏道修行の仲間)の
三宝に帰依する意味で3回。あるいは身を戒める「戒香」と心を静める「定香(じょうこう)」の意味で2回。真心を込めて1回など、いずれかの回数で行ってください。
二連の数珠を用いる
浄土宗で用いるときの数珠は、葬儀のときはもちろんのこと仏前に礼拝する際に用いられます。とりわけ浄土宗では、念仏を唱えるときには欠かせないもので、別名で「念珠(ねんじゅ)」と呼ばれます。
数珠の形状は宗派によっても違い、浄土宗で用いられるものは、「日課数珠」と呼ばれている独特のものです。木魚を打ちながらでも念仏が数えられるように、工夫がされています。
浄土宗とは
浄土宗とは、日本の仏教宗派のうちの1つで阿弥陀如来という仏さまの教えを拠り所し、信仰や修行による人間の救済を目的にしています。ここでは、浄土宗で唱える南無阿弥陀仏の意味や極楽浄土について紹介します。
南無阿弥陀仏の意味
南無阿弥陀仏は、浄土宗の基本となる念仏の一つで、阿弥陀如来を讃える言葉です。
南無は「帰依する(ナーム)」という意味で、阿弥陀仏の徳や力に帰依して、救済を仰ぐことを表しています。阿弥陀仏は、極楽浄土に住まうとされており、南無阿弥陀仏と称えることで、往生を目指すことができるとされています。
死後に極楽浄土に生まれ変わる
そもそも浄土とは、すべての煩悩(ぼんのう)やけがれを離れた清浄な仏さまの国で、仏土(ぶつど)ともいわれます。
浄土宗の浄土は、極楽浄土といわれ、阿弥陀仏の浄土を指します。極楽浄土の由来は、「阿弥陀経」により、西方十万億の仏土の彼方にあると記されています。また、極楽浄土に住んでいる人々は、なんの苦しみもなく、ただ楽しみだけを受けているからとされています。
浄土宗の葬儀の流れ
浄土宗のお葬式は、亡くなった日から火葬する日にちを計算して行うため、場合によって日にちが変わってきます。また、地域によって流れが異なる場合があるため、分からない場合や不安な場合には、お寺や葬儀社に確認するといいでしょう。
ここでは、浄土宗の葬儀の流れの一例を紹介します。
死亡日
大切な人が亡くなった場合、まずは菩提寺と葬儀社に連絡しましょう。菩提寺がない・分からない場合は、葬儀社に相談してください。
ここでは、臨終からご遺体の安置・枕飾りについて紹介します。
臨終
臨終とは、今にも亡くなりそうなときをいいます。亡くなってしまった場合には、自宅もしくは葬儀社などの安置所に安置する必要があります。もし、自宅に安置できるスペースがない場合には、葬儀社に相談するといいでしょう。
ご遺体の安置・枕飾り
ご遺体を安置所に安置できると、枕元に枕飾りを設置していきます。枕飾りは、お通夜が始まる前に弔問してくれる人の手を合わせられる仮祭壇の役割があります。一般的には通夜法要終了まで、設置して法要が終わると撤収します。
死亡した翌日または翌々日
故人が亡くなった翌日もしくは翌々日には、以下のように納棺・通夜を行います。日にちが変動するのは、葬儀の日程に合わせて変わりますので、事前に菩提寺や葬儀社などと打ち合わせを行いましょう。
納棺
死亡した翌日または翌々日には、故人に死装束をつけて納棺を行います。地域やお寺の習わしによっては、通夜終了後に納棺する場合もあります。
死に装束とは、亡くなった方が最期の旅路に身に着ける服装を指します。生前に身に着けた「世の中の風俗」から切り離して穢れを払う準備となるためです。故人を送る大切な儀式の一環であり、その着用こそが生前を偲ぶ方法であるとされています。
通夜
通夜とは本来、故人と過ごす最後の夜に行う法要です。以前は、葬儀を行う前日の午後6時から翌日の午前6時まで、僧侶を招きお経を読んでもらい食事をふるまう風習がありました。
近年では、簡略化され法要のみを行うようになっています。参列は、基本的に誰でも参列しても良いとされています。
通夜の翌日
通夜の翌日には、葬儀・告別式を行い、故人が極楽浄土に旅立ちます。ここでは、実際の葬儀・告別式からお斎までの流れを紹介していきます。
葬儀・告別式
葬儀・告別式とは、故人の冥福を祈る法要です。多くの場合は、故人の親類・友人・知人も招かれて別れを惜しむ法要を営みます。近年では、葬儀・告別式を簡略化した家族葬や直葬などが行われるようになってきました。
葬儀と告別式は、どちらも故人への最後のお別れのために行われる儀式ですが、その内容や形式に一定の違いがあります。葬儀とは、故人の弔い・供養を行い、遺族や親しい友人の心を癒すために行います。一方、 告別式は、生前に故人に関わった人々が、故人を偲び、最後の別れを告げるために行われる儀式です。
出棺・火葬・骨あげ
葬儀・告別式が終わると、葬儀場から火葬場へ向かう際、故人を棺から出すために行われます。最後の別れとして、花を棺桶の中に入れたり、故人に感謝や思い出を語ったりします。
火葬場に到着すると、故人の遺体を納めた棺を火葬炉に納めて火葬します。火葬は大体2時間ほどで終了し、骨壺に故人のお骨を納めていきます。
還骨法要(繰り上げ初七日法要)
還骨法要(かんこつほうよう)とは、自宅に中陰壇(後飾り)を設け、骨あげした故人のお骨と位牌を迎え、法要を行います。法要では、お経を唱えたり、故人に対して弔意を捧げたりすることが一般的です。
地域や宗派によって、多少呼び方が異なり、浄土宗では還骨法要と呼ぶことが多くあります。中には繰り上げ初七日法要を一緒に行う地域もあり、生前の故人と深い絆を持つ家族や友人達が再び故人と向き合い、哀悼の念を捧げます。
お斎(精進落とし)
還骨法要が終わると、お斎と呼ばれる接待の席を設けます。お斎とは、遺族が僧侶や世話役をしてくれた親戚を接待する席をいいます。地域によって、お斎のことを精進落としと呼ぶ地域もあります。
ここまでが一般的なお葬式の流れですが、葬儀・告別式の前に火葬し、葬儀当日に納骨する地域もあります。
浄土宗の戒名
浄土宗の戒名とは、仏さまの弟子として授けられる名前で、亡くなったときに授けられる場合が多くあります。故人の功績や年齢に応じて、戒名が構成されています。構成は以下の通りです。
【戒名の構成】
- 院号:菩提寺や教団、社会に貢献した檀信徒に贈られる
- 誉号(よごう):念仏者をたたえる意味があり、五重相伝修了者に贈られる
- 道号:生前の徳を表し、子どもにはつかない
- 戒名:仏教徒としての名前
- 位号:年齢や性別、信仰の篤さを表す
上記のように、本来の戒名に院号や位号がつけられる場合が多くあります。位号の種類は以下の通りです。
位号 | 意味 |
信士(しんじ) | 一般の檀信徒 |
信女(しんにょ) | |
居士(こじ) | 院号がつく檀信徒 |
大姉(だいし) | |
童子(どうじ) | 子ども(15歳くらいまで) |
童女(どうにょ) | |
孩児(がいじ) | 幼児 |
孩女(がいにょ) | |
嬰児(えいじ) | 乳児 |
嬰女(えいにょ) | |
水子(すいし) | 死産・流産の胎児 |
浄土宗のお布施 相場・渡し方
浄土宗のお布施は、お通夜や葬儀を行ってくれた僧侶に対して渡すもので、御車料と一緒に渡します。もし、会食に同席しない場合には御膳料・粗末料・御菓子料なども渡します。
浄土宗のお布施の相場は、地域差もありますが、15万円〜20万円程度です。また、戒名を授与された場合には、戒名料を別に用意し、その金額は10万円からはじまり授与された戒名によって変わります。
お布施の渡し方は、小さなお盆を用意しお盆の上に載せて渡す場合が多くあります。
浄土宗の葬儀に参列する場合 注意点・マナー
浄土宗の葬儀に参列する場合、特別に気を付ける点は少ないです。ここでは、一般的な葬儀やお通夜に参列する際の注意点やマナーを紹介していきます。
葬儀に参列時の持ち物や服装
葬儀への参列時には、持ち物や服装を整えておきたいものです。参列する葬儀の形式や宗教、地域によって異なる場合がありますが、一般的には以下のような持ち物や服装が望ましいとされています。
持ち物
- 香典
- ハンカチやティッシュ
- 数珠・お経本
服装
- 基本的に喪服
- 喪服がない場合は、黒やグレーなどのシックなカラーの服装が望ましい
- ネクタイや靴は黒色が一般的
- 女性の場合は、黒いドレスやスーツなどのシックな服装
数珠の種類と使い方
数珠の種類は、「浄土宗の葬儀の特徴」でも紹介したように「日課数珠」と呼ばれる二連の数珠を用います。もしなければ、一般的な数珠でもマナー違反ではありません。
使い方は念仏を唱える場合に、数珠を用いることで、念仏修行の際に気持ちを一定に保ち、心を静かにして故人が浄土への往生されるといわれています。
焼香の作法
焼香の作法は、「浄土宗の葬儀の特徴」で紹介したように回数に決まりがないため、自分の中で決めた数を行うようにしましょう。抹香を一つまみして額まで捧げてから、香炉に焼香しましょう。
御本尊や遺族の人へのスマートに礼を行うと、丁寧な印象を与えられます。
香典のマナー
香典を渡すのは、直接、喪主や遺族の人に渡すことは少ないですが、書き方や渡し方をきちんとしておくとスマートです。ここでは、香典袋の書き方や渡すときの注意点などを紹介します。
香典袋の書き方
香典袋の書き方は、表面の下に自分の名前や会社名を記入します。上部には、「御香料」や「御霊前」などと記入します。「ご仏前」は、故人が亡くなって49日過ぎてから使うため、葬儀やお通夜では適切ではありません。
香典を渡すときの注意点
香典を渡すときには、受付の人に渡す場合がほとんどです。受付で記帳を済ませ、袱紗(ふくさ)に包んだ香典を渡すようにしてください。受付の人に文字が見えるように、両手で渡しましょう。
香典の金額の相場
遺族の場合には、香典は2万円から5万円くらいを包む場合が多いです。知人や友人の場合には、3千円から3万円と幅が広いので、故人との間柄を考えて金額を決めるといいでしょう。
弔電を送る際の注意点
弔電は、お通夜や葬儀・告別式に参列できないけれど、お悔やみの気持ちを伝えたい場合に最適な方法です。ここでは、弔電を送る際の注意点を紹介していきます。
弔電を送る際の注意点
- 時期・タイミング:訃報を聞いてから、葬儀日程および告別式の日時に合わせ、事前に送付する
- 送り先の確認:間違った送り先に送付してしまうと、遺族や関係者の迷惑になってしまうため、正確な送り先を確認することが大切
- メッセージ内容:文字数は短くまとめると好ましく、霊前やご遺族が読んでも気持ちが落ち着くような、温かいメッセージを添えるとよい
- フォーマルな表現:弔電は、葬儀の挨拶状として、フォーマルな表現を用いる場合が多い
以上が弔電を送る際の注意点です。基本的には、故人やご遺族に対して、お悔やみの気持ちを伝えることが大切です。
まとめ
ここまで浄土宗の葬儀について紹介してきました。内容をまとめると以下のようになります。
- 浄土宗の葬儀は、念仏を唱える点が大きな特徴
- 焼香回数に決まりがない
- 正式な数珠は「日課数珠」と呼ばれる数珠を用いる
- 浄土宗は、日本の仏教宗派のうちの1つで阿弥陀如来という仏さまの教えを拠り所にしている
- 浄土宗の戒名は、仏さまの弟子として授けられる名前で、亡くなったときに授けられる
- お布施の相場は、15万円〜20万円程度
- お布施の渡し方は、小さなお盆を用意しお盆の上に載せて渡す
葬儀は、宗派や地域によって大きく異なる場合があるため、自分が喪主を務める場合には必ず菩提寺や葬儀社の人に確認しましょう。また、参列者の場合もお別れの場をきちんとするのは大切です。
故人の弔いの意味合いで行う場合が多いですが、葬儀には悲しみを癒す大切な場でもあります。本記事を参考に、お葬式をよりよい式にしてください。